表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾壱章 奮励努力 ~一歩一歩前へ~
327/500

第拾参話 【1】 賀茂様からの呼び出し

 おじいちゃんの家に帰ってきた僕達は、早速おじいちゃんと達磨百足さんに、色々と報告をしました。


 僕達の方は、あんまり収穫は無かったのですが、和月さんを連れて来たので、この人からある程度聞き取りを行い、信頼出来るかを確認するそうです。だって敵だったんだもん、当然です。

 それは和月さんも分かっていたようで、納得していました。だけど、和月さんも丘さん同様、あんまり情報は持っていないようです。


 そんな事後処理も終わり、軽く妖怪食も食べ終えた僕は、少し休もうと自室へ向かっていたのですが、そこに賀茂様の式神が現れました。


「椿よ、任務は終わったか?」


「びっくりした……えっ? 任務に行っていた事、何で知ってるいるんですか?」


 咄嗟にそう返しちゃいました。いきなり現れたから、敵かと思って身構えちゃったよ。

 だけどチビ賀茂様は、気にする様子も無く続けてきます。流石は神様の使いですね。


「ふっ。我々は気に入った者に対しては、いつでも何処でも目を光らせて見ているのだぞ。気を付けよ」


 つまり、僕は常に監視されていたと……落ち着いて生活出来ませんよ、それは。


「あぁ、安心しろ。何処に何しに行っているか程度しか分からない。だから、着替えやプライベートを見ていたりはせん」


 咄嗟に体を隠して、目を細めて見ていたから、感づかれてしまいました。


「それで、何か用ですか?」


「うむ……私の本体が呼んでおる。一緒に来てくれんか?」


「賀茂様が?」


 いったいどうしたんでしょう? 何か緊急事態でも起きたのかな。

 だけど、僕が不思議そうな顔をしていても、チビ賀茂は何も言わず、僕の返事を待っています。


「分かりました、行きます……でも」


「分かっている。白狐と黒狐も一緒にと言っている」


 因みに、物陰で見ているのもバレていますよ、白狐さん黒狐さん。出て来た方が良いと思います。


「白狐さん黒狐さん。そういう訳なんで、出て来て下さい」


『ぬぅ……バレておったか』


『白狐、最初からバレている感じだったぞ』


 そうでしょうね。チビ賀茂様がチラチラと、2人が隠れていた方を見ていましたからね。


「まぁ、2人は椿の夫だ。一緒に来るのは当然だろう」


「夫……」


 もう僕は、それでは反応しませんよ。動揺なんかしません。

 それなのに何故か、2人に笑顔で頭を撫でられました。


『顔が真っ赤じゃぞ、椿よ』


『恥ずかしいのを我慢しているのがバレバレだ』


 後ろから覗き込まないで下さい。別に、恥ずかしがってはいません。慣れていないだけです。


 そして僕は、早く賀茂様の所に行こうとして、足早に玄関へと向かうけれど、チビ賀茂様に止められました。尻尾を掴まれてね……。


「くっ……! チ、チビ賀茂様……い、いきなり尻尾は……」


「いや、まさか先に行こうとするとは思わなかったのでな。なに、わざわざちんたら移動しなくても、式神の能力で、上賀茂神社まで飛べるわ」


 えっ? そんな能力があるんですか?

 それなら最初から言って欲しかったです。そうしたら、無駄に尻尾を掴まれる事はなかったのに。


「は、な、して、下さい!」


「いやぁ……思った以上の触り心地で、手が離れんのだ」


 僕は尻尾を思い切り縦に振って、手を振り払おうとするけれど、チビ賀茂様は離すどころか、より強く握ってきます。それ、手が離れ無いじゃなくて、離さないですよね?


『おほん。申し訳ないですが、それ以上は遠慮して貰いたい』


『俺達が嫉妬して、椿に迷惑をかけてしまう』


 白狐さん黒狐さん。あのスキンシップ、ちゃんと迷惑な事だと分かっていたんですね。分かっていてやっていたんですね。

 もう今更なんで責めないけれど、結局僕はまだ、2人にいいようにされていたんですね。


「分かった。では、こちらだ。広い方が良いのでな」


 そう言うとチビ賀茂様は、おじいちゃんの家にある広い中庭へと向かって行きます。


 あの……出来るだけ皆にも、この事を気付かれないようにしたいんだけれど、そういえば他の皆は、おじいちゃんに別で何か言われていました。

 他の任務でも入ったのかな? それなら僕達だけで、この方法でお邪魔できるかな? 集団で行くのは、お正月くらいにしておくべきですね。


 ーー ーー ーー


 そして僕達は、中庭に出た後、おじいちゃんに見送られ、上賀茂神社へと飛んできました。

 庭にあっという間に、転送する為の陣を描いちゃったので、流石神様の式神ですね。


「凄~い、チビ賀茂様! あっという間にーー紙になっちゃってる?!」


 チビ賀茂様を誉めようと下を見たら、人型の紙がヒラヒラと舞って、地面に落ちました。

 な、何で? 何か想定外の事が起きたのですか? 急にこんな……


「おぉ、来たようだな」


「あ、賀茂様! あの……賀茂様の式神の、チビ賀茂様が、転移した後に紙になっちゃった!」


「ん? あぁ、そりゃ転送なんて事をしたから、私の力を使い切ったのじゃろう? ほれ」


 そう言って賀茂様は、地面に落ちた紙に手をかざすと、途端にその紙が、さっきのチビ賀茂様に変身しました。


「あっ……」


 何だか……その、色々と恥ずかしくなってきてしまいました。

 僕ってば、真剣に心配しちゃって……というか、白狐さん黒狐さんは分かっていただろうから、言って欲しかったですよ。それなのに、ニヤニヤと後ろで眺めているだけなんて……。


「いや~、まさか私の式神に対して、そんなに心配をしてくれるとはな~可愛い奴じゃな」


『賀茂様。私の嫁ですからね? 手出し無用です』


『白狐、俺のだ。良いですか、賀茂様。まだ椿は、どちらにするかは決められていない。そこに賀茂様まで入ってこられると、椿が混乱してしまう』


「ふむ、残念だな。まぁ、良い」


 でもさ、その前にね……。


「2人とも。とりあえず、正座してくれますか?」


『あっ、しまった!!』


『一旦逃げるぞびゃっーーこぉ?!』


 逃がしません。僕は2人の尻尾をしっかりと掴んで、そのまま笑顔を向けます。


「座って?」


『『はい……』』


 それでも、説教は後です。

 それよりも先ずは、賀茂様が僕を呼んだ理由を聞かないといけません。


「それで、賀茂様。今日は、何でお呼びしたのですか?」


「おぉ……2人は、そのまま正座かの? はは、椿は良き妻になるな」


「それは良いので、早く話して下さい」


 賀茂様は、神様なんです。無礼は駄目、無礼は駄目です。だから、ちょっと怒りたくなっても、それは抑えないと。良き妻というかね、2人が悪いんですよ。


「うむ、実はの。つい先程、北区の船岡山で、邪気を感知した。しかもこれは、相当な負のエネルギーでな、人々に影響が出るかも知れん」


「邪気って、そんな……いったい何が?」


「分からん。それを調べて欲しいのだが……」


『敵が、椿をおびき寄せる為に、何か仕掛けたかもしれない……と』


「うむ」


 白狐さん、それは僕も考えましたよ。それでも、妖怪が人に迷惑をかけていたら、僕の描く理想の世界を作れないじゃないですか。

 だから、何としても止めます。例えそれが、敵の罠だったとしてもです。


「白狐さん。念の為に、おじいちゃんの家に連絡をして下さい」


『分かった。翁もとっくに気付いているかも知れないが、それでも報告は重要だからな』


 そう言って、白狐さんはスマホを取り出し、電話をかけ始めます。

 多分わら子ちゃんか、龍花さん達が来るんじゃないでしょうか。


「黒狐さん。妖気が厳しそうなら、白狐さんと一緒に、おじいちゃんの家に戻って下さいね」


『大丈夫だ。無茶しない程度にサポートしてやる』


 言うと思いました。本当にもう……せっかく心配したのに、そう返されたら何も言えません。

 それになにより、2人と一緒に居ると、僕の心が落ち着きます。結局僕は、2人に居てくれた方が戦い易いです。


 それだけ、白狐さん黒狐さんを頼りにしているんです。だから、消えないで下さいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ