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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾壱章 奮励努力 ~一歩一歩前へ~
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第捌話 【1】 特級の扱い

 その翌日。

 昨日の舞いで筋肉痛にはならなかったけれど、おじいちゃんの家の妖怪さんの、僕を見る目がまた変わっちゃいました。というか、呼び方がね……。


「あっ、姫さん。おはようございます」


「お~姫さん。調子はどうだ?」


「姫~また舞ってくれよ~」


 僕は皆のお姫様じゃないってば! というか、なんなら若干からかってませんか? だから、姫と言った妖怪さんにはもれなく、僕の影の妖術でのくすぐりの刑です。

 浮遊丸さんが最初にあんな事を言ったせいだけど、最後に舞ったせいでもありますね。全員見惚れちゃっていて、ぐうの音も出ていませんでしたよ。


「椿ちゃ~ん!!」


「うわっ?! 里子ちゃん?」


 すると、朝ご飯を食べに広間に向かう途中、突然里子ちゃんに、後ろから抱き付かれました。

 ついでに、僕の尻尾も乱暴に弄られています。せっかくブラッシングしたんだから、そんなに乱暴に弄らないで下さい。


「もう! 今日はいつもよりスキンシップ激しくないですか?」


「だって~椿ちゃんのあんな舞いを見たら、我慢出来なくて……本当は夜、お布団に忍び込みたかったけれど、白狐さんと黒狐が居たから~」


 確かに。昨日の夜は結局、2人に挟まれながら、抱きしめられる様にして寝ていましたからね。

 流石に疲れていたので、全く気にしていなかったけれど、今思い出したら顔が熱くなってきました。


「あっ、椿ちゃん顔真っ赤~可愛い~」


「里子ちゃん、ほっぺ突かないで……」


 そういえば、今気付いたのですが、里子ちゃんって何気に、黒狐さんの事だけ呼び捨てでしたよね。何ででしょう?


「里子ちゃん。そういえば、黒狐さんの事だけ呼び捨てなのって、何でなの?」


「ん? ん~ちょっと……ね」


 いや、気になります。何なんですか? 2人に何かあったんですか?


「言わないと、こうですよ」


「きゃぅん!! ちょっ、椿ちゃ……影で尻尾掴まないでぇ」


 あんまり僕を甘く見ないで下さいね。これでもしっかりと修行しているんですから。さて、お返しに僕も、乱暴に弄ってあげましょう。


「わふっ!? 椿ちゃん……だ、め……あぅ! 分かった! 言う、言うからぁ!! 黒狐とは、本人とは何も無いけれど、あ、あいつの……父親がぁ……私のお母さんを、奪ったのよ!」


「えっ? 黒狐さんの父親? 居たんですか?! それに、奪ったって……まさか」


「こ、殺したとかじゃないよ。浮気。というか椿ちゃ……これ以上は……ふぅぅ」


 う~ん……妖怪にも、浮気とかあるんですね。しかもそんな事があったのに、里子ちゃんの父親は、黒狐さんと普通にーーいや、話ている姿見たことないし、夏の旅行の時に、黒狐さんの運転する車には、一切近づいてなかったですね。


 それよりも、父親? お稲荷さんって、自然発生とか……あっ、野生の狐が神格化して、とかもありますね。それだったら、父親が居てもおかしくないかも知れません。


「椿ちゃん! 椿ちゃん!! 考え事していないで……これ、止め……わふぅっ?!」


「あれ? 里子ちゃん? ぐったりしちゃってどうしたの?」


 肩で息をしているし、顔も紅潮しているし、何だか痙攣まで……あっ、まさか。


「その……ごめんなさい。里子ちゃん」


「つ、椿ひゃんの……ばかぁ」


 とにかく僕は、そのまま里子ちゃんを引っ張って行くけれど、それを廊下の影から、こっそりと見ている雪ちゃんがいました。


「うらやましい……」


「うっ……」


 今回は、僕がついやっちゃった事なので、強く反論出来ません。でもね、雪ちゃん。君には尻尾が無いですからね。こんな事は出来ないし、君でやろうとしたらーーうん、考えるのは止めておきます。


「雪ちゃん、早く行きますよ」


 僕はあまり気にしないようにしながら、地下のホールへと向かいました。


 ーー ーー ーー

 

「黒狐さん。黒狐さんって、父親が居たんですね」


『ん? そのようだな』


 その後、朝食の最中に、僕は黒狐さんにそれとなく、さっきの事の確認を取っています。

 里子ちゃんを信じていないわけじゃないけれど、念の為にね。

 もしも嘘をついていたとしたら、それはそれでショックですからね。その時は思う存分、里子ちゃんの尻尾を弄り倒しますよ……ってあれ? 僕ってば、何を考えているんだろう。うぅ……男の子の心が、また出て来ちゃった。


 それにしても、黒狐さんは割とあっさりと答えてくれました。そこは、浮気した父親とはいえ、隠す必要はない、という事なんでしょうか。


 そうなると、もう1つ気になる事が……。


「それじゃあ、白狐さんもいるんですか?」


『ん? どうだろうな。我にはその記録が無いからな。もしかしたら我は、そういう形で生まれたのではないのかもしれん』


「その記録?」


『つまりじゃ。妖狐の中には時たま、自分の子供の様な、かなり高質な分け身をする者がおる。ただ、それを好き勝手にされては、妖狐の独壇場になるから、その高質な分け身をする場合、センターから許可を貰う必要がある。そしてそれは、出生証明書の様にして、きっちりと保管されておる』


 そんな能力を持った妖狐さんもいるんだね。そしてやっぱり、ここでも制度というか、決まりがちゃんとありました。という事は、黒狐さんはそれで生まれたのですか。


 う~ん……何だかちょっと複雑な気分になるけれど、黒狐さんは黒狐さんだよね? その父親とは、性格違うよね? 考えも違うよね? 

 駄目です。気になっちゃうけれど、今は気にしない。僕は黒狐さんを信じます。


 するとその時、ホールの入り口が開かれて、朱雀さんが中に入ってきました。

 そういえば4つ子の人達は、ずっと何処かに出かけていたけれど、何かあったのでしょうか?


「椿様……少し、宜しいでしょうか?」


 そのまま僕の所にやって来ると、耳打ちしながらそう言ってきました。僕に用でしたか。


「なに?」


「すいません……ここでは、ちょっと」


「えっ……? そんなに聞かれちゃいけない事? それなら、おじいちゃんに……」


「聞きましたよ。特級を取られたのでしょう? それならば、立場的にはもう、ここの皆さんとは違います。あなたは、翁の指示無しで動けるのですよ」


 えっ……? 特級って、そんなに凄いものだったんですか? 舞いを舞っていたせいで忘れていたけれど、僕が特級を取ったという実感が、ようやく湧いてきました。


「わ、分かりました」


 そういう事なら、朱雀さんの言うとおり、彼女に着いて行きます。そしてホールを出た所で、朱雀さんは立ち止まって振り返ります。


「椿様。実はあれから、八坂の居場所を探っていたのですが、その際に、学校に通っていた半妖の1人を見つけました。現在、雪さんが父親にされた様に、監禁をされております」


「なっ……?! またですか……」


 半妖となると、やっぱりそうなるんでしょうか? ということは、監禁しているのは、両親とかそうなる可能性が高いですよね。


「それで、その半妖の人は?」


「赤木宗二さんです」


「……さ~て、朝ご飯の続きです」


「椿様!!」


 何ですか? そんな人は知りませんよ。僕は朝ご飯を食べるのに忙しいのに。

 それに亰嗟の事、妖魔人の事。色々とやらなきゃいけない事がーー


「椿様、良いんですか? 彼は生徒会長だと聞きましたよ。前校長の行方を、知っているかも知れませんよ」


「う……そう言えば、1番あの人に近い人物でしたね」


 あ~困りました。そうだ。これは雪ちゃんとか、他のメンバーの妖怪さんにーー


「それとその家には、亰嗟のメンバーの出入りも確認されました」


 代わりのメンバーにやらせるのも却下ですか。それはもう、僕が行かないと駄目なんでしょうか?

 でも僕が行くと、そのまま報告されて、地獄の鬼さんが出て来ますよ。


「椿様……何でそんなに頑なに行こうとしないんですか?」


「う……うぅ……だって、だってあの人は……」


 変態なんですよ。会いたくないんですよ。再会の喜びのあまり、全身くまなく舐められそうなんですよ。舐められた事はないし、その瞬間に浄化しますけどね。


 ただ、そんな危険があるのなら、僕が行かないと駄目なようです。仕方ないから、用事だけ済まして直ぐに帰りましょう。


 だって……それだけ嫌なんですよ。僕、あの人は苦手です。

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