表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾壱章 奮励努力 ~一歩一歩前へ~
303/500

第壱話 【2】 激闘! 妖魔人「閃空」最終戦

 閃空の謎の攻撃を吸収出来ずに、僕は思い切り吹き飛ばされたけれど、防御力を上げていたので、大したダメージは無かったです。ただ、制服のスカートがちょっと破れちゃった。


「ふ~ん、結構硬いね」


「色々と修行しましたからね。だからあなた達は、ちゃんと帰るべき場所に帰って下さい」


 元の人格なんて、もう無いかも知れません。

 それだけこの人達は、寄生妖魔に蝕まれていたんです。だけど、こうやって行動理念があり、命令も聞くのなら、人間としての何かは残っているはず。


「怪異、黒蝕球(こくしょくきゅう)


 すると閃空は、そう言いながら片手を上げ、自らの突起物から出した黒い霧を、その手に集めていき、そして大きな球体を作り上げました。


 いつもの妖具じゃない。禍々しい妖気が、球体の周りを漂っている。何ですか……これは。


「ふん。いったい何の事か分からないなぁ。僕はただ、妖怪であるお前達を殺せれば、それで十分なんだよ! おっと……妖狐の君は、出来たらこのまま着いて来て貰いたいね。亜里砂様が、君の中の記憶をご所望だからね」


 そして閃空は、ちょっとずつこちらに近付いて来る。

 これは流石にヤバい気がします。あの球体は、出来るだけ受け止めずに、返すか浄化するかした方が良いですね。


「そう言われて簡単に着いて行くほど、僕は馬鹿じゃないし、弱くもないよ!」


「そっか……それは残念だね。それじゃあ、死体にして連れて帰るよ。行け!」


 そう言った後に閃空は、その黒い球体を僕達に向かって投げてくる。


 だけどそれは、地面から伸びてきた木に阻まれ、途中で止まりました。

 あれは意外と威力がないんですね。助かりましたよ、美亜ちゃん。と思っていたら、美亜ちゃんが驚愕の声を上げています。


「嘘!? 私の呪術で生み出した木が、枯れていっている?!」


「えっ? あっ……!」


 良く見てみると、確かに黒い球体の当たった部分から、木が枯れていっています。そしてその木に穴を空け、黒い球体は再び僕達に向かって来ます。

 あんまり速くはないけれど、このおかしな能力は油断出来ないですね。


「あはははは! どうだ!! 生気や妖気を食っていく、この黒蝕球の力は!」


 その後も閃空は、新たな黒い球体を作っています。これは何とかしないと、いずれ詰みます。


 やっぱり相手が相手なので、こちらも本気で行くしかないですね。それに、あれからも修行はしていました。

 勝てるかどうかは分からないけれど、出来るだけ全力で、暴走しない程度にやってみます!


 そして僕は、集中して神妖の力を解放していく。

 髪は長く伸び、毛色も金色に。そう、浄化の力を全開で使う時の、あの姿になります。


「御剱、神威斬!」


 そのまま僕は、いつもの袋から御剱を取り出し、目の前の黒い球体を切り裂きます。


「へぇ……ようやく本気という事? でもこの前は、僕の分身で精一杯だったろ? それに、僕も分身かも知れないよ?」


「いえ、あなたは分身では無い。本体です」


 だって今の所、周りに他の妖気を感じないですからね。つまりこの閃空は、本体の可能性が高いです。

 だけどまだ、本体が妖気を隠している場合があります。でも……。


「美亜……」


「えぇ。あなたに言われた通り、根や蔦を使って、この辺りを探ったわ。近くに誰かが居たら、直ぐに反応して捕まえるけれど、反応は無かった。つまり、こいつは本体で間違いないわね」


「と言うわけです。負なる者」


 念には念を押しておいて良かったです。それにしても、美亜ちゃんのこの呪術は凄いですね。


「なっ……! くっそ……」


「ふん! その球体を飛ばせるものなら飛ばして見なさいよ! これだけの大量の木々を、いちいち枯らせるのかしら? それとも、間を縫って? どっちにしても、こうしておけば直ぐに気付くわ」


 するとあっという間に、この公園が樹海となってしまいました。凄すぎですよ……美亜ちゃん。

 それに、相手の気も感知出来るようにしたらしく、蔦や根を触覚代わりにし、それに反応する様にしているみたいです。更に凄い事になっていますね。


 そして、閃空が新たに出した黒い球体を、次々とその木で受け止めています。

 当然そのまま枯れていくけれど、一旦止まるのなら、その瞬間を御剱で斬ってしまえば良いのです。


 そうやって、相手の出した球体を全て処理した僕は、閃空に向かって御剱を突きつけます。


「さぁ、負なる者。観念して、私の力で浄化されなさい」


 相手を威圧する時には、こっちの状態の方が便利ですね。だからって、あんまり頻繁にこの状態になっていたら、どっちが本来の僕なのか、分からなくなっちゃいます。


 だけどそれを見ても、閃空は顔色1つ変えていません。むしろ、次々と黒い球体を出していっています。


「全く……往生際が悪いですよ」


「それはどっちかな?! こんな樹海くらい、あっという間に枯らしてやるよ! そらそら!」


 そう言うと閃空は、10個程作ったその球体を、一気に投げ付けてくる。


 だけど、木の幹の上から腕を組んで、閃空を見下ろしていた美亜ちゃんが、何かに気が付いたのか、閃空に向かって話しかけます。


「無理よ。あなたのそれ、妖術でも呪術でも無い。何かの力を、そのまま使っているにすぎないわ。あなたに寄生した妖魔の力……かしらね? そ~んなので、私の呪術を簡単にやぶれるとは思わない事ね。だって私の呪いは、相手の負の感情にも反応して、大きく膨れ上がるんですから! あはははは!」


 あっ、美亜ちゃんが黒いです。

 しかも、樹海まで一気に紫色になっていっています。更にその瞬間、閃空の投げた球体が小さくなっていって、そのまま霧散しました。いや、これは……逆にこの紫の木に吸われたの?


「つまり、あんたの力の根源は、憎しみよ。そんなもの、私の呪術の前では、ただの栄養源でしかないわよ」


 憎しみ……この人達はあの飢饉を、僕達妖怪の仕業だと言われ、華陽から憎しみを植え付けられた。

 そしてそれは、寄生する妖魔によってかは知らないけれど、増幅をされ、妖魔人となった今でも、その憎しみの元に行動している。そこから何とか解放してあげないと。


 だから僕は、憎しみを胸にして戦ってはいません。

 それは酒呑童子さんから散々言われたし、しつこいくらいに叩き込まれたからね。


「それなら! これで……どうだぁあ!」


 すると今度は、閃空が自らの体の突起物を伸ばし、木を貫通させ、僕達に直接攻撃して来ました。

 だけどそれは、僕が御剱で受け止めます。

 全部は無理だったけれど、美亜ちゃんも伸びて来た突起物に一斉に蔦を絡ませ、それ以上は伸びない様にと、固定をしていました。


 それなら閃空をーーと思ったら、閃空自身にも蔦が絡まってるよ。いつの間にですか……美亜ちゃん。


「ぬぁ!? くそ……! こんな1度に呪術を使っちゃって、後でどうなってもーー」


「あ~ら、大丈夫よ。椿が発散してくれるから」


 何か不吉な事を言われた気がするけれど、別に良いです。


 妖魔人。それがSSランクとは言え、1体ずつなら、こうやって撃破出来そうです。でも、最後まで油断はしませんよ。


 僕はその腕に、取り出した火車輪を付け、炎を纏わせる。金色の炎をね。

 そのまま地面を強く蹴り、猛スピードでひと息に、閃空に向かって行く。このままの勢いで、拳を打つ為にです。もちろん、金色の炎はブースターに。ただし、この拳には浄化の力が加わります。


 だから上手く行けば、閃空をこのままーー


「はっ! バ~カ! 誰が肘と膝からしか、これを出せないと言ったよ!」


 すると閃空は、いきなり両手を大きく広げ、そして全身から突起物を突き出して来ました。でも、それは読んでいましたよ。

 これは、龍花さん達から教えられていました。手の内は、全て出すな……ってね。だから僕は、君が手の内を全部出したとは、思っていませんでしたよ。

 そしてこれ位なら、酒呑童子さんの修行で培った、この反射力で回避出来ますよ。


「えっ?! なっ……! そ、そんな! 全部避けーー」


「諦めなさい、負なる者。さぁ、浄化の時です!」


 金色の炎を後ろに一気に放ち、更に加速をさせる。

 この僕の身体の全てを使って、寄生妖魔を完璧に浄化する為に、全身全霊を拳に込め、君を貫く。


金華狐狼拳(きんかころうけん)!」


 僕はそう叫けぶと、閃空のお腹に向け、拳を勢いよく打ち込む。


「がぁぁぁあ!!」


 そしてようやく、閃空は苦痛で顔を歪ませ、悲痛な叫び声を上げました。

 これは、確実に効いている。だからこのまま、浄化しちゃいます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ