表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾壱章 奮励努力 ~一歩一歩前へ~
302/500

第壱話 【1】 元に戻った学校

 センターが乗っ取られ、学校の事を聞いてから1週間後、遂に春休みが終わり、僕は緊張しながら学校へと向かう。もちろん、美亜ちゃんも一緒にです。

 もしかしたら、もうこの制服を着られなくなるかも知れない。そう思うと少しだけ、僕の中の何かが、こみ上げて来ました。


 この1週間、亰嗟の襲撃は下っ端だけです。助かっているけれど、逆に恐いです。何か作戦がありそうで……。


 とにかく、雲操童さんに近くの公園まで運んで貰い、そこから歩いて行きます。何だろう……少し寂しいな。

 最後にこうやって学校に行っていたのが、随分前のような感じがします。だってその時には、カナちゃんがいた。でも、もう居ない。更に今は、雪ちゃんまで居ません。寂しくて当然ですね。


「椿~しんみりしている場合じゃないわよ?」


「ひゃう?! 美亜ちゃん、尻尾触らないで!」


 僕を元気付けているのかは知らないけれど、ちょっとびっくりしましたよ。鞄が急に動いたから、キーホルダーになって引っ付いているレイちゃんが、びっくりしていました。


 そんなレイちゃんを宥めながら、僕達は学校へと向かいます。


「いい? 椿。もうあの学校は、私達の知っている学校じゃないかも知れない。生徒達は、私達のせいで恐い思いをした。忘れてないわよね?」


 その道すがら、美亜ちゃんがそう言ってくる。

 忘れる訳がないよ。半年前、滅幻宗が学校を襲ったあの事件。あの後、僕は大切なものを……。


「あれから、全壊した北校舎は修復中で、まだ完成するまでに時間がかかるわ」


 美亜ちゃんはあれからも、何回か学校に行っているんですね。意外と律儀ですね。


「それで、あの校長が半妖の生徒を退学にしたのが、春休みに入る前の、終業式での事。嫌な予感がしたから、私はあのまま帰ったけれど……雪が言っている状況からして、あんまり良い歓迎はされないと、そう思った方が良いわね」


 そう言われると、気が重くなります。

 何時ぶりでしょうか? こんなに気を重くして学校に行くのは。いじめられていた時以来かも知れません。


 そうやって美亜ちゃんの話を聞いている内に、もう学校に着いちゃいました。そして僕は、緊張しちゃって心臓が痛いです。


 すると、校門の所に誰か立っています。

 あれは、学年主任の先生? 髪が薄くて、特にてっぺんの辺りが、肌色の円形になっていってるんだけど、春休み中に更に広がっていますね。ストレスで余計にかな? って、そんな事を考えている場合じゃないです。もしかして……。


「やっぱり来たか……お前達、何も聞いていないのか? 半妖だけが退学だとでも思っていたのか? お前達は大丈夫だと思っていたのか? この化け物達が。危うく、あの化け物校長に嵌められる所だったよ。帰れ、ここはお前達が来る場所では無い! 私達人間を危険に陥れる、邪悪な妖怪が!」


「…………」


 僕はただ何も言えず、黙ってその場を後にするしかなかったです。

 あの校長先生、何て事をしてくれたんですか。違う、していた……じゃないのかな?


 校長先生で思い出したけれど、あの人、不思議な扇子を使っていました。1回だけ、僕の人格を変えられた事だってあります。

 そう考えたら、あれは恐ろしい妖具ですね。本当に妖具なのかどうかも怪しいけれど……それを使って、ここの学校の人達全員を操っていたとしたら?

 全部全部、前の校長先生……八坂校長の、シナリオ通りだったとしたら?

 もしかして、1番最初に僕がいじめられていた時も、本当は対処出来たんじゃないの? 


 ねぇ、八坂校長先生。あなたはいったい、何者なの?


「椿!!」


「ふわい!? あれ? ここ……」


「ショックなのは分かるけれど、公園に戻って来た事にすら気が付かないなんて、相当ね」


「あっ、美亜ちゃん。ううん、違うよ。それほどショックじゃなかったです。だって、あれが普通だもん。今までは八坂校長先生が、あの変な扇子で、皆の考えを変えていたのかも知れないです。だって何だか、普通の学校に戻ったって感じがしたから」


 だけど、異様な気配は奥から感じたので、旧校舎は多分そのままですね。

 学校全体からは、妖気が綺麗サッパリと消えていて、元の普通の学校に戻った感じがしました。

 半妖や他の妖怪も侵入していたりしたから、妖気が染み付いていたのかなって思っていたけれど、違ったね。今までが異様だったんですね。


 それを、元に戻した? 半妖の生徒達を、全員退学にする事で? いったい何をしようとしているんでしょうか。

 僕達の敵だったのだとしたら、この行動はもう訳が分からないですね。


「うん、悩んでもしょうが無いです。美亜ちゃん、とにかくおじいちゃんの家に帰って、情報収集です。皆にも知らせないと!」


「椿、あんた……随分と心が強くなったわね。でも、良いの? せっかく仲良くなれたのに……」


「良いんです。僕達のせいで、普通の人間の生徒達が、危険に巻き込まれるから。これで良いんです」


「……ったく、強がっちゃって」


 そうかも知れませんね。でも、大丈夫。きっと大丈夫です。いつかまた、妖怪とか人間とか関係無しで、皆で一緒に居られる学校になるから。あんな風に、半妖も人間も妖怪も、皆が分け隔て無く通える学校になります。


 ううん、僕がしてみせます。


 でもとりあえず、目の前の問題を片付けていかないといけませんね。


 そして再び、公園に雲操童さんがやって来て、僕達の前に止まる。

 でも次の瞬間……雲操童さんが、いきなり破裂しました。


「きゃぁ?!」


「うわっ! な、何ですか?!」


 雲操童さんが?!

 僕達の後ろから、何かが飛んで来たけれど、いったい何が……。


「あははは!! やっと見つけた~つ~ばきちゃ~ん!」


「閃空!!」


 なんとそこには、禍々しい姿の妖魔人となった、あの閃空の姿がありました。


 また妖具で妖気を消していたのか、感知が出来なかったです。

 体は真っ黒で目は赤く、更に赤いラインが体に入り、それが模様みたいになっているこの姿、1度見たら絶対に忘れないよ。


「くっ……なんて事。こんな所で……椿、とにかく応援を!」


「駄目です……妖気をジャミングされています。また妖具か何かだと思う。このままじゃあ、白狐さん達に応援を頼めない」


 すると、突然閃空の姿が消えました。でも、これは妖気で分かりますよ!


「美亜ちゃん!!」


「きゃっ?!」


 咄嗟に白狐さんの力を使い、相手よりも早く動き、美亜ちゃんを横に突き飛ばします。

 その直ぐ後に、美亜ちゃんが居たであろうその場所に、閃空が肘から突き出した突起物を、突き刺すようにして来ました。


「へぇ……反応出来るんだ、これが。それじゃあ、これならどうかな!?」


 あれ……? 見える。閃空の動きが見える。

 スローモーションみたいにしてゆっくりとだけど、閃空が何をしようとしているのか、手に取るように分かります。


 背中に隠すようにしていた巨大な球体を、一瞬で大きくして、僕にぶつける気ですね。でもそれなら、こっちから距離を詰めてーー


「黒槌岩壊!」


「なっ?! がはっ!!」


 直ぐに尻尾を大きなハンマーにして、そのまま閃空を叩き、後ろに吹き飛ばします。


「椿……」


「美亜ちゃん! ぼうっとしていないで、呪術を展開して!」


「あっ……わ、分かったわ!」


 応援が呼べない以上、僕達でこの状況を切り抜けないといけない。だけど……何でだろう?

 僕は至って冷静で、そして凄く集中出来ています。あっ……また来る、相手の攻撃が。


 今度は膝から突起物を出して、それで突き刺す気ですか。あの突起物は何なんでしょうね。いや、何でも良いです。


 僕は御剱を取り出すと、土埃から現れてくる閃空に合わせ、刀剣を振るいます。


「なに?!」


「見えています」


 そして激しい衝突音がした後、僕の両腕に衝撃が走ります。ちゃんと両手でしっかり握って振ったのに、この衝撃ですか。もし片手で受けていたら、受け止められ無かったです。

 やっぱり妖魔人となったこいつ等は、別格ですね。気を抜いたら殺される。いや、連れ去られてしまいますね。


「あはははは!! 面白い、面白い面白い! やっぱりキミ、この半年の間に強くなっているんだね! でも、僕達の復讐の為には、キミが要るんだよねぇ!」


 そう言うと閃空は、僕から一旦距離を取り、そして肘と膝の突起物を更に長く伸ばし、肘と肘、膝と膝でそれを重ね合わせています。

 いったい何をする気なんでしょう? と思っていたら、いきなりその突起物から光が出ています。


 これは……ちょっとマズいかも知れません。


「くらえ! 邪光破(じゃこうは)!!」


 すると、光輝いていた突起物から、黒いレーザーみたいな物が飛び出して来ました。それを咄嗟に避けたのは良いけれどーー


「あははは!! 無理だよ~それは追尾性があるからね!」


 黒い光が追いかけて来ていました。それなら……。


「術式吸ーーって、うわぁぁ!!」


 その黒い閃光を吸収しようとしたけれど、何故か吸収出来ずに、僕に直撃してしまいました。


「あぐっ!」


 そのまま吹き飛ばされ、大きな木の幹に激突して、背中を強打してしまいました。

 咄嗟に白狐さんの能力を使い、防御力を上げていて助かったけれど、何で吸収出来なかったんですか?!


「椿、大丈夫?!」


「大丈夫です、美亜ちゃん! とにかく、美亜ちゃんは集中して下さい!」


 僕はそう言うと、足に力を入れて立ち上がる。


 こんな所で……まだ何も解決していない状態で、僕が負ける訳には、いかないのです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ