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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾章 心機一転 ~成長する想いと不変の悪意~
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第漆話 【1】 拮抗する力

 もう僕は、昔の僕じゃないんだ。こいつは、放っておいたら危険だ。だから、倒す。

 ついでに華陽の居場所も聞けたら良いけれど、そこまで考えていたら隙を突かれてしまう。油断はしません。


「ふん。力の加減も出来ない暴走車が、たった半年で何が変わったと言うんだい?」


 車でもね、半年の改良期間があれば、随分変わると思うよ。

 やっぱりこの閃空は、精神が妖魔に寄生された時のまま、成長をしていない。考えが少し浅い。そしてそれを、長い年月を生きて来た経験だけで補っている。


「ほら、動かないならこっちから行くよ!」


 すると閃空は、腕を折り、肘から伸びた黒い刃みたいになった骨のような部分から、真空の刃を生みだすと、それを僕に向かって放って来ました。


「浄化」


「へっ? えっ? な、何だって? 軽々と……僕の攻撃を?」


 今までは遊んでいたけれど、今回は違ったのかな?

 どうやら、結構本気で撃ったみたいです。でもだからこそ、閃空の打たれ弱さが露見しましたね。


 こんな簡単に対処されるとは、思わなかった様です。


「どうしました? 負なる者。そんなに意外ですか? それなら、もっともっと心を折って上げましょう」


「くっ、この!!」


 すると今度は、閃空が凄いスピードで僕に突進して来て、腕のその突起物を突き刺そうとして来ました。だけどそれも、受け止めるのは簡単でしたね。


「くっ……! なっ、なんで……」


「何で? そんなの、私がそれだけ修行をしたという事です。受けなさい。華螺羅狗斬(かららくざん)!!」


 この技名は、酒呑童子さんが付けました。酒呑童子さんには、子供の名前を付けさせたら駄目ですね。

 技名はとにかく、これは浄化する真空の刃が、螺線状になって広がっていき、そのまま相手を切り刻む。そんな技なんです。


「ぐぁぁあ!!」


 それでも、閃空の戦闘能力は高いです。咄嗟に身を守り、真空の刃に耐えています。

 普通なら、かなりのダメージを与えるはずが、真空の刃が収まった後、閃空は倒れる事無く、僕を睨み付けてきました。


 至近距離で、まともに全部受けたのに。膝くらい突くかなと思ったのに、それも無し。身体に切り傷を付けただけでした。

 相手の方が硬かったよ。そうなると、ちょっとやそっとの技では倒せないですね。


「ふふ……あははは!! なぁんだ~結局修行って、剣術だけかよ。下らないね! そんなんじゃ僕はーーげふっ?!」


 あのね、そうやって自信満々に胸を張っているから、僕のハンマーの餌食になるんですよ。だけど、前みたいな妖術ではないよ。


黒槌地龍撃(こくこんちりゅうげき)


 堅さも威力も、その重さも倍増です。

 そして前みたいに、回転して威力を付ける事無く、ハンマーにした尻尾をしならせて、そのまま打ちつけます。まるで、龍が飛んでいるかの様にしてね。それだけで、閃空は後ろに激しく吹き飛んで行きました。


「あぁぁぁあ!!」


 その後、建物にぶつかる音が聞こえたけれど、その直後に、閃空がこっちに向かって来ました。う~ん、これでも駄目ですか。


「こぉのぉお!! 雑魚妖狐がぁ!!」


「いやいや……この状況で、良く雑魚と言えますね。以前にも増して、負の感情が増えていませんか? 負なる者」


 そのまま閃空は、両手両足を巧みに使い、殴った後に突き刺そうとしたり、蹴った後に突き刺そうとしていたけれど、僕はそれを全部交わします。


 うん、酒呑童子さんからの奇襲攻撃を交わす方が、遥かに難しいかも知れません。だって、閃空の攻撃は安直だから。

 真っ直ぐに拳を打って来て、それを避けられたら、肘に付いている突起物で刺して来る。正直言うと、予測していれば避けられます。他の人から見たら、全く見えない程のスピードだとしても、です。


「どうしました? 負なる者。当たっていませんよ?」


「ふん! 僕がただ、めちゃくちゃに攻撃をしているだけだと思うなよ!」


 分かっていますよ。周りの妖魔だよね。集まっているのは、さっきから分かっていたよ。だから、ハンマーから戻した尻尾を、今度は炎に変えます。


黒炎尾(こくえんび)槍華繚乱(そうかりょうらん)!」


 そして、尻尾の毛をいくつもの炎の槍に変え、その妖魔に向けて放ちます。小さくて細いけれど、あの消えない黒焔ですからね。当たれば良いんです。当たったら貫いて、燃やし尽くすけどね。


「なっ……なぁ!」


「さっきから、な~な~うるさいですね。猫ですか、あなたは」


 次々と、妖魔を燃やし尽くしていっているのが意外なのかな?

 確かに相当妖気を使うけれど、今の僕はかなりの妖気量なのです。これくらいはもう、朝飯前です。


 でも、その殆どがAランクの妖魔ですね。という事は……。


「ふ、ふん。精々雑魚妖魔を倒して良い気にーーあっ?」


「あぁ、居ましたね。やはり隠れていましたか。ですが、今の私には奇襲すら無意味ですよ」


 建物の影とか、自身の能力を使って、Sランク妖魔がそこら中に隠れていたけれど、そいつ等の妖気を察知して、影の妖術で捕まえました。

 そのまま逆さまにぶら下げる様にして、全員引っ張り出したので、まるで魚を釣った様になってしまいましたよ。


 これは、全員巻物で捕まえておかないといけないですね。Sランク妖魔を浄化するには、ちょっと時間が足りないです。


「白狐さん黒狐さん。この負なる者の捕獲、お願いします」


『うぉ? お、おぉ……わ、分かった』


 だから、何で皆呆然と見ているんですか? まるで、あり得ない景色を見ているかの様な、そんな表情をしていますね。


『しかし椿。お前、捕獲するって……滅したりはしないのか?』


「黒狐さん。今の私は、ただ無闇に負なる者を滅しようとする存在ではないです。浄化に時間がかかって、面倒くさいというのもありますけどね。ただ、この者は別です」


 そして僕は、再び閃空に向き合います。もちろん、相手は意外な展開の連続で、最早余裕なんて無くなっています。


 いける。このまま何も無ければ、閃空を。


「あ~なんで……こぉんな面倒くさい事に。なんで……」


 閃空がフラフラしながら、何か呟いていますね。何でしょうか……。


「なぁんで、本気を出さなきゃいけないんだよ!!」


「なっ? ぐぅ!!」


 嘘、見えなかった。は、早い! 一瞬で刺された。

 ダメージはそんなに無かったので、咄嗟に体勢を立て直したけれど、また同じ場所を刺されました。

 しかも、僕の足を狙って来ています。立てなくする気? 嫌らしい手を使って来るけれど、常套手段ではあるよね。


「なる程。それがあなたの本気ですか」


「あはははは!! そうさ! だが、絶対最強じゃないさ。それならさ~とっとと本気を出しているだろう?!」


 確かにその通りですね。つまり、弱点があるんでしょうけど、それを教える訳はないですよね。


 だけどそのスピード、閃空は見えているのかな? 見えていないのだとしたら、感覚が頼り。それなら、落ち着いて深呼吸して、妖気を乱さず、空気の流れを読み取ります。


 微かな空気の流れの変化。それだけで、捕らえる!!


「そこです!!」


「くっ……! ざ~んね~ん!」


 残念、掠っただけですか。逆にカウンターで、僕の方が少しダメージを受けてしまった。そうなると、もうこの手段は対策を取られたと思う。次ですね。


「仕方ありません、次の策です」


「へぇ、まだ何かあるのかな? でも、させなーーいっ?!」


 浄化の神風を、爆発させるようにして一気に広げ、その衝撃で吹き飛ばします。

 広範囲に渡って吹き飛ばせるので、凄いスピードで動いていて、それが見えなかったとしても、これなら当てられます。


「うわぁぁあ!! なっ……ち、力が、力が抜けていく!」


「当然です、浄化の風ですよ。そのまま消え去りなさい。負なる者」


 例え踏ん張って対抗しても、僕の浄化の力も上がっているんですよ。だから、そのまま消えて下さい。


 だってあなた達は、江戸時代の人間。


 この時代に居ては、駄目なんです。ちゃんと眠って下さい。然るべき場所でね。

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