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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第捌章 純真可憐 ~戦う乙女達~
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第拾伍話 【2】 美亜の呪術

 僕は何とか玄空から距離を取り、神妖の力を少しだけ解放し、御剱を淡く輝かせると、それを構えて相手を見据える。


【大丈夫なの? 結構食らってたけど】


「うぅ……正直に言うと、そこら中痛いですよ……」


 距離を取るためとはいえ、殴られ過ぎました。

 白狐さんと黒狐さんの激怒する姿が目に浮かぶけれど、向こうは向こうで、結構苦戦していますよ。2人にしては珍しいんだろね。どうしたんでしょう。


 いや、今は周りよりも、自分を狙う相手に集中しないと。


「ふん。どうやら、まだ力を使いこなせていないようだな。ならば……ぐぉっ?!」


「力ばかりじゃないんですよね。少量の力でも、どうやって工夫を凝らして戦うかですよ!」


 相手が油断したので、隙を突いて突撃してみたけれど、思いの外上手くいき、相手の顔面に御剱を叩きつけられました。自分でもちょっとびっくりです。


 ただ、この状態の御剱は斬れません。

 その代わり、鉄の棒みたいに硬くなっているので、こうやって思い切り殴れば、ダメージを与える事は出来ます。


 これで出来るだけ、相手を殺す事なく倒せる。あとは、僕の動き方次第です。

 龍花さんの特訓の成果で、今のは上手くいったけれど、相手はそれくらいじゃダウンしないので、僕の攻撃を耐え、その場で踏ん張った後に、そのまま錫杖を振り抜いて来ました。


「くっ……!!」


 それを、僕は御剱で防ぎます。


「ほぉ、中々の強度だな。だが……むん!」


「えっ……ぎゃぅ?!」


 玄空は常に険しい顔をしているから、その表情が読めません。だから、まさか錫杖に札が付いてるとは思わず、その先が爆発しました。

 そして爆発したのに、錫杖の方は何とも無くて、僕は激しく吹き飛ばされ、地面に背中を打ち付けてしまいました。もう何回目ですか……。


「いっつ……」


「一時たりとも油断するな。貴様の目の前に居るのは、鬼神だぞ」


「鬼神? ふふ」


「何がおかしい?」


 あぁ、つい笑ってしまいました。

 まさか自分の事を、鬼神って言うなんて思わなくてね。だって本当の鬼神を、僕は知っているんだから。

 それを間近でいつも見ていたら、あなたが鬼神かそうでないかは、直ぐに分かるよ。


 そうだよ。僕は玄空を怖がっているけれど、思えば酒呑童子程のチートっぷりではないです。


「よっと……! それじゃあ、行くよ!」


「ぬっ? うぉっ!?」


 ちょっとだけ、気が楽になりました。

 だから、仰向けに倒れていた状態から、足の勢いだけで起き上がると、そのまま玄空の懐に突っ込み、御剱で相手の錫杖を弾き飛ばしました。


「やっぱり。手で握り締めながら、その中に札を隠していたんですね?」


 錫杖の先に札が無かったので、隠すとしたらそこしかないと思いましたよ。冷静に考えたら、簡単な事でしたね。


「やぁっ!!」


「ぬぐっ! く……」


 神妖の力を解放している時は、白狐さんと黒狐さんの力を同時に解放している様な状態です。だから、相手の顎を殴れば、相当ぐらつくよね。


 そこを、御剱で突く。


「がっ……!!」


「えっ……? きゃぁっ?! ちょっ……玄空、何しているの?! 折角トドメをさそうと思ったのに!」


 しかも、吹き飛ばした先に峰空が居て、思いっ切りぶつかっちゃいましたね。何をしていたんだろう。


「椿ちゃん、ありがとう……助かったよ~」


 良く見たら、カナちゃんが押されていました。制服が斬られてボロボロになっていますよ。それに、息切れも激しいです。


「カナちゃん、もう……大丈夫じゃないじゃないですか」


「あはは……ご、ごめん。思った以上に上手くいかなくて」


「笑って誤魔化しても駄目」


 カナちゃんが無事で良かったけれど、そんな無茶をしてまで、僕の足手まといにならないようにするなんて……カナちゃんのバカ野郎。


 だから僕は、そのままカナちゃんの元に歩いて行くと、彼女のほっぺを引っ張ります。


「いひゃひゃひゃ……」


 柔らかいし良く伸びるし、プニプニしていますね。でも、これぐらいにしておきましょう。まだ戦闘中だからね。


「もう……椿ちゃん、何するの?」


「別に。無茶した罰ですよ」


「椿ちゃんもね……」


「いっ……! 背中は駄目……」


 何回か地面に叩きつけられているから、僕の背中は真っ赤ですよね、きっと……。

 だから、こんな風にちょっとでも触られたら、滲みる様な痛みが来るからね。そうだね、僕も無茶してました。


「くっ……おのれ」


「おのれは私の方よ! 何してくれてんのよ。良いから、早く退きなさい! それと、胸に手!」


「むっ? 邪魔なものが……」


「何ですって!!」


 あれ? 向こうは向こうで、何で喧嘩を始めているの?

 もしかして……相手に勝てるとしたら、そこかな。仲間同士の連携が、全く出来ていないですね。


「ちっ……しかし、我が錫杖『剛枝』を吹き飛ばすとはな。良かろう、もう少し本気を出そう」


「はっ? ちょっ、待ちなさい玄空!」


「ぬん! 秘術『鬼神剛腕(きじんごうわん)』!!」


 玄空が更に本気を出すと言った後、両手を合わせて、力を込める様な動作をしました。

 すると、玄空の両腕がいきなり太くなり、袖を破り、更に筋肉も倍増し始め、血管が浮き出ていきます。


 何だか気持ち悪い……なんて考えている場合じゃないです! その両腕から、大量の妖気が溢れていますよ。どうなっているんですか。


「ぬぬぬぬ……ぬぅぉぉおおお!」


「この、バカ! 私が居るのも考えなさいよ!」


 峰空が慌ててその場から離れているので、僕達も離れた方が良いよね?

 しかも、合わせた両手をそのまま握りしめると、玄空は両腕を振り上げ、地面に向けて振り下ろそうとしています。


 この動作、嫌な予感しかしません。生徒の皆が巻き込まれたら大変です。


「くっ……カナちゃん! 生徒の皆を!」


「駄目! もう間に合わ無いよ!」


「ぬぉぉお!!!!」


 確かに、もう遅かったです。雄叫びを上げると同時に、玄空は地面を叩きつけました。

 その瞬間、グラウンドの地面が一気に崩壊し、その衝撃で端の方が捲れ上がり、真ん中は一瞬の内に陥没してしまいました。


 そして僕達は、それに巻き込まれてしまっています。


「きゃぁぁあ!!」


「あぁ! 椿ちゃんが、可愛い悲鳴を!」


「カナちゃん! それどころじゃな~い!」


 突き出た岩に刺さったらどうするの?!

 それに、足場がいきなり悪くなったから、ちゃんと立てないし、倒れたところを土砂とか岩とかが襲って来ているからね。


「あっ、何とか間に合ったわね」


「えっ? うわっ!」


 だけど、カナちゃんが何かを言った瞬間、陥没した地面から、更に何かが伸びて来ています。

 これは……木の幹?! それがどんどん伸びて来ていますよ。何が起こっているんですか。


「はぁ、はぁ……間に合わったわね。というか、お母様ったら……とんだ勘違いをしたわね。私、草花に呪術をかけるタイプじゃないじゃない。木に呪術をかけるタイプじゃないの!!」


「えっ? 美亜ちゃん?!」


 美亜ちゃんの声が上から聞こえて来たから、何処にいるのか探すと、なんと屋上から、美亜ちゃんがグラウンドに向けて手をかざしています。まさか、この木は君が……。


「やっと私の能力が分かったわ。妖気が少なくても、軽く木に呪術をかければ、どんどん広がっていく。そりゃ、私自身の妖気が少なくなるのも当然かもね。だって、こんな事になっちゃうんだもん。私の妖気がもっと沢山あれば、下手したらこの星を滅ぼしちゃうわね」


「その通りですね、美亜ちゃん……」


 だって、当たり一面樹海になっていますよ。何ですか、この呪術は!! しかも、木の木目が顔みたいになっていますよ……じゃなくて、もう顔ですね、これ。 


「うひゃああ!! これ、蔦に捕まって動けません!」


「椿ちゃん、落ち着いて。そういう呪術なんだし、しょうが無いわよ。しかも、本人まだ操れていないし……」


 そうですね。敵の方も捕まっているけれど、最悪なのが……。


「ふははは!! 面白い! だが、俺には効かん!」


 玄空だけ、捕まえられていませんよ。


 蔦が勝手に伸びていて、その玄空を捕まえ様とするけれど、太い腕から繰り出されるパンチは、突風を生み出していて、それで蔦を吹き飛ばしていました。


「くっ!」


 とにかく、僕も御剱で蔦を切り、太い足場の様になっている木の幹に着地し、下に居る玄空を確認します。


 多分、こいつが滅幻宗の中で、最強なのかも知れません。


「さぁ……第二ラウンド開始だ!」


 そう言って、玄空は更に腕に力を入れていきます。また凄いパンチが飛んで来そうですね。


 妖術も駆使して戦わないといけないのかな? だけど、今の状態でそれをすると、神妖の力が押さえられないので、暴走する確率が上がっちゃいます。


 それならば、とりあえずさっきと同じ様にして、龍花さんの教え通りに戦ってみます。妖術を併用しての戦いは、最悪どうしようもなくなってからです。

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