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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第捌章 純真可憐 ~戦う乙女達~
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第拾肆話 【2】 滅幻宗との真剣勝負

 今回の滅幻宗の人数は、尋常ではない多さで、ざっと見ても50人は超えていそうですね……油断は出来ません。

 白狐さん黒狐さんは、独自の判断で動こうとしているので、そっちは信じて任せるとして、カナちゃん達を動かさないといけませんね。


 だけど、1つ気がかりなのは……。


「雪ちゃん。今一通り見た感じだと、半妖の人達が居ませんよ?」


 そう、捕らわれている生徒達の中に、半妖の人達が居ないのです。雪ちゃんにその事を言うと、ゆっくりと頷いていたので、間違いないです。

 牛元先輩やあの変態も、爆発に巻き込まれたのかな? 生徒会は北校舎だし、可能性があるんですよね……。


「とにかく、カナちゃん雪ちゃんは僕から離れないで、カナちゃんは可能な限り、敵を戦闘不能にして下さい。それと、雪ちゃんはおじいちゃんに連絡して、こっちに増援を……」


「もう呼んでる」


 あっ、手にスマートフォンを持っていましたね。雪ちゃんの行動が早くて助かりましたよ。それでも、増援が来るには時間がかかります。だけど、ある程度は敵の数を減らしておきたいですね。


 そして、この事態に湯口先輩は、いったい何処に行っているんでしょうか? 先輩は敵じゃないって、信じて良いのかな……。


『椿! のんびりしている場合ではない。来るぞ!』


 白狐さんのその声に驚き、急いで前を向くと、大量のお坊さん達が、手に錫杖やお札を持ち、一斉に襲いかかって来ていました。


「あ~もう! 作戦会議もさせてくれないんですか!」


『当たり前だろう。とにかく落ち着け、椿。いつも通り、妖怪退治をする要領で、片付けていけば良い。4人の幹部らしき奴等は、俺と白狐でやる! お前達は雑魚を頼む!』


「あっ、はい! 分かりました!」


 そうでした。全体の指揮は、2人に任せれば良かった事ですね。とにかく僕達は――


「雑魚とは言ってくれるな、化け物どもが! 人間を甘く見たらどうなるか、思い知らせてや――」


「妖異顕現、黒棍土塊!!」


「ぐぁっ!!」


 この勝手な事をしてくる人達に、お仕置きすれば良いだけです。


「そっちの方こそ、僕達が化け物だって分かっていますか? 人間には扱えない力を使うんですよ!」


 すると今度は、別の人が僕の後ろから、突然襲いかかって来たけれど……。


「後ろから椿ちゃんを狙うな!!」


「ギャァァア!! あっちぃ!」


 炎を纏ったカナちゃんが、火車輪を巧みに操り、相手を斬りつけない様にしながら、その体に火を点けましたね。

 もちろん、そんな勢いの強い炎じゃないけれど、お札とかは燃えちゃったかな。


「うん。数は多いし、敵は僕達の能力を分かって攻撃はしてくるけれど、力の差があるからね、あんまり意味がないです……よ!」


 そして僕は、今度は白狐さんの力を解放し、爪を鋭く伸ばすと、次々とお坊さん達の札を、その服ごと切り裂いていきます。


 人間にとっては凄いスピードなので、頭では分かっていても、目で追って身体が動けなければ、対処は出来ません。

 だから、次々と僕の爪の餌食になり、10人……15人と、戦えるお坊さん達の数は減っていっています。


「おやおや、何をしているんですか? あなた達は、ただのやられる為の人形ですか? 少しはその妖狐に、傷の1つくらい付けたらどうですか?」


 そのお坊さん達の姿に、栄空が苛立ちを隠せないようにしているけれど、そんな事を気にしている場合かな。


「むっ?!」


 あっ、惜しかった。黒狐さんが雷の妖術で、栄空を狙ったのだけれど、ギリギリで避けられましたね。


『貴様、先程の台詞を言った事、後悔させてやる。椿を傷付けるだと? やってみろ! 俺達の怒りを買うだけだぞ!』


「おやおや、既に怒っているようですが? そんなので大丈夫なのですか?」


 栄空はそう言いながら、軽く挑発をしてきています。黒狐さん、少し冷静になった方が良いと思いますよ。


「椿ちゃん! 黒狐さんを見てないで、自分の事を――」


「妖異顕現、黒鉄の鎖舞」


 大丈夫ですよ、カナちゃん。僕の後ろと横から襲って来た人達は、手に持っている札を使われる前に、一気に捕まえましたよ。


「嘘……今ので更に10人……? 椿ちゃん1人だけで、もうそんなにも……」


「カナちゃんも、もう5人程倒しているじゃないですか」


 やっぱり僕達と人間とでは、雲底の差がありますね。

 たとえ特別な道具を使ってこようと、その道具が妖具みたいなものだから、それだけで差が埋まる訳が無かったです。


 でもそれなら、なんでこんな組織を作ったのでしょうか? しかも見た感じだと、お坊さん達が強くなっていない気がします。つまり僕達みたいに、特訓や稽古をしていないという事です。


「この……くたばれ妖怪!!」


「おっと……!」


 例えば、今向かって来たこの人、単純に錫杖を振り下ろしただけ。その先に妖気が集まっているので、そのまま爆発させるみたいですね。動きも攻撃も単純過ぎるよ。


「かかったな? 爆!」


「――の前に、その錫杖を折るだけです」


「あっ……」


 その後は、驚いている相手の顎に、拳を一撃入れて終了です。やっぱりおかしい。普通の人間なら、今ので瀕死だろうけどさ……。


 4人の幹部達の方は、少しずつ僕達との戦い方が分かってきたのか、そう簡単には倒せないし、油断するとこちらがやられる程にまでなっているのに、この下っ端のお坊さん達は、僕達の情報をそんなに貰っていないのか、僕達に対処出来ていません。


 使い捨てだから? それにしても、多少は戦えないと使えもしないでしょうに、どうなっているの。


「椿ちゃん、凄い……」


「だって、白狐さんから簡単な体術と、黒狐さんからは妖術。龍花さん達からは、対人戦を学んでいるので、そりゃ多少は動けるようになっているよ。まだドキドキするけどね……」


 本当は、緊張していて手汗も凄いです。

 だって、何をして来るか分からない集団ですからね。それに、クラスメイト達が捕まっちゃっているので、派手な妖術は使えないです。巻き込まれたら大変ですからね。


 だから今回、僕は術式吸収と解放も出来ません。本当に危ないですから。


「妖異顕現、影の操!」


 それが無くても、割と簡単に相手を捕まえられていますけどね。


「なっ! 俺の影が?!」


「しまった……! 影を操る妖術か?!」


「こ、こんな強いなんて聞いていないです!!」


 やっぱりおかしい。僕達の情報を持っていない? そして、驚異的に弱い。いったい、何が狙いなの……。


「椿ちゃん、油断しないで。4人が……」


「分かっています。今ので全員捕まえたのに、一切動じていない」


 今、黒狐さんと相対している栄空は、黒狐さんの妖術を簡単に交わしながら、その隙にお札を投げ、反撃をしているし、白狐さんと相対している閃空は、楽しそうにちょこちょこと動き回り、白狐さんの攻撃を避けまくっています。


「残念だが、我々も幾度となく、貴様等と戦い、その情報を得ている。もう貴様等の勝利は、一切無い!」


 すると、その2つの戦闘の間から、険しい表情をした玄空が、ゆっくりとこちらに向かって来ました。


「玄空……湯口先輩の父親」


 流石に凄い気迫なので、僕は身構え、咄嗟の相手の行動にも反応出来るようにします。


「椿ちゃん……」


「カナちゃんは下がっ……危ない!」


 そうでした……もう1人、峰空も居たんだけれど、その人はまだ前に居たはず。それなのに、今は僕達の後ろに居て、刃の付いた円盤の様なもので、カナちゃんの首をかき切ろうとして決ました。


 僕が咄嗟に、カナちゃんの頭を押さえて伏せさせなければ、そのまま斬られていましたよ。


「あら残念。良く気が付いたわね~」


「いたた……ありがとう、椿ちゃん」


「大丈夫です。それより、カナちゃんは離れてて。2人相手だと、流石にカナちゃんを守れないかも知れない」


 どうやら最初から、この4人で戦うつもりだったようです。でもそれなら、この沢山のお坊さん達は、何の為に連れて来たのでしょうか。ただの壁? だけど、それを考える前に……。


「ぬん!!」


「うわっ?!」


 素手で地面を抉らないで下さい!

 玄空は、力任せで来ましたか。この2人の組み合わせが、1番厄介かも知れません。だって……。


「あっ、ぶない!」


 避けた先に、峰空の円盤状の武器が飛んで来て、真っ二つにしようとするんです。この状況だったら、二手三手先を読まないといけません。それはまだ、今の僕には無理です。どうしましょう……。


「さぁ、今度こそは大人しく捕まるがよい! 妖狐、椿!」


「出来るだけ大人しくして欲しいのよね~だから、お願い~」


 それでも、ここから逃げる訳にはいかないし、相手の言うことも聞く訳にはいかない。だから僕は、僕なりの全力で、この場を乗り切るしか無いです。


「どっちもお断りします!」


 そう叫び、僕は再び構えを取った。

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