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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第捌章 純真可憐 ~戦う乙女達~
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第拾肆話 【1】 再三の襲撃、滅幻宗

 朝ご飯を食べ終えた僕は、気持ちを切り替え、学校に行く準備をすると、いつものようにレイちゃんに乗って登校です。


 その横には、ちゃんと皆もいるよ。今日は夏美お姉ちゃんも一緒ですけどね。


「あぁ、そうそう、椿。杉野さんからね、あなたの今回やった事に関しては、特例として扱われる為、罪には問わないってさ」


「あっ、うん。それは聞きました。でも、それで僕の罪の意識が消える訳では無いけどね……」


「それと、椿。これも」


 僕の気分がまた落ちそうになった瞬間、夏美お姉ちゃんがスマホの画面を見せてくる。すると、そこには……。


『むしろ俺を捕まえてくれ、ご主人!! いざという時に主人の傍に居て、フォローすら出来ない不甲斐ないペットを罰してくれ!』


「妖異顕現、影の操。からの削除」


「ちょっと~!! 何してんのよ、椿!」


 すいません、気分を害したのでつい……。

 しかも、そこまで距離があったので、影の妖術を使っちゃいました。だけど、この妖術は意外と便利なんですよね。


「ふ~ん。あなた達はいつもそうやって、騒いで登校しているのね」


「僕からじゃないですよ」


 ちょっと待って。その前にさ、僕の後ろには誰もいないはずだよね? 皆は隣に居るし、僕は前を向いている。つまり、誰かが追いかけて来ている。


「誰?!」


「わっ! びっりくした……いきなり振り向かないでよ~私よ」


 あれ? あなたは確か……おじいちゃんに何か報告をしていた、烏天狗の女性の黒江さんですよね? でも、見た目は烏天狗には見えないです。

 女子大学生にしか見えない服装だけど、烏の羽根が背中から生えているから、間違いないですね。


 艶のある黒髪のストレートロングヘアーに、少しつり目のその風貌は、女性ながらに凜としていて、龍花さんとはまた違った格好良さがあります。

 しかもスタイルも良いし、胸も大き過ぎず小さ過ぎず、とても丁度良いサイズ。20代の風貌にはぴったりで、出来るお姉さんって感じです。


 だけど今日の朝、僕を見て顔を赤らめていたのは、何ででしょうか? そして、今僕達を追って来たのは、何か用があるからなのかな。


「えっと……黒江さん。僕達に用があるんですか?」


「あら? 自己紹介したかしら? あぁ、あの時の会話が聞こえていたのね。いえね、翁には報告したけれど、あなた達にも言っておこうと思ってね」


 背中の羽根を羽ばたかしながら、優雅に飛ぶその姿は、絵画からそのまま取り出した感じで、ちょっと見とれちゃいました。

 横からカナちゃんと雪ちゃん、それに狐のキーホルダーに変化している2人からも、嫉妬の視線を感じたので、慌てて視線を戻します。


「ふふ。やっぱり可愛いわね~私の初恋の人と一緒ね。性別は違うけれど、どことなく似ているわ」


「それよりも、おじいちゃんに報告した事って何ですか?」


 今朝、僕を見て顔が赤くなっていたのはそれでしたか。しかも、男性に似ていると言われて凄く複雑です。


 そりゃあ、僕は男の子になっていたから、まだ多少は男の仕草になる時もあるけれど、それでも今は女の子なんだよ。女の子らしくしないといけないのに、男の子に似ているって言われたら、ショックというか何というか……う~ん。


「あっ、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったのよ。そうそう、翁に報告した事なんだけれど、滅幻宗の妖怪狩りが激化しているようなの。あなた達も気を付けてね。半妖だろうと容赦しないようだし、被害者も出ているわ」


「えっ! そんな……でも、何で今になって?」


「さぁね、知らないわ。そこの所は、センターの妖怪達が必死に調べているから、あなた達は自分の身を守る事に専念して。それじゃ」


 黒江さんはそう言うと、そのままどこかへ飛び去って行った。


『そういう事か。だからあいつは、お前達に顔向け出来ず、1人で何とかしようとしているのだな』


 そうだとしても一緒です。僕にあれだけの事を言っておいて、自分は全然じゃないですか。

 罰として、おじいちゃんの説法をたっぷりと聞かせて上げないといけませんね。



 だけど、その後学校に着いた僕達が見たのは、想像以上の出来事でした。



「「「学校が襲撃されてる!!!!」」」


「またですか?!」


 そう、目の前まで見えて来た学校。いつもの様に、近くの公園に降りようとしたら、その学校を大量のお坊さんが取り囲んでいるのが見えました。


『いかん! 椿よ、急げ! あの時の比では無いぞ!』


『正体を隠している場合では無い! あいつら、所構わず爆破させているぞ! 一般人にも被害が出る!』


「嘘……レイちゃん、急いで!!」


「ムキュゥ!!」


 一般人に被害……そんなのは駄目。とにかく、皆には後から来るように言って、レイちゃんに指示を出し、僕と白狐さん黒狐さんが先行します。

 絶対に、被害は出したら……と思ったけれど、僕が学校に着くという丁度その時に、北校舎が大きな音を立て、爆発した。


「えっ……嘘」


『くっ、不味い! あの4人も居る!』


『ちっ! さっきのはその内の1人がやったのか! 何が目的だ!』


 とにかく、これ以上滅幻宗に好き勝手させない為にも、校門前に着いた僕は、急いでレイちゃんから飛び降りて、皆の集まっているのが見えたグラウンドに向かい、白狐さんの力を解放して走り出す。

 それに続くようにして、白狐さん黒狐さんも変化を解いて、急いで人型になると、僕の両端に並んで走り出す。


 滅幻宗の目的なんて分かっている。この学校にいる、半妖の人達を滅する為だ。

 でもそれなら、あの4人まで来るのはやり過ぎな気がします。もしかして……僕が居るから、その対策の為に4人とも送り出したの? 徹底的だ……。


 どちらにしても、今分かっているのは、一般人の犠牲すらいとわないって事。そんな罪の意識も無いような人達は、絶対に許せない。


「ん? なっ! あの3体は?!」


「まさか!」


「やっと来たか、3妖狐! だが、ここから先へは行か――」


「どいてぇ!!」


『邪魔じゃ!』


『どけぇ!!』


「なぶぅ?!」

「げふっ……」

「つ、つよ……」


 何ですか、今の3バカみたいなのは? 格好付ける前に、攻撃した方が良いですよ。そうしないと、こうやって殴られて吹き飛ばされて終わりですよ。


 とにかく、北校舎に誰が居たのか気になるけれど、全員グラウンドに避難していれば、誰も犠牲にはなっていないはず。だから、皆が避難していたグラウンドに行く方が早いです。


「皆! 無事ですか?!」


 そして、グラウンドに着いた僕がそう叫ぶと、全体を見渡す様にして確認する。

 だけど、全校生徒が居るかどうかなんて、僕には分かりません。慌てていたから、つい……。


「ほぉ、ようやく来たか。1番厄介な奴等がな」


 だけど、校門から1番近いグラウンドの入口には、険しい顔をする玄空と――


「やぁ。今度こそ、ちゃんとしっかりと遊んであげるよ」


 無邪気な笑みを浮かべる閃空と――


「ふふふふ。凄く必死になっちゃって。そんなに、人を傷付けられるのが嫌? 妖狐のくせに」


 どっちか妖怪か分からない程に、妖艶な笑みを浮かべる峰空と――


「何回か、してやられてますからね。今までの分、まとめて返してあげましょうか」


 目が細くて閉じているように見えても、僕達に殺気の目を向けているのは間違いない栄空。


 そいつらが、この学校の生徒達全員を縛り付け、グラウンドに集めていました。避難していたんじゃなくて、捕まっていたのですか……。


 だけどその中には、先生達の姿と校長先生の姿が見えません。いったい……何処に。


「あぁ、椿ちゃん。椿ちゃん~! 先生達がぁ!」


 するとクラスメイトの1人が、僕に泣きそうな顔を向けてそう言ってくる。


「何、どうしたの? 先生達は何処?! 校長先生は?」


 だけど、僕のその質問に答えたのは……。


「はは! 先生達を探しているのかい? 先生達は、生徒達とは別の所に捕らえているから、安心しなよ~」


 無邪気に笑う閃空だった。


「別の所?」


 思わず睨み付けたけれど、閃空は全く意に介さず、ある場所を指差してきた。


「そっ、あっそこ~って、ごっめ~ん。生徒達が騒がしいから、黙らす為に爆破したんだった」


 そう言いながら閃空が指差したのは、さっき爆発した北校舎。しかも最後の方は、声に憎しみが募っていて、寒気がしました。

 その瞬間、僕の視界が揺れ、呼吸が浅くなっていくのが分かりました。


 爆破した? 一般人の先生達を? そして、あの校長先生も? 嘘……でしょう。


『椿よ、落ち着け。また暴走するぞ』


『それに、お前はもう、1人では無いだろう?』


 白狐さん黒狐さんが、僕を落ち着かせる為にそう言った後、僕の後ろから、頼もしい声が沢山聞こえて来た。


「校長先生が……! よくも……私の恩人を殺ったわね! もうあなた達は、お坊さんでも何でも無いわよ。ただの殺人鬼よ!」


 カナちゃん達がここに到着し、さっきの事を聞いていました。そしてカナちゃんと雪ちゃんは、怒りを露にしています。

 カナちゃん、落ち着いて。怒りに任せても、良い事は無いよ。だけどその目は、そこまで怒りに満ちていないし、冷静ではあるみたいですね。


「半妖の人達の救出は、任せて」


 雪ちゃんは戦闘は出来ないけれど、生徒の皆をコッソリと救出する事は出来そうですね。


「さ~て。このお馬鹿さん達は、どうやって呪って上げようかしら。軽い呪いじゃ駄目ね、一生後悔する程の、キッツい呪いをかけてあげるわ!」


 その中でも、1番頼もしい事を言ってくる美亜ちゃんだけど、君はまだそこまでの呪術は使え無いんじゃ……。

 とにかく、この状態だと駄目です。誰かがまとめないと、敵の策略にハマってしまいそうです。相手はそれが得意ですからね。


『椿よ、3人の指揮は頼んだぞ』


『そうだな。椿の方が、3人の事を良く知っているからな』


「やっぱりですか」


 そうですね……そんな予感はしてました。

 嘆いていてもしょうがないです。上手く出来るかは分からないけれど、やってみるしか無いですね。

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