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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第捌章 純真可憐 ~戦う乙女達~
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第玖話 【2】 椿の本来の能力

 僕達の模擬戦を見ていた八坂校長先生は、扇子を広げながらこっちにやって来た。


「いやいや、流石だね~椿君。夏休みの間に、君は更に強くなったようだ。妖狐が板に付いてきているね」


 扇子の文字は見ませんよ。いや、また変な事をされると困るから、見ておいた方が良いけれど、もう突っ込まないよ。


「何しに来たんですか? もう直ぐお昼休みも終わりますよ」


「なに、君達に少しお願いをと思ってね」


 嫌な予感しかしないけれど、断ったら断ったで、カナちゃんや雪ちゃんに怪しまれちゃう。内容にもよるけれど、慎重に答えた方が良いかな……。


「八坂校長先生、ここから先はこの私……」


 あっ、更に嫌な予感がします。


「皆の味方! 半妖の味方! この赤木生徒会長――」


「妖異顕現、黒鉄の鎖舞」


「――がぁっ?!」


 変な前口上で、校長先生の後ろから登場するから、そうなるんですよ。尻尾の毛を変化させた鎖で、変態会長を縛り付けました。

 そのままこの鎖は尻尾から取り外せるので、これで捕獲完了という事です。


「いや、何をするんだい?! 僕はまだ何もやっていないよ?!」


「すいません。こうでもしないと、まともに会話が出来ないんです。危なくてね」


「僕は危険生物か何かかい?」


「ある意味、危険生物より厄介です」


 女性のみにだけどね。

 すると、校長先生もニコニコしながら、変態会長に近づいて行く。


「赤木君。君は良く動いてくれいて、助かっているよ。だけどね、ちょっと一線を越えてしまうところが、玉にきずかな?」


「あの、校長先生……私が何か?」


 流石に変態会長も、校長先生を前にしては、蛇に睨まれた蛙状態で、凄く大人しくなっていますね。何かしたんでしょうか。


「君、体育の時間中、水泳の授業をしている女子の更衣室に忍び込み、服とかに染み付いている汗とか、その他色んなものを舐め取ったようだね?」


「いえ、あれは……私は垢舐めの半妖ですから、垢を舐め取って妖気を補充しないと、不完全な私では暴走を……」


「風呂桶ので我慢しろと、そう言いましたよね?」


「うっ、ぐぅ……いや、その……うわっ!」


 校長先生、こんな人に慈悲なんて不要です。

 このまま僕の鎖で縛り付けたまま、屋上から吊り下げておきしょう。


「待て待て! 椿君、話を聞け! 半妖の中には、ある程度妖気を補充しておかないと、暴走する人も居る! 辻中君もその1人だ! だから私も、人の身体の垢を舐めて、妖気を補充しないと、暴走してとんでもない、事……に」


 僕の目を見て観念しましたか? 僕はその言葉のせいで、更に怒っちゃったからね。適当な事は言わないようにして欲しいですね。


「別にさ、妖気を補充出来れば良いんでしょ? 妖怪食で十分だよね? それにカナちゃんは、ちゃんと妖気を摂取していても暴走したよ? 気持ちの問題じゃないんですか? 言い訳になってないですよ、変態」


「椿ちゃん、遂に会長が取れたよ」


「しかも、一気にランクダウンしている……恐ろしい」


 2人とも関心しないで下さい。

 それよりも、痛い所を突かれたこの変態は、ようやく大人しくなりました。だから遠慮無く、屋上から吊り下げておきます。


「さて、説明する為に出て来たのに、結局罰せられて終わりの子は放っておいて、君達3人に、放課後校内の見回りをお願いしたいのさ」


 校長先生も、駄目な事をした半妖には厳しくあたっているんですね。それならあの変態、もうちょっと厳しく見ておいて欲しいですね。


 僕がその変態を屋上から吊り下げた後、校長先生は笑顔のままでこちらにやって来るけれど、僕としてはその笑顔が少し怖いです。


「校長先生。それだけだったら、いつも生徒会の人がやっているから、今更私達がやったところで……」


「いや、それがね……夏休みの間に、変な妖怪が紛れ込んだらしくてね。手配書の妖怪だったら危ないだろ? だからここは、槻本君に調べてもらいたいんだ」


「あ、分かりました。()()()()でしたら大丈夫です」


 僕は校長先生の反応を探る為に、少しだけかまをかけてみたけれど……校長先生はニコニコしているだけで、反応無しです。年の功というやつですか、これは僕なんかじゃ駄目ですね。


「それじゃ、宜しくね。君達3人には、特に期待しているからね」


 そう言いながら、校長先生はその場を後にする。

 手配書の妖怪でも、ランクが低ければ何とかなるけれど、ランクが高い奴だと、どうすれば良いんでしょう? 校長先生、その辺りは考えているのかな……。


「よ~し。ちゃんと椿ちゃんの役に立てるんだって事を証明して、椿ちゃんのパートナーになるんだ!」


 カナちゃんは拳を握り締め、やる気に満ちていました。君はそんな望みを持っていたんですね。


「あのね、カナちゃんは十分に、僕のパートナーとして頑張ってくれていますよ。学校での事は、カナちゃん達がいないと上手く事が運ばないからね」


 すると、カナちゃんがいきなり僕の方を向くと、嬉しそうな顔をしながら、僕に飛びついてきました。


「椿ちゃん、嬉しい!!」


 身体から炎を発しながらね……。


「あっつぅい!!」


「あっ、あれ? ごめん椿ちゃん、大丈夫?!」


「大丈夫だけど。カナちゃん、なんで炎を?」


「ん~良く分かんない……」


 とりあえず、今炎は引っ込んでいますね。

 すると今度は、僕の手を雪ちゃんが引っ張ってきます。僕をカナちゃんから引き離そうとしていますね。


「椿、危ない。香苗はまるでバーナー、危険」


「誰がバーナーよ! 雪!」


「わぁ!! カナちゃん、また炎が!」


「へっ? 嘘?! な、何で? 特訓の時は、こんな事無かったのに?!」


 そんな事を言われても……カナちゃん、力が暴走してないですか? というより、興奮すると炎が出て……る。


 あれ、待って……何だか急に、寒くなっ……て、来て。


「雪、待って! 椿ちゃん凍らせてるから、ストップストップ!」


「えっ? あれ? 何で? 香苗の炎から守る為に、椿の周りを冷やそうとしたら、凍った」


「ちょっと! 良いから戻して!」


 ―― ―― ――


「はぁ……はぁ、し、死ぬかと思った」


 凍りついた僕を、カナちゃんが炎で溶かしてくれて、何とか危機を脱したけれど、何で雪ちゃんの能力まで、そんなに強力な事になっているの……。


 いったいどういう事なんだろう。

 2人も、何が何だか分からないといった感じで、ひたすら土下座しています。別に僕は気にしていないのに。


「2人とも、頭を上げてよ。僕、怒ってないから」


「そんな訳にはいかないよ、椿ちゃん。下手したら怪我どころじゃなかったんだから。そうなったら私、一生自分を許せなくなる!」


「私も同じく。でも、私は特訓していないのに、何であんなに?」


 雪ちゃんの言うとおり、カナちゃんはともかくとして、何で雪ちゃんまで能力が強力になっているんでしょうか? 誰かが何かしたのかな? まさか、校長先生が……。


「ふふ、椿君。それはどうやら、君のせいだよ」


 すると、屋上の外側から変態の声が聞こえてきました。

 ぶら下がったままで会話に参加してくるなんて。でも、気になる事を言いましたね。僕のせいって……。


「それ、どういう事?」


 不本意だけれど、僕は屋上の端に歩いて行って、ぶら下がっている変態に声をかけた。


「八坂校長から聞いたが、君自身も神妖の力を持っているようだね。与えられたもの以外でね」


「うん。産まれた時から、僕には神妖の力があったみたいです」


「恐らく、それのせいじゃないのかい? どんな神妖の力かは知らないし、まだ無意識なんだろうけどね」


 変態にそう言われて、初めて気付きました。でも、神妖の力全てに能力がある訳じゃないし、僕自身にも、そんな神妖の能力があるなんて、とてもじゃないけど信じられないです。


 だけど……もし本当に、2人の強化がそうなのだとしたら、それは白狐さん黒狐さん以上になりますよ。それはそれで、少し複雑な気分になりますね……。

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