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「見てくださいカナタ」


 とある日の昼さがりこと。買い物がてら街を歩いている俺のすぐ傍らから俺の名前を呼ぶ声がする。


「どうしたミカ?」


 俺は声がした方―すなわち俺のすぐ横―にいる人物に対して反応を返す。


「いえ、ちょっとあそこにある御触れを見て欲しくて」


 そう言って俺の傍らの少女、ミカエルは少し先に貼ってある紙に向かって指をさす。


「ん?あぁこの前の戦いについてか」


 戦い。しかしこの戦い、決して人間同士の戦いについて言っているわけではない。それはある時突然現れたこの世界の侵略者にしてこの世界の覇権を現在握っているとある存在との戦いについてのことである。


「はい。そんなわけでカナタ、私はご褒美を要求します」


「……は?」


「ですからご褒美ですよ、ご褒美」


 ミカはまるでそれが当然の要求であるといわんばかりに俺に対して言ってくる。


「一応聞きますがミカさん。それは何についての要求でしょうか?」


「そんなもの、この前の戦いで大活躍だった私に対するご褒美に決まってるじゃないですか」


 ミカがこいつはいったい何を言ってるんだとばかりに俺を見てくる。


「……その戦いだけど、別にミカひとりの活躍じゃないよね。というかそれなら俺もミカに対して同じことを要求するぞ」


「はぁ。これだからカナタは。いいですか。確かにこの前の戦い、カナタも多少は活躍しました。それは認めましょう。しかしです、誰が一番活躍したかというと、もちろん私です。活躍の度合いで言えば私9その他1くらいでしょうか?」


「いやいやいや。それはいくらなんでも盛りすぎだろ。絶対俺もうちょっと活躍したって」


「ふっ。活躍ですか」


「お前今鼻で笑ったな!」


 ホントに何でミカはこんな感じの性格なのか。初めて会ったときは……やっぱり思い出すのやめよう。


「まあカナタの活躍に関してはひとまず置いておきましょう。それよりも重要なことがあります」


「なんだ?」


「カナタはさっき活躍の割合に関しては否定しましたが、誰が一番活躍したのかについては否定しませんでした」


「んぐっ」


「さてカナタ、一番活躍したこの私に何か渡すものがるんじゃないですか?」


 そう言うとミカは俺に意地の悪い顔をこっちに向けてくる。しかし言ってることが事実―少なくとも俺はそうだと認めてしまっている―のためどうにも反論がしづらい。


「ほらほらカナタ。どうしたのですか」


「くっ、しょうがない。それで何が望みだ?」


「ようやく素直になりましたか。それではあそこのお店にある一番高い料理を―」


 そう言ってミカが指をさした先には……一般成人男性の一月の稼ぎ以上を一皿でとってくるようなラインナップの店。


「あほか!却下だ却下」


「まったく、これだから貧乏人は」


「俺そこまで言われないとダメかな!?」


 一通り罵倒した後、おそらくミカも冗談だったのだろう。すぐに要求を引っ込めた。


「まったくカナタは本当にしょうがないですね。仕方ないのであれで妥協しましょう」


 そうして再度ミカが指をさしたのはアイスを打っている露店。値段も普通。子どもだって買える。


「一応聞くが本当にあれでいいのか?」


「別にかまいませんよ。貧乏人のカナタにはあれくらいがちょうどいいでしょうから」


「はいはい。じゃあちょっと買ってくるよ」


「あまり私を待たせないようすぐ買ってきてくださいね」


 やっぱり一言余計ながらも俺を送り出すミカ。俺はため息をつきつつも素直に露店に向かって駆け出す。


「確かにこのくらいのご褒美はあってもいいかもな」


 走りながら先の戦いについて思い返す。激しい戦いだったが俺たちは辛くも勝利した。しかしその中でミカがあの戦いでもたらしたものは侵略者に対する勝利だけにとどまらなかった。それは人類の可能性。ミカはあの戦いで人類に侵略者に対抗できるだけの力があることを証明してみせた。

新作ですが、現在メインで書いてる「私が永遠を生きるその前の話」の合間に書く予定なので更新頻度はあまり期待しないでください。

一応着地点だけは決めてます。多分そんなに長くならないんじゃないかなと思います。

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