表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

Q.E.F.3-1:黒い球が現れたと思ったら次の瞬間部屋が凍っていた

前回のあらすじ

魔王「お茶会のことをスイーツコレクションというセンス、あれは一体どういうことだ?」

スバル「スイーツがいっぱい並んでいる様は正にそれです!それが紅茶や皿という……」

木蓮「……まあ、俺はそれを略して甘これと言ってしまうセンスに半ば呆れているがな」

スバル「金剛四姉妹を運用するためにはティーセットは必須です!」

木蓮「……提督スキルが遺憾なく出てるな」

 その後1時間ほど楽しい時間を過ごした俺たちは、魔王に連れられ飛ばされてきた部屋のある王宮地下1階にやってきた。


「ここが我が国の魔法研究の最先端だ」


 蝋燭が照らされる間隔が広いからか、廊下は他の階と比べ一層暗くなっている。


「隣の部屋は僕たちが転送されてきた実験室ですね」


 実験室というより大半が儀式を行う場としてのイメージが強い。


「それにしてもこの部屋は一体……」


「この部屋は魔法戦闘訓練用の部屋だ。奥にはこれから向かう測定室と武器庫があるが武器庫はまたの機会としよう……」


 戦闘訓練、か。スバルは目の前にある魔法石を興味ありげに見つめ、今日だけで何度も見たキラキラを辺りに漂わせている。


「さて、まずはどちらから調べるのだ?」


 別に俺はどちらから調べても問題ないのだが。


「では、僕から……お願いします」


「よかろう」


 そもそも本当に魔法を使うことはできるのだろうか?魔法などというものは小説やアニメの中の代物だと思うのだが……。


「では右手をそこに……」


 そんな事を考えながら魔法式を展開しているスバルを見てみる。


「意識を右手に集中させて、魔法陣が展開されたらその魔法陣に魔力を流し込むのだ」


 低く、重たい音が実験室内に響く。するとスバルが展開した魔法式が発動された。パソコンのディスプレイのような画面が幾重にも展開されるその術式は、今まで想像していた魔法のイメージとは随分かけ離れたものだった。


「こ、これは?」


「わからぬ……私も初めて見た……」


 恐らく、何らかの情報を表示する魔法のようだが……。真相が分からぬまま考えつづけたまま大凡三分、カップラーメンが出来あがってしまう時間まで考えたが、答えにたどり着くとは微塵も思えない。


 その間スバルは後ろのほうから少し聞こえる程度の音量で「画面の大きさも操作できるんですか~、これはすごい!」とはしゃぎまわる。


「これはすごい……」


「どうした?」


 そろそろスバルのキラキラ状態を見るのに飽きがきたのだが、この状況は一体何が起こったんだ?


「この魔法はあらゆる情報を集約、解析できるようです」


「な、なんだって……!」


 と、俺が思っている以上に強力な魔法だったようだ。


「これは一体何という魔法なんだ……」


 今迄に存在しない魔法なのだろう、魔王も不思議そうにその様子を見ている。


「表示されているデータは僕にしか解読できないように暗号化されているようです、非常に興味深い魔法ですね……」


 というより、ただでさえものすごい情報量を持っているスバルが集約と解析の術を持っているって、地味にチートじゃないか……?


「上手くいけば情報を操ることもできそうです!」


 スバル、それお前が持っていると超が付くほど強力すぎるチート能力じゃないか。


「ふむ、新しい魔法だな、普通なら今までの魔法史の中に同じ魔法か同じ系統の魔法があるはずなのだが……、この魔法は同じ魔法どころか、同じ系統の魔法すら存在しない……」


 新種の魔法であると同時に、新系統魔法でもある非常に貴重な魔法。


「新系統の新種魔法、自分でも驚きです。しかし、これでいろいろわかりました」


 というかお前会話聞いてたのか。それを平然と言うスバルに俺はあとどれだけ頭を抱えていいのかよくわからない。


「まず、少なくとも僕は確実に魔法を使うことができるようですね。多分十中八九木蓮さんも」


 ほう、俺も魔法使いになれるのか。魔法使いは三十歳になってからしかなれないものだと思っていたが、使えるとなると厨二心がくすぐられるな。


「そしてこの魔法を理論的に記述するのは非常に難しいということもわかりました」


 まあ、俺はスバルの魔術がとんでもない能力を秘めていることしか分からないが、ひとまずこれだけの事がわかっただけでも大きな進展といえるだろう。


「ですが……検証はあとまわしにするしかないようですね……」


 とりあえず、今は俺の魔法能力について検討してみるか。


「さて木蓮さん、次はあなたの番です」


 と、さっきからスバルが訝しげな表情で俺を見つめている。


「どうした……?」


「いえ……少し考え事を……」


 だが、スバルは魔王の傍に近づきそのまま小声で頼みごとをしている。


「お嬢様、この部屋にいる全員を防護するような魔法をお願いできますか?」


 懸念が顔に出てしまっているということは、スバルは俺の使用する魔法を大体把握しているようだ。だが幾らなんでも防護魔法まで展開する必要性があるのか?


「防護魔法ならすぐに展開できるが……」


「……念のためです」


 それほどまでして展開しなければならない魔法は一体……。俺は少し不安げに右手をかざし、意識をそこに集中させる。


「木蓮さん、出力は抑えてくださいね……?」


 魔法に関して右も左もわからない俺に出力をどう抑えろと。スバルの時と同じく、低く重たい音と同時に魔法式が展開されていく。


 俺の魔法は至って単純、訓練室中央に黒い球が発生した。これは闇魔法の可能性が極めて……。


「っ!!木蓮さん!直ちに魔法を停止させてください!!」


 スバルがそう叫んだ次の瞬間、途轍もない引力が俺らを襲った。


「なっ、なんなのだ!この魔法は!?」


 ……部屋の温度が下がっている、その証拠に壁面が凍結し始めている……?


 本能が警鐘を鳴らしている。素早く右手を離したが、その黒い球は消える気配が全くしない。


「木蓮さん!!これはブラックホールです、早く停止を!!」


 ……俺が今操っているそれが、ブラックホールだと!?


 まさか、そんなことはないだろう!?仮に、ブラックホールを魔法操れるとしたら都市のひとつが一撃で壊滅する……って俺もチート能力者かよ!


 というより、魔力の停止ってどうやりゃいいんだ!?取り敢えず右手を魔方陣から離し、魔法の流れを止めようとしたが……。


「既に停止している筈なんだ、けど魔力の流れが止まらねぇ!!」


 止めようとしているのに魔法力を吸い取られているような感覚に襲われている。


 くっそ、どうにもならない……!!




「頭角を現し暴君よ、今一度その行いを省み、怒りを鎮めたまえ……!!マジックパリィ!」


 魔王がそれを唱えた刹那と言っていいほどの時間、さっきまであった黒い球が音も立てずに崩れ、消えていく。


「……なんだったんだ?あの魔法は……?」


 呼吸がおぼつかず、軽い眩暈(めまい)が襲ってくる。ここまでの異常事態、今日で二回目ではないのか?


「防護魔法がかけてあったからたすかったようなものだな……」


 魔王も、この非常事態に息を切らし、額に冷や汗をかいている。


「木蓮さん、あなたの能力は重力操作を行う魔法ではないかと考えられます」


「重力操作魔法……だと?」


 重力を操作する。使いどころによってはかなり有用そうに見えるが……。


「はい、重力操作魔法だと考えられますよ。先程の現象はブラックホールしたを起こすような魔術は、重力操作魔法以外理論的には証明できませんから」


 成程、確かにブラックホールは光ですらも脱出できないほどの強い重力を帯びている。


「それで……重力とは一体なんだ?」


「簡潔にいえば、周りにあるものを引き寄せる力です」


「そんな魔法は未だかつて存在しない、お前たち2人は新種の魔法を持っているということだな……」


 俺もスバルも神様というものは信じない主義だが、王道を突っ走るストーリーの主人公そのものを目の当たりにすれば、流石に一度は運命の悪戯なのではと疑ってしまうのも無理はないだろう。


「驚くべきことですがそのようですね……」


 凪いだ実験室には、凍った壁面と散らかった色々な物が惨状と俺の能力を露としている。


「とりあえず、客間に戻ろうではないか……そろそろ晩餐会の準備が整うころであろう」


 そう言いながら魔王は戸惑う俺らを余所に、客間へと足早に向かっていく。


『発現した能力が世間一般で「チート」と呼ばれる物語は、大風呂敷を広げすぎて収集できない事態が発生する』


 願わくば、そんなお決まりの展開が進んでしまいそうな、そんな嫌な予感が杞憂であることを祈りたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ