大統領の娘
この娘を上手く利用できれば状況は好転するかもしれない。
大統領の指示を無視できる娘。この娘はSPを動かすことのできる娘かもしれないのだ。
しかし、まずはこの部屋の状況をどう説明したものか。
私の後ろには大統領の死体がある。これをそのまま娘に見せて良いものか。
私は娘の素性についていくつか当たりをつけていた。
その中で最も可能性が高いと考えているケース。これが当たっていた場合、娘が錯乱する恐れがある。
「失礼ですが、Mr。そこを通して頂けますか?
私はお父様にお話があってきたのです。もうお休みになっているのですか?」
予感は的中していた。やはり、この娘は本物のファーストレディだったのだ。
そうとわかれば、この娘に大統領の死体を見せるわけにはいかない。
父親の死に対面し、錯乱されては利用するどころではなくなる。
誰かが部屋に入ってきたときの対策として、大統領の死体はベットに寝かせてある。
一見、寝ているように見えるはずだ。
『Ms. 落ち着いて下さい。大統領は非常にお疲れのご様子でした。
明日の公務に差し支えるため、決して誰も部屋にいれず、
また起こすことの無いようにと私は指示を受けております』
「そんな……まだ21時過ぎではありませんか。仮眠を取られるなんて
お父様らしくもない」
(仮眠ではなく、永眠なのだがな)
この時間の休息が仮眠ととらえられるあたり、この大統領、本当にナポレオン並に寝ない男なのかもしれない。
私は半ばこの娘を利用することを諦めていた。SPへの牽制力としては申し分ないが、中々に我が強そうな娘だ。1度はまれば、容易に操れるようにも見えるが……
私が、そう考えていた矢先のこと、この娘はとんでもないことを口走った。
「なんだ……てっきり殺されているかと思ったのに」




