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そして季節は秋から冬、春へと変わり、意外なことに私の日常にも変化が訪れていた。一言で言うと…モテ期?
これには理由があって。あれとお別れしてからしばらく気分が沈んだままだった私を見かねた友人たち(何かあったのは気付いていたけどそっとしておいてくれたらしい)が、ついにキレて洗いざらい吐かされ。んでもって、話を聞いてさらにブチ切れた彼女らに徹底的に女を磨かれ…あら不思議。ちょいエロ清楚系女子の出来上がり。というわけ。
こうまとめると一瞬だけど、その道のりは長く厳しく…。
デパートの化粧品売り場ではお姉さま方に厳しくダメ出しされ。(おかげで今は抵抗なく売り場に入れる)
「今まで自分でカットしてたの?」と美容室で「こいつありえねー」的な視線をもらい。(今はツヤツヤさらさら!)
友人たちにはファッションビルの上から下まで回り、服や靴、さらには小物まで選ばれ。(若干着せ替え人形みたいだと思った…)
なぜかウォーキングレッスンやエステを体験させられ。(完璧友人の付き添い)
これらを友人たちの合格が出るまで続けたら、さすがの私も変わる。ていうかこれで前と同じだったらおかしい。泣く。
そんなこんなでイメチェンに成功したところ、なぜか異性から好意を寄せられるようになり、今までの本漬けの半引きこもり生活からこれぞ女子大生という毎日に変わってしまったわけだ。もちろん大学に行っているわけだから、勉強はしっかりやる。でもそれ以外は友人と遊んだりだとか、時々合コンなんてものにも参加し、以前には考えられなかった開けた(?)学生生活を送っている。
ただ、異性との交流があるといっても、あれのせいで不信感が植え付けられたのか、誰ともそういう関係にはなれなかった。だいたい、今まで見向きもしなかったくせに、外見が変わっただけで寄ってくるのが信用できない。というようなことを友人に言ったら、「無理に彼氏つくらなくてもいいんじゃない?私たちは涼子に自信持ってほしかっただけだから」と…。思わず「心の友よ~!」と抱きついてしまったのは悪くないと思う。
そうそう彼ね。あの馬鹿野郎。
着信拒否したから連絡はなかったけど、なんとあの翌日大学の正門の前にいたのを見たときは幻覚かと思った。もちろん他の門から帰ったけど。それからも時々大学にいるのを見たから、どうやら私を探しているのは間違いないようだった。自宅の最寄り駅(つまり彼の学校の最寄り駅)でも何回かニアミスしたけど、全部回避してやったぜ!!それに2月には大学も春休みに入ったから、全く見かけることもなくなり、清々しいことこの上ない。もういい加減私もあれから解放されたい。
なのになんで…なんでこんな展開に!!
「哲哉が全面的に悪いのはわかっています。でも、話だけでも聞いてやってくれませんか…?」
目の前にいる彼は相田駿、あれの幼馴染らしい。
学年が上がり、新しい授業にも慣れてきた4月のある日、駅で突然話しかけられた。そのまま有無を言わさずカフェに連れ込まれ、なぜか向かい合ってコーヒーを飲んでいたという…。そして彼の話を聞いているわけなんだけど。
「哲哉とはずっと同じ学校で、部活も一緒なんです。それで、夏休みに入ってから、あいつがあなたのこと気にしてて…なのに何も動こうとしないから。だから罰ゲームっていう形にすれば少しは進展できると思ったんです。…すみません、僕たちのせいであなたには不快な思いをさせましたよね。どうしてあなたが罰ゲームのこと知ったのかわかりませんが、哲哉は本当にあなたのことが好きなんです。傷つけるつもりもなかったんです。お願いします、もう一度哲哉と話をして頂けませんか?」
えーっと。突っ込みどころ満載なんですけど。
「とりあえず罰ゲームのことはわかった。でも私のこと好きっていうのは間違いでしょう?だって本命の彼女がいるんだから。」
そうそう。あの可愛い後輩と付き合ってるんじゃないの?
「いや、本命の彼女はあなたのことでしょう?だってあいつ、未練たらたらですよ。昨日も僕の部屋であなたの名前呼びながら泣いてるくらいですから。いい加減うざくて。」
おい、今の最後に本音出たぞ。
「そう言われても…。でも私はあれと女の子がキスしてるの見たんだよ?だからその子が本命だと思ったんだけど…。」
「は?…キス?あいつが?…女が無理矢理してたんじゃないんですか?」
あれ?もしかしてこれは聞いてなかったのかしら。
「そう、キス。可愛い女の子と。…無理矢理じゃないよ、だってあれが自分から屈んでしてたんだもん。」
そうそう。だから本命だと思ったんだけど…。
なんか目の前の彼の笑顔が怖い…。怒ってる?怒ってますよね!
「すみません、僕もそれについては知らなかったので。重ね重ね申し訳ありませんでした。とりあえずあいつを締めあげ…失礼、問いただしておきますね。十分反省させましたら、あなたに謝罪させますので。…よろしいですか?」
その微笑が恐ろしくて、つい反射的に頷いてしまった…。
私の方が年上なのに…。