旅立ちの日 夕方 その三
「はい、とりあえず現状の確認をします」
パンパン、と手を鳴らし師が言う。
「十年前に、教団によって両親を亡くした竜牙君。当時六歳、幼心に教団への復讐を誓いこの島国『倭』に漂着ここに住む龍「大主 黄牙」に保護される」
「それから、三年後に僕に弟子入りし修行とイジメと悪戯を受ける。そして現在、元服を済ませたものの、母親の泪が定着しなかった。ここまではいいね」
「あぁ、翁の言うことには、水は陰だから女心を知ればいいのでは。と言われた」
そう言うと、狼牙は合点がいったようだ。
「それで僕のところに挨拶ついでに聞きにきた」
「その通りだ。それで、知っているのか?」
「心当たりはある」
「教えてもらえないだろうか?」
「構わないけど、条件がある」
師が真剣な表情をして言う。
「この旅には、狼牙君と麟ちゃんを連れて行きなさい」
「どうしてだ」
「僕としても、教団は邪魔だからね。訳有って僕は動けないから、彼らに頼む事にしたんだ」
「俺に着いていかせる必要は、無いだろう。他人の面倒までは見れん」
危険な旅になる事は確実だ。
「大丈夫さ、彼らは僕のお墨付き。戦力としても充分だし、悪い話してじゃ無いでしょ」
そう言って、師が笑いかけてくる。
「この条件が飲めないのなら、教える事はできない」
詰みの一言。
「分かりました、二人を連れていきます」
師は頷き。
「結構、それじゃ竜牙君、出雲に行きなさい。そこに居る、天照大神と言う神が助けになってくれるだろう」
と教えてくれた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。二人の用意も出来てるから、着替えたら行きなさい」
三人とも仲良くね。と言って師は客間から出て行った。
「多少、不満もあるでしょうがよろしくお願いいたします」
「いたします」
「いや、こちらこそ世話になる」