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竜の詩  作者: lyuvan
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旅立ちの日 昼

元服、一人前の存在になった事を祝う儀式。

そして、龍や竜にとっては、泪を受け継ぐ儀式でもある。

通常ならば、両親から祝詞を受ける事で一人前として認められ泪を飲み込む事で終了するのだが。


「やはり、駄目だったか」

黄色の鱗をした龍人の翁が呟いた。

「育ての親なんぞでは無く、泪自体に認められなければならぬようじゃ」

翁はふぅ、と溜息をつき俺に告げた。

「母さんは、俺を認めてはくれないのだな」

少し俯き呟いた俺に翁は言う。

「当たり前じゃ、復讐なんぞに囚われおって。そんなことだから何時までも、邪炎しか吐けんのじゃ」

分かってはいる。復讐を母が喜ばないことも、父のような完全な炎が吐けないことも。

悔しくて歯を食いしばる。

「分かってはいるようじゃな」

「あぁ、分かっているとも」

翁の目を射抜くように睨む。

分かっていても、諦めることは出来ない。

そんな決意を伝えるために。

「……しょうがあるまい、好きにすればよかろう。儂はもう知らん」

そう言って、翁は背を向けた。

「いままで、世話になった」

その背に礼を言い、立ち去ろうとした。

「そういえば、主の母は水龍であったな」

足を止める。

「陽である男が陰である水を呑むには、女心を知るのが近道かもしれぬな」

翁の独白が終わった。

「恩にきる」

今度は、立ち止まることもなく歩いた。


残された翁は一人愚痴をこぼす。

「小僧が、己のことを二の次にしおってからに。」

「頼むからこの翁より先に死ぬなよ」


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