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竜の詩  作者: lyuvan
24/30

一週間の道のり 最終日 朝

大変、このシリアス、息してない。



森を抜けると、其処は神の村だった。

立ち並ぶ巨大な建物、その中央には赤い塔。

「何なのだ、これは! どうすればいいのだ!?」

「どうしたの」

麟の問いかけに正気に戻る。

「イヤ、ナゼカ、イワナイト、ナラヌ、キガシテナ」

頭の中に赤い竜と騎士の姿が浮かんだような気がした。

「キニスルナ」

「そう」

麟は納得して村を見ている。

俺もこの事は考えないようにしよう。

村の近くまで飛び、少し開けた所に降りる。

そこで変化して、竜人に戻る。

「さて、出雲は目の前なんだが……」

言葉を途切り身構える。

「どうしたの」

麟が問いかけてくる。

「何かが近づいてきている」

その応えに、麟も身構えた。

辺りを警戒する。

村の方から、物音が聞こえる。

その音は段々と近づいてきている。

来るか。

一体、何が来るのか。

集中していると。

「ワァ!!」

「ヒャ!!」

後ろから耳元で叫ばれ、思わず飛び上がる。

こんな事をする奴は一人しかいない。

「何をなさるのです!しよ……って、お前は誰だ?」

師匠と思ったら、違う人だった。

「ヘロォー、君が竜牙君?あっ、別に答えなくていいよぉ。麟ちゃんいるから間違いなさそうだし」

一息でそいつはこれだけの事を言い、辺りを見回す。

「あ~、やっぱウルフ君いないなぁ。

となると、バッドエンドフラグ建っちゃった? 」

一体こいつは何なのだろうか?

今も訳の分からない言葉を矢継ぎ早に言い続けている。

「いい加減にしろ、さっきから訳の分からん事をペラペラと喋りおって。 何様のつもりだ」

ジロリと睨むがこいつは気にも止めずに言い放つ。

「何様って、神様に決まってんじゃん」

お前、何言ってんの?と言わんばかりの視線で俺を見てくる。

「まぁ、良いや。ようこそ、出雲へ。

君の事はロキ氏から聞いてるよ」

乾いた拍手を打ちながら、こいつは言った。

「君は、天照大神に会いに来たんだよね。 一応、この村の中央にある塔の展望台に居るから行って来たら。

麟ちゃんは、僕に任せて良いよ」

さっさと行けと、手まで振りおる。

それを見て、堪忍袋の緒が切れた。

「貴様、本当に何様のつもり何だ!」

「えぇ~、逆ギレェ。無いわぁ、それ人に物聞く態度じゃ無いわぁ」

ひょうきんなこいつの態度に嫌気がさし、掴みかかろうとするが。

「ダメ」

麟が俺を羽交い締めにした。

「離すんだ麟、こいつは一発……いや、死ぬまで殴らなければならん!」

「ワァオ、何と言う時間の無駄遣い。

僕、死なないからその作業終わらないよ。

それと、好い加減にしないと時間無くなっちゃうよ」

「好い加減にするのは、貴様の方だろうが!」

怒鳴りつけてやると、ワザとらしく震えて「怖ァ~い」とぬかしやがる。

「殴る、絶対殴る」

麟の拘束から抜けようと足掻く。

そんな俺にこいつは言う。

「僕が狼牙君を戻す方法を知っていても」

俺は足掻くのを辞めた。

その場に動く者はいなくなり、一陣の風が吹き抜けた。

「ちょっとした事なんだ。

僕達が神様で彼は人間だった。

それだけで、彼は心の隅に孤独を感じていた。

どれ程、愛されても。

何か違う物を求めていた。

一度、僕達と同じ存在にする計画もあったんだけど。

彼自身がちょっとした奇跡と偶然で無しにした」

こいつは一息吐く。

「今回の騒動、その原因はこの月の石だ」

掌から月の石を作りだした。

「君の持っているそれは、ロキ叔父の作った贋作だ。

僕の物より、機能が変わっている。

原因は、僕の月の石にある機能。

僕の教義にある同性愛の禁止を行う装置……性転換の執行だ」

手を置いた頭を横に振る。

「始めはたんなる、イタズラ機能、お茶目装置のつもりだったんだ。

日の目なんて見る訳ないと思ってた。

なのに、まさかあのウルフ君が使うだなんて!

うぅ、一体君はウルフ君に何をしたんだ?

まさか、襲ったんじゃないだろうな?」

「俺に男色の気は無い」

えぇい、怪訝な顔で見るんじゃない。

「どうせ後で祭りだからな、覚悟しとけよ。

兎も角、狼牙を治す道具も一応あるのだが……」

そこで、言い淀む。

「じれったい、早く言え」

「お前、後で出雲タワーに串刺してやる。

それと、道具なんだが……コレ任意作動なんだ」

その一言で空気が凍りついた。

任意作動、つまり狼牙自身にそれを使うか使わないかを決める権限がある。

「いやぁ~、まさかここまで相性が良いとは……。

まぁ、一番月の石との相性も良かったしあり得なくは無いか。

ハッハッハッ、予想ガイです。何てな……本当にどうしよう」

頭を抱えてしゃがみ込んでいるそいつに言う。

「打つ手は?」

「君が祭りで生き残れないくらい無いよ」

「祭りの内容は」

「君を殺すRPG」

良く分からないが、限りなく低いことだけは確かなようだ。

「参加者は、建御名方神にインドラにエンキドゥ等の戦神や破壊神を始めとし、モリガンやカーリー、セクメト等の女傑系となっております。

コメントを読んでみましょう。

ヨクモ、イトシゴヲ!!

うっわ、全部これかよ。

ハイ、名簿」

分厚い紙の束を渡される。

随分な重さだ。

「……愛されてるじゃないか」

この重さは彼らの愛と同じなのだろう。

「君の処刑人ばかりだけどね」

「それを言うな」

一言欄には全て、禍々しい文字で同じ事が書いてある。

本当にこんな事になったのを許せないのだろう。

「何だか、娘を嫁に出す気分になったとさ」

にへらっと笑って言われる。

それだけで何だか、憎めない奴だ。

「そうか、なら挨拶に行かないとな」

二人に背を向ける。

そこに面白がるような声が聞こえた。

「何て言うんだい」

「もちろん、娘さんを俺にください。てな」

そう言って俺は歩きだす。

神の村、そこで俺はどんな目に会うのだろか。








竜牙が見えなくなったころ、麟が呟く。

「まだ、プロポーズしてない」

「ありゃ、外堀からになっちまったか」

台無しである。

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