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竜の詩  作者: lyuvan
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一週間の道のり 六日目 朝

グロ注意?

まだ、甘いよね



歩き続けていると、森全体に湿り気を帯びた空気が充満していく。

いつしか、それは空気を霞ませていき霧となっていく。

「もう朝か……」

黒服は結局、現れなかった。

あの言葉を信じるとしたら今日、何時とも分からぬが、襲って来るのだろう。

霧は、段々と濃くなっていく。

黒服も俺を見ることは叶わないだろうが、槍で位置を知るくらいは出来るだろう。

こちらと違い、あちらは槍を熟知しているだろうから。

霧の中、警戒を強くして慎重に歩く。

相変わらず時間は分からない。

それは、ゆっくりと不安を育ててゆく。

木の影に人影を見る。

霧の中に人影を見る。

一人が二人に、二人が三人に。

増えていく。

見間違いなのだろうか?

気付けば周りから視線を感じる。

監視されている。

草を踏む音に振り向く。

鳥の羽ばたきに転がり。

虫の羽音に殴りつける。

見えない敵の幻像に苛立ち、神経は研ぎ澄まされていく。

殺意は収束し、ひたすらに鋭さを増す。

何時しか、懐から槍を取り出していた。

しかし、いつもとは様子が違う。

黒い炎は鋭く尖り穂先を形どった。

柄も無地ではなく、禍々しい意匠となった。

今なら奴が大陸の端にいようと当てられる気がした。

「行け!」

上方に勢いよく投擲する。

槍は、霧を裂き、森に穴を空けて、空へと飛んでいく。

一日振りに日の光を浴びる。

酷く久しぶりな気がした。







「派手過ぎです」

「えっ」

サクリッ、と軽い音。

同時に腹部に走る痛み。

見ると槍で貫かれていた。

槍を持っているのは黒服。

そして、やっと理解した。

あぁ、刺されたのだと。

「焦りからの衝動的な行動、下策以外のなにものでもありませんねッ」

「ガアッ」

ズッ、という音と共に槍は引き抜かれる。

穂先の黒い炎が傷口を焼いていったのだろう。肉の焼ける臭いがする。

傷の治りは相当遅くなりそうだ。

痛みに倒れそうになるが、なんとか耐える。

「あら、まだ倒れませんか」

黒服は驚きと楽しさが混ざった声でいう。

歯を食い縛り、痛みを押し殺し。薙刀を作り、構える。

「イイわぁ、健気に頑張る子。妾は好きよ」

黒服は目を細め、くぐもった笑い声をあげる。

俺は、踏み込み薙刀の刃を上にして逆袈裟に振る。

しかし、槍の柄で防がれてしまう。

「不意打ちだなんて、いけない子」

黒服の笑みが深くなった気がする。

振り抜こうと力を入れるが槍はビクともしない。

こいつ本当に毛無しか?

負傷してるとはいえ、竜人の攻撃を受け流すこともなく平然と防ぐ。

いよいよもって、こいつの得体がしれなくなり恐ろしくなる。

「怯えてるの?可哀想ねぇ、温めてあげましょうか」

黒服は槍に力を入れる。

それだけで力の均衡はいとも簡単に崩れ、薙刀が弾かれた。

「なっ!」

それに驚いていると、傷口を蹴り飛ばされ地面に転がる。

「アグッ」

痛みに悶え、もがき苦しむ。

黒服はそこに近づいてきて、傷口を強く爪先で踏みつけた。

「ギャアア!」

獣じみた悲鳴を情けなくも上げてしまう。

爪先をグリグリと回し、傷口を抉る。

ニチャニチャと粘着質な音が耳に入る度に走る激痛。

「ーーッ!」

声に鳴らない悲鳴、口を陸に上げられた魚の様に開閉して喘ぐ。

黒服はそれを見て口の布をズラす。

そこには、赤らみ緩んだ頬とぷっくりと膨れた紅い唇が隠されていた。

黒服はゆっくりと膝立ちになり、傷口に爪先の代わりに指を突っ込み。馬乗りになる。

始めは人差し指を傷口の奥まで刺し淵をなぞる。

痺れるような痛みが走る度に歯を食い縛る。

次に、人差し指の腹と中指の爪の背で淵をなぞり、偶に肉を穿る。

痛みの種類が増える。

偶に走る激痛に叫びそうになる。

そして今度は、一気に拳を傷口に入れた。

「ーーッ!」

今まで以上の激痛に舌を突き出してしまう。

そう、舌を出してしまったのだ。

黒服のもう一つの手が舌を掴み引っ張る。

「アガッ、ゲッ、ゲッ」

傷口の中で拳が開閉される。

「エッ!エッ!エッ!」

悲鳴を上げたいが舌を掴み出されているので、喘ぐばかり。

黒服の顔は愉悦に満ちていた。

黒服はおもむろに、俺の舌を口に含み、噛みちぎった。

「ギャアアアアアアア! ムグッ」

叫ぶと顎を抑えられて、口を閉ざされた。

黒服は傷口から拳を引き抜いた。

もがいて拘束から抜けようとしたが叶わなかった。

血濡れた手が視界に入った。

その血を黒服は恍惚とした表情で念入りに舐め取る。

そして、唾液に濡れたその手が顔に近づいてくる。

不幸にもその手が行うことに気づいてしまった。

「ムー!ムー!」

抵抗は虚しく、ゆっくりと近づいてくる。

肌色が視界一杯に広がり……。

ヌチャ。

プチュ。

グジュ。

ズルッ。

目玉を抉った。

「ムーーーーー!?」

視神経は伸び、目玉は未だに映像を脳に送る。

高価な宝石を見るようにうっとりとした表情で目玉を見つめる黒服の顔が映る。

目玉を目で堪能した黒服は今度は、目玉を舌で堪能するために。

目玉を口に含んだ。

目玉が転がり濡れる感触を味わう二人。

存分に楽しんだ黒服はとうとう、目玉を噛み潰した。

瞳の方から中の液体が零れ出て目玉が萎む。

この時ばかりは竜の頑丈さが憎くなった。

意識を無くして痛みから逃れることも出来ないのであるから。

戦意は喪失し、痛みからの解放を望み始めたその時。

それはやって来た。

「カヒュ」

黒服が突然仰け反った。

その腹からは槍が生えていた。

「今、更、か、よ」

黒服は黒い炎に包まれ焼かれていく。

声すら上げることなく黒服は灰となった。

そして、その灰も一迅の風に運ばれて消えてしまった。

「終わったのか?」

残った片目に太陽の光が入る。

それを見ると酷く安心して。

そのまま意識を失った。

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