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竜の詩  作者: lyuvan
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一週間の道のり 四日目




昨日の日暮れに着いた村、ここが、出雲までにある最後の村であり後は未整備の道を行く。

そのため、今日一日、買い物を済ませたら各々自由に過ごすことを提案した。

「……という訳で、今から自由行動だ。

この部屋で休むも良し、買い物に行くも良し、夜まで好きにするといい」

きっと、二人は村に出かけると踏んでの提案だった。

そして、俺はその間に後回しにしていた訓練を一人でしようと思っていたのだが……。

「竜牙さん」

狼牙が少し機嫌が悪そうに言う。

「何だ?」

「……出来るんですか?」

カラダが硬直した。

暴露ている、間違いなく。俺の考えは暴露ている。

「……」

黒い瞳がジッとこちらを見つめてくる。

それに耐えられず顔を逸らす。

「妾に頼ってはくださらないのですね……」

狼牙の悲しげな声が耳に入る。

いや、何故そんなに悲しげな声で言う。

「俺なんぞに構わなくて済むし、麟の相手も出来るのだから。清々すると思ったのだが?」

「だとしても、妾が貴方を反故にすると思ったのですか?」

見てみると、狼牙が訴える様な目でこちらを見つめている。

その瞳が、怒りと悲しみに潤んでいる。

俺は、それを取り除くために口を開いた。

「俺の訓練に付き合わせてもいいのか?」

「もちろんです」

効果はあったようだ。

狼牙の笑顔と答えにより、この問題は解決した。

俺は、問題が解決した事と、彼女を悲しませなかった事にホッとした。

ん?何故、俺が彼女が悲しまなかった事にホッとする。

「どうかなさいましたか?」

「いや、何でも無い」

考えたところで理由はわからない。

とりあえず、これは後回しにすることにした。

「それじゃあ、早速だが訓練を始めてくれないか?」

「えぇ、始めに講義、次に実践という形でかまいませんね?」

「それで頼む」

狼牙は、では始めさせていただきます。と言い講義を始めた。


「月の石、これ自体は無機物になら何にでもなる事ができます。これはよろしいですね」

「あぁ、実際に天幕や武器には利用した事がある」

質問にこたえる。

それに狼牙は頷いて講義をつづける。

「では、応用です。

月の石によって作られた道具……貴方はコレをどのように考えますか?」

不思議な質問だが必要なのだろう、真剣に考える。

「それは……天幕は天幕、武器は武器だ。月の石によって作られた物として見ている」

その答えに首を横に振る。

そして、少し強調して告げた。

「それがいけないのです。

月の石は、どれだけ姿形が変わっても月の石でありつづけます。

そして、月の石は想像する事によって姿を変えているのです」

「つまり、俺は作った道具をその道具として考えている。

そのため、天幕の幕は幕でしかなく、骨組みは骨組みでしかない。

何故なら、俺がそう認識しているから」

合点がいった。

狼牙は、大きく頷き顔を綻ばせる。

「そのとおりです。

その様子ですと答えもわかりましたね。

早速、試してみましょう」

「そうしてみる」

俺は、懐から月の石を取り出して小さな刀に変化させる。

そして、刀を月の石であると考えながら。もう一つの刀が持ち手から分離するように出てくる事を想像する。

持ち手からゆっくりと、もう一つの持ち手が生えてくる。

ソレを掴み、引きずり出すと……。

「上手くいったな」

両手に同じ刀が握られた。

「初めてにしては、上出来ですね」

狼牙に誉められた。

何となく、気恥ずかしいが悪くはない。

「ありがとう、君のおかげだ」

「いいえ、それほどでもありません」

謙遜する彼女の顔には、笑みが浮かんでいる。

「思っていたよりも、早く終わりましたね。これからどうしますか?」

彼女は表情を戻し、提案する。

それを少し残念に思う自分に驚いたが。

気どられない様に振る舞う。

「好きなようにするといい。

俺はもう少しここで、訓練をしている」

「そうですか。

では、妾と麟は村を見てきます」

彼女が立ち上がると麟もそれにつられて立ち上がる。

「気をつけて、行ってこい」

「もちろん。お土産を買ってきますから楽しみに」

そう言って二人は座敷から出て行った。

「さて、必要なのは速さと量か?

いや違う、まずは月の石に限界が無い事を認識する事だな」

そして、夜に帰ってきた二人が見たのは座敷を埋め尽くす無数の物品とそれに埋れている俺の姿だった。



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