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竜の詩  作者: lyuvan
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一週間の道のり 二日目 夜


「やってしまいました」

つい、保育園の子供達を思い出して。

あやすまでは問題無いんです。

問題なのは……。

「おやすみのキスって、あぁもう、何してるんですか私‼」

寝ている二人を起こさないように静かにされど激しく自分を叱咤する。

「うぅ、外に出て頭を冷やしましょう、そうしましょう」

宿屋を出る、空には満天の星そして……。

「満月」

村を歩きながら思い出すのは月の石、元々は向こうの神(知人)の作り上げた物。

その能力は、魔法の行使と無機物の生成、それから召喚用の媒体に筋力の増加そして、

「性転換能力」

神曰く、俺のモットーは産めよ育てよ同性愛はナンセンスだ!

な宗教の神様。

同性による性的な干渉があった場合、強制的に性転換する。

「キスってそれにあたりますか?宣教士さん」

「何のことやらさっぱり」

背後の路地から宣教士が現れた。

「同性愛ってどの程度からその判定がくだるのかを教えていただけませんか?」

「異形のまぐわい等全て悪よ‼」

宣教士は重厚な声で叫ぶ。

「善し悪しを聞いてる訳じゃないのですが」

はぁ、と肩を竦めて溜息を吐く。

「まぁ、それは置いておきましょう」

一息置いて。

「こんな夜分に何の用です」

咎める様に言う。

「知れたこと、貴様に天罰を下しに来たのだ!」

宣教士は、叫ぶ。

「天罰は、主とやらが下すものでしょうに」

「黙れ! 貴様の相手はこの土くれよ」

宣教士が指を鳴らすと……地鳴りと共に地面から五体の2m程のゴーレムが現れた。

「それだけですか?」

「ハッ、貴様なんぞには過ぎた敵よ」

「試してみます?」

「試すまでも無いわ! やれ、ゴーレム共」

迫るゴーレム、その速さは人の走りと同じ程度しかない。

「ゴーレムを倒すには、カバラ式の場合、shemと呼ばれる神の名をかたどった文字の書かれた羊皮紙を引き抜けばいい」

「ユダヤ式の場合は、ヘブライ語で真理を表すemethからeを取り死を表すmethにすればいい」

独白をしながらゴーレムの攻撃を避ける。

「そして、二つに共通する点としては……ハァッ」

一体のゴーレムの頭を掌底で穿ち中の羊皮紙を握る。

「どちらも、頭に羊皮紙がある」

取り出した羊皮紙を見るとemethと書いてある。

「やはり、ユダヤ式ですか……。

この世界にもユダヤ教はあるようですね、安心しました。あなた方の源流が同じであることに」

eを千切り羊皮紙を捨てる。

襲いくるゴーレム、をカウンターで穿ち羊皮紙を握りeを千切る。

瞬く間にゴーレムはいなくなっていった。

「まだやりますか?」

呆然とする宣教士に話かける。

「当たり前だ! 苦節五年をかけて作り上げた秘密兵器……ジャンボゴーレムがまだ残っている‼ 出でよ! 」

パチンッ、と指を鳴らす。

「……」

「……」

「……来ませんね」

きまりが悪いのか、顔を赤くする宣教士。

「村の外に出ましょうか?」

「ハイ……」

沈んだ宣教士を連行して村の外に出る。

「この道を進めば港の村に着きます。

あなたにも家族がいるでしょう……命までは取りません国に帰りなさい」

そう言って、宣教士を送り出そうとしたら突然、地震が起きた。

「まさか」

「フハハハハ‼ そのまさかよ。

今の地震は、俺様のゴーレムが港の村にある教会の地下からこちらに向かってくる音よ」

見事な悪役っぷりのセリフ。

しかし、

「そんな、地面にへばりついた状態で言われても……滑稽なだけですよ」

「黙れ! 」

今頃、教会は倒壊しているだろう、他ならぬ宣教士の巨大ゴーレムによって。

「莫迦も極まると厄介ですね」

「莫迦と言うな! そして、何故貴様はこの揺れの中立っていられる‼ 」

その質問に私は、笑顔で答える。

「なんせ、私は天使ですから」

「は?」

呆然とする宣教士を放っておき、私は月の石を飲み込む。

オリジナルの月の石は、竜牙の持つロキさん印のレプリカと違い泪と同じ使い方ができる。

端的に言うと、力を大幅に上げることができるのだ。

光が辺りを包みこむ。

空戦用の翼を想像すると背中から生える感触がある。

光が収まると、白い翼を背中から生やした白い雌の狼人がそこに現れた。

ん?

『雌の狼人』

疑問符を浮かべていると、空から紙が降ってきて顔に被さった。

「何ですコレ」

見てみると、こう書いてある。

『ウルフ君改めウルフちゃんへ

久しぶりです。

この手紙は君が性転換した知らせが届いたので至急作成しました。

アウトラインの設定はB以降でした。

あっ、Bじゃ分からない。

正解は、キスの時点でアウトです。

手を繋ぐまではセーフでした。

そして、嬉しいお知らせです。

今回も例にならって賭け事の対象になってました。参加者は現在全員、出雲に居ます。

結果は……俺の一人勝ちです。

大勝の分け前として月の石に組み込めるパーツを天照のお姉さんに作って貰ったので、受け取りに行ってください。

追伸、その相手とお幸せに

by園長(神)』

読み終えた途端に破いて捨てた。

「今は、ゴーレムを潰すのが先ですよね。フフフ、フハハハハハ」

ゴーレムにこの怒りをぶつけることが先決です。

「ウォーミングアップ位にはできますよね」

羽ばたき、空に上がる。

港の村の方を見てみると、確かにゴーレムがそこにいた。

「ゴジラ位は、ありますかね」

近づきゴーレムの周りを一周。

ゴーレムは、追うように腕をはらうが……。

「ノロマですね。

そんな早さでは、氷ますよ」

何時もの様に氷魔法を使おうとするが……。

「出てこない、一体どうして?」

まさか

「属性が反転したんですか」

試しに火を使うと簡単に出てきた。

今までどれだけ練習しても出なかった火が。

「なら、焼き尽くすのみ」

足下を焼き水分を無くす、すると泥人形は倒れた。

「土くれは動かないですからねぇ」

ニヤリと笑い、ゆっくりと焼いていく。

「まずは、右腕から」

一気に肩口まで燃やしきり、右腕は焼け落ちた。

「威力は充分、次はじっくりと左腕を」

五本の指先からゆっくりと焼いていき

掌、腕、段々と炎が登っていく。

「木も使えそうですね。

胴体は、木で壊しましょうか」

ダルマになったゴーレムの胴体に触れ、木を使う。

「これは、中々どうして、素晴らしい」

木は、ゴーレムに含まれていた水と養分を全て吸いとり大樹となった。

「羊皮紙も風化したようですし、終わりですね」

さて、宣教士はどうしましょうか?


村に戻ると、宣教士は生き絶えていた。

渾身のゴーレムが破られたと知り自害したのか、それとも……。

「考えても仕方ないでしょうね」

月の石を取り出して元の姿にもどり思考を中断する。

旅は始まったばかり、大陸に行くのも一筋縄では行きそうに無いなと思いながら宿屋に戻る。

今日は少し疲れた。

「毛の色も変わりましたしね」

白に近いグレーの毛の色は、黒に近い灰色に変わって……。


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