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  杜人閑話……藤井教授講義『杜人神刀・神降嘉平』




神降(かみふり)、読んで字の如くですね」



「完成時に神が降りてきたのと同様に、

 持ち主に危機が迫った時、あるいは何かを守ろうとした時。

 そして邪な思いから刃を抜き放ってしまった時に、杜人神が降りてくる」



「千年前は山賊などが珍しくない時代でしたから寺社が襲われる事もあったわけですよ。

 鎌倉前期には剣術を嗜むわけのない巫女さんが杜人神の力を借り見事に山賊を返り討ち」



「野盗崩れの浪人から村を守るため刀を借り受けた農民も、神を降ろして戦っています。

 振れば相手の太刀を斬り、守らば風が矢を逸らす……と幾らか誇張もありそうですが。

 まぁ、彼は後に成り上がる為に刀を使おうとして破滅してしまうんですけど……」



「戦国時代には時の領主に徴収されかかった事もあるんですよ。

 ただ、良い刀は武将のステータスになりますから当然とはいえ、相手が悪かった。

 神威を味方に次の戦で近隣を奪ってやると息を巻き、いざ鞘から引き抜くと

 たちまち空が真っ黒に曇って竜巻が天を衝き、雷が雨の様に降ってくる。

 これはたまらん、と慌てて神社に返却しに行ったなんてエピソードもあります」



「かの徳川家康も刀剣収集を趣味の一つとしていましたが

 神降嘉平はコレクションに並べる事ができなかったんです……何故か分かります?」



「家康は罪人を使って名刀の試し切りを行なっていたりするんですが

 切り役が神降嘉平を鞘から抜く度に崩れ落ちて寝入ってしまうというハプニング。

 誰も試し切り出来ず、しまいには怒った家康自身が刀を握るも同じく眠る始末……」



「まぁ、『天下治まった世に血を流すべきでないと神よりの仰せか』

 なんて取り繕ったという記録がしっかり残されているんですが、

 本人の著に『心底恐ろしかった、すぐ神社へ戻したい』と書かれていたり」



「まさに守る為だけに振るう事が許される刀」



「名刀には切れ味や威力を誇る逸話は沢山ありますが

 斬るべきを選ぶ各逸話が民衆に受け、天下六剣に選ばれたんでしょうね」



「ちなみにですが、催眠効果、これ本当かもしれないそうです」



「や、冗談じゃあないですよ、最近分かったそうなので私も触りしか聞いてませんが

 京大でレーザー当てたら光の反射率が何か変だというので表面を拡大して見ると

 ガラス質の埃に似た物が不思議な規則性を持って並んでいるのが見つかったんですよ。

 どうしてそんな物が形成されたかは謎ですが、

 刀を握り込んだ時に微細な光の反射が全て持ち手側に行くように揃っている」



「昔テレビアニメで光の点滅が問題になったように、光が脳に与える影響は大きいです。

 なので、今後の研究次第でそういった医学分野のニュースに名前が出てもおかしくないですね。

 もしもこれが狙って造られていたら完全にオーパーツと言っていい代物です、堪りません」



「あ~、早く土曜日が来て欲しいものです。

 その辺りについても加島君に詳しく聞きたいなぁ……と失礼」



「そうそう、神降嘉平ですが、現在も御神体として杜人神社に祀られています。

 博物館での展示は今まで全て断っているそうなので滅多な事ではその刃を目にできません。

 私も毎年参拝してお願いしてますが、ことごとく玉砕しております」



「あぁ、そういえば最近のニュースでこの刀の面白いエピソードがまた一つ増えたんですよ。

 7……いや、8年だったかな、前に盗難騒ぎがありまして、そして無事に返ってきた。

 ただ、それも神降嘉平が本当に神秘に富んだ一品だというのが良く分かるものでした」



「その時ですね、中華系外国人グループの空き巣が流行っていまして

 国宝、という響きに犯人達は神降嘉平をターゲットにしたらしいんです」



「神社には鍵らしい鍵はありませんし、犯行も楽。

 実にあっさりと盗み自体は成功してしまいます」



「翌朝、神主さんが盗まれている事に気付き、

 警察に電話したのですが『山犬様が犯人を捕まえてくださった』との返事」



「どういう事だと神主さんが聞いてみると、

 昨晩、なんと犯人達が血塗れで交番に駆け込んできたそうな。

 化け物に襲われた、と言って錯乱状態で」



「見ると人食い鮫にでも咬まれたかと思われる大きすぎる歯形。

 救急車を呼んで待っている間に応急処置を施していると

 交番の外に体高2m近い犬のような獣が、咥えていた物を地面に置き去っていった」



「こうして刀も返ってきたわけですが、交番にはビデオカメラが設置されています。

 もうお分かりでしょう、角度的に足と鼻先しか写ってなかったのですが本当に居たわけです」



「後日、そんな大型犬が野生にいたら危険だという事で

 地元猟友会が総出で山犬を探しましたが見つからなかった。

 じゃあ、あの山犬は何だったのか、本当に杜人綿津見神の使いだったのでは?」



「どうです、今も息づく神秘の香り」



「……と、時間が来てしまいましたね。

 もっと語りたいですが今日はこれまでとします」



「あ~ほんと、土曜日が待ち遠しい」








※色々と悪ふざけが過ぎた感がありますが、ゆるゆると許してください。

天下五剣に割り込ませようとしたら問題でるなぁと六剣にしてみたり。

逸話をいっぱい作ったけど全部書くのが辛いから要約したり。

催眠効果とかでオーパーツっぽくしてみたり。

何故か山犬が出てきたり。


書いていて楽しかったです。

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