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しょうゆ……豊かな食は平和を作る




私が広めたのもあるが、遥かな昔からこの地域では製塩と保存食作りが盛んである。


何せ、魚醤などが渡来人に伝えられる前から此処では既に塩を利用し魚醤や肉醤を作っていた。

ちなみに豆類の栽培もやっていたので醤油もどきもすでにある。


初めの頃は塩をぶちこんで放置といったなんとも言えないものだったが、

今ではそれなりに体系化され、専用の工房を持つ者がでるほどに発展している。



こうした技術を学ぶ為に、中央から職人達が派遣されてきた。



まだまだ食の安定しない時代。

政府高官が栄養失調など笑えない話である。


そんなわけで、仏教を国家規模で広げるのと平行させて

各地域にある『食』に関するあれこれを収集しているそうだ。


なんとも日本人らしいと思う。


日本人が本気になるのは義理を果たす時と食べ物関係だけだ。






もちろん、ただではなくそれなりの要求も中央へ投げた。


調査した他地域の新しい作物や加工製品の情報開示と、

それらの試験的栽培や試作を私の土地で優先して行う事。



……まさか即答でOKを貰えるとは思わなかったが。



私はやるつもりはないが、自分の土地でやらないと利益の独占とかできないだろう。

そういった権限を放棄してこっちに丸投げするとは、本当に呆れた。

代わりに各種技術仕官の育成を頼まれたが。


失敗する可能性もあるが潜在的敵対勢力が裕福になるのを見逃すとか、馬鹿なのか。



と、思ったがそれなりに理由もあるらしい。



国津神が拗ねてしまって土地や人の加護がなくなりかけているようで、

それをカバーする為に法師たちが東奔西走と大変なのだそうな。


そうなるとノウハウのない作物の栽培は土地神の祝福なしでやるのはキツイ。

そこに私が自分から名乗り出たのである。


ついでに道の整備も進んでいるので、もはや叛意は無いだろう考えているのが多数。

昔に雉鳴女が私の評価を正そうと良い噂ばかりをばら撒いていたのが芽を吹いたのか、

『杜人綿津見神は悪には悪、善には善を返す、自らの姿を映す神だ』との評も理由か。


交易なども、民を豊かにするための行動に垣根をつけていなかったから、

そのまま独占に走るといった行動も取らないと判断されたのだ。


中央でも必要だろう人材を預けまでして、全面的に協力をすると。


私はそこまで人(神)が良いわけではないけれど、

ここまで無防備に信頼されると応えないわけにはいかなくなる。




そんなこんなで、現在は北九州と私の土地が技術開発の最前線となっているのだ。

まぁ、北九州は第二次産業(工業)、こっちは第一次産業(農林水産)であるが。


日本はおそらく正史よりも豊かになっていると思う。


まだまだ各豪族間で小競り合いが絶えないものの、概ね平和である。

中央には是非とも頑張って、戦乱の起こらぬよう努めていただきたい。



豊かな国は豊かな食生活から。



ご飯、醤油、焼き魚。

これだけあれば日本人は幸せになれる。


それを安定させるのが今の私の仕事だろう。













……仕事を終え帰宅中、酒蔵の主から声を掛けられた。


芋を使った酒の試作品が出来たようだ。

生前からあまり強くないが、是非とも試飲してと言われれば断れない。



うん、おいしい。

これは名物になるな。





私はNOと言えない日本の神様。

その後もあれこれと飲まされてしまった。













ほどよく気持ちよくなった私と山犬はその日帰らず、

睡眠の必要なぞない身でありながら、とある農家の軒下で爆睡していた。


翌朝、私は鶫鳴女、神主、巫女総出で怒られる事になった。


早朝から迷惑をかけたその農村には、

お詫びの気持ちを込めて豊作祈願を念入りにおこなうこととなる。


※醤……たしか今の醤油だとかの原型になるやつですが、

『大陸伝来説』と、『日本でも同時発生してた説』があるんです。

この日本史では主人公のおかげで『日本でも(ry』の方となったようです。

藤井教授が現代で語ってくれる……はず。


※豊かな食は平和を作る……が争いの種にもなる。

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