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【連載版】聖女様、夫は返していただきます【コミカライズ進行中】  作者: 蟹子


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11.ファビアン・ラングロワ




「はあ〜〜...あったまるう...。あのまま放り出されてたら“正体不明の美男の氷像”としてヴェルドマン領の名所になっちゃうとこだったよ〜〜〜......」


 元聖騎士、ファビアン・ラングロワと名乗った青年は、暖炉の前にしゃがみこんで手のひらを温める。


 パチパチとはぜる火にふにゃりと頬を緩ませて

「はあ〜〜〜〜、暖炉最高〜〜〜〜」

と二度目の息をつく彼は、凛々しい騎士らしさのカケラもない。



「ふふっ、ファビアン様ったら面白い方ですのね」


 ソファにゆったりと掛けたステラが口元を抑えて笑う。隣のセリウスがはあ、とため息をついた。


「こいつは常にこの調子で、放っておくと話が進まん...。ファビアン、そろそろ本題に入らないと暖炉の中へ蹴り込むぞ」


「なんて事言うのさ!そりゃ僕のローストは高貴な味がするだろうけど、田舎者の君の馬鹿舌なんかに捧げてたまるか!ていうかちゃんとした理由があって来たんだから邪険にしないでよね!」


 ぷんぷん、とわざとらしく頬を膨らませてファビアンは振り向く。そのまま背中を「あったか〜い」と呑気に温める彼に、セリウスはますます眉根を寄せた。


「その理由を早く話せと言っている」


 苛立ちを込めた声色は低さを増す。

ファビアンは「せっかちだなあ」と肩をすくめてソファへとようやく座り込んだ。


 そしてふーーーっ...と気を落ち着けるように息を吐くと、深刻な目をしてセリウスを見つめた。


「...これは、言いにくい話なんだけど」


 ファビアンは小さく息を吸うと立ち上がり、セリウスの両肩にそっと手を置く。眺めていたステラがティーカップを静かにソーサーへ戻し、手を置かれたセリウスが息を止めた。



「セリウスどうしよう!!!僕ヴィオレッタに追い出されちゃったあああ〜〜!!!!」



「は?」


 予想外の台詞にセリウスが目を点にした途端、ファビアンは彼の肩を大きく揺さぶる。


「昨日の夜いきなり“出ていって!”って着の身着のまま放り出されてえ!実家にも今更帰ってくるなって言われちゃってえ〜〜〜!!なんでえ!?僕このままじゃ野垂れ死にだよセリウスお願い僕を養ってえ〜〜〜〜!!!」


 彼はセリウスの肩を掴んだまま、がっくんがっくんと前後にゆすって泣き言を叫ぶ。


「おねがいおねがい!もう行くとこ無いんだ聖騎士のよしみで僕をここに置いてよ!皿洗いから魔物討伐まで何でもするからあ〜〜〜!!」


 至近距離で叫ばれ激しく揺さぶられたセリウスは、青筋を立ててガッと胸ぐらを掴み「うっとおしい!!」とファビアンをソファへ放り投げた。


「いきなり来て何かと思えばそんな話か!貴様を養って何の得になる!」


「だってえほんとに君しか頼りが居なくてえ、僕は三男でヴィオレッタに婿入りの身だしい、聖騎士だったから泊めてくれる女の子のアテもないしい、元居た騎士団からは“慰み者の王子様”って笑われてるしい...」


 ソファの上に投げ捨てられたファビアンはわざとらしく目尻を指で拭い、情けない泣き声を出す。


「ていうか聖騎士時代は君が聖女様のお手つきにならないように必死に気を引いて目を逸らしてあげてたしい、僕はそういう健気で自己犠牲の心を持った心優しい男だしい、恩には恩を返すのが騎士道だと思うしい...」


 つらつらウジウジくすんくすん、と恩着せがましい涙ながらの言葉の並びに、セリウスは「うっ...」と気まずそうに声を漏らす。


「君が聖女に反旗を翻すつもりだと知って、他の聖騎士達から邪魔されないように陰で言いくるめてたのも僕だしい...、特に聖女に傾倒してたレオニダスを僕が宥めてなかったら君は斬られる寸前だったしい...」


「ぐっ...」


 ますます恩を着せられたセリウスが目を逸らすと、黙って紅茶を傾けていたステラが「ふっ...!」と肩を震わせた。


「ふふっ...!うふふふ!」


 口元を抑えて震える彼女に、セリウスは「ステラ、」と困ったように呼びかける。

しばらく笑い終えてはあ、と息をついたステラは、上品な笑みを浮かべてセリウスを見上げた。


「旦那様、ファビアン様をしばらく泊めて差し上げたらいかが?大変な恩義があられるのでしょう」


「いやそれは...「よっっっっしゃ!!ありがとうございます奥方様〜〜〜!!!セリウスと違ってなんて心の広くてお優しいお方なんだ〜〜〜!!」


 セリウスが口を開きかけた瞬間、遮るようにソファから立ち上がったファビアンが拳を握る。


「うわーい居場所ゲット〜!これで当分は凍えずに済むぞ〜!あっ、僕の部屋はさっきチラッと見えた広めの客室でいいので!寒がりだからお布団は厚めにお願いします!それと僕も討伐にはもちろん協力するから、お給料については騎士扱いでいいからね!」


 にっこにっこと厚かましい要求を並べる様は、先ほどまでのしおらしさが嘘のよう。

 セリウスがはあ〜〜〜...と目元を押さえてため息をつくと、ファビアンは満面の笑みで手を差し出した。



「じゃ、これからよろしくお願いしますね!“旦那様”とその“奥様”!」



 ...なんとも面白い男が来たものだ。

屋敷を掻き乱す嵐のような客人に、ステラは楽しげに唇を上げた。






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