第十七話 属性
「穴があったら入りたい……」
「大丈夫ですよ、気にしないで」
カナリーが優しく絵里香の背中をさする。
「慰めてくれるカナリーだけが味方だよー」
絵里香がカナリーが座っている方にすすすと近づく。
(私にも魔力があるってなんか凄いなあ。二次元に来たみたい)
そう思うと、ふと疑問が出てくる。
私達にも魔力があるとすれば、魔法だって使えてもおかしくはないだろう。
頭を捻っていると、カナリーが尋ねてくる。
「どうしました?」
「じゃあ、魔力があるのに何でこの世界の人達は魔法が使えないの?」
「魔法を使うのには、属性が必要なんだよ」
ひとしきり笑ったルアンが、解説してくれる。
「属性は全部で十種類。光、闇、火、水、草、風、雷、土、氷、無。この属性の中からどれか一つが、個々の魂に刻まれているんだ。この属性が、創造神が生き物に授けた力ってやつね。で、その属性があると、それに対応した魔法が使えるってわけ」
「じゃあ、ルアン達にも魂に属性が刻まれていると」
「そう。ちょうど良かった。せっかくだし、僕達の属性も教えちゃおうか」
ルアンはニコッとまるでいたずらを仕掛けた子供のように笑う。
「当ててみて?」
「えー、良いけど……。うーん?」
絵里香は困惑する。
当ててみろと言われても、なんせ情報がない。
わかるとしたら、と絵里香はオーカーを見る。
「オーカーは火でしょ?昨日使っていたし」
「あってる」
オーカーが手を開くのと同時に、手のひらの上に小さい火が生まれる。
別に真偽を疑ったわけではないが、絵里香はついつい顔を近づけてしまう。
真っ赤にゆらゆらと燃える火は、紛れもなく本物だった。
「触るなよ」
オーカーが手を握って火を消す。
気づかぬ間に思ったより身を乗り出していた絵里香は、ハッとして背筋を正した。
「じゃあ、僕は?」
期待するルアンの顔を、絵里香はまじまじと眺める。
(光とか、闇って感じはしないし……。体格からして、肉弾戦とか得意そう)
「雷?」
「残念ハズレ。じゃあ、出血大サービスでヒントを教えてあげよう」
ルアンがパチンと指を鳴らすと、机の上に、光が集まってきて、やがて光が消え、こぢんまりとした犬の人形が現れた。
「これがヒント?」
「よくみればわかるよ」
絵里香が人形をつまんで手に置くと、まじまじと観察した。
人形は、茶色一色で、とても精密な作りをしており、色さえ考えなければ、まるで生きているかのようだった。
触ってみると、凹凸がなく、指がすっと表面を滑る。
顔に近づけて匂いをかいでみると、先ほどの森の中を思い出すような自然の香りがした。
「これ、土の匂いがする!ということは、土の属性?」
「大正解!僕の属性は土さ。それ、良くできているでしょ」
再びルアンが指を鳴らすと、犬の人形はどんどん砂になっていき、やがて消えてしまった。
「あっ、消えちゃった」
「ルアンが今度また作ってくれるよ」
絵里香が、名残惜しそうに、人形をつまんでいた指を見つめていると、セレストがそう言って笑いかけてくれる。
「で、私は何だと思う?」
「セレストは自信ある。水でしょ」
「え、正解……」
絵里香があっさりと答えてしまったからか、セレストは心なしかがっかりした表情になる。
「えー、なんでわかったの?」
「勘。なんか、雰囲気的に、水!って感じがした」
自分でも何言っているか良く分からない絵里香の答えに、セレストは苦笑いになる。
「え、それって僕は、雷!って感じがしたってこと……?」
そんな良く分からない答えに、なぜかルアンがショックを受けていた。
「あら、私が最後ですね」
カナリーが楽しそうに言う。
「まぁ、当たらないと思いますけど」
挑発するようにカナリーが笑う。
こう言われると、意地でも当ててみたくなるのが絵里香なのである。
「うーん、草!」
「違います」
「風!」
「残念」
「じゃあ氷!」
「ハズレです」
「花!」
「そんなものありません」
「それなら無!」
「いいえ」
絵里香が思いつくものをどんどん言っていくも、カナリーは全て首を振って否定する。
「ここにいる誰かと同じ属性?」
「誰とも同じではありませんよ」
「えー、後何があるっけ?」
「光と闇ですね」
「その中だと、光?」
その答えにやっとカナリーが頷いた。
「ほとんど消去法でしたが、最後の二択を当てたので、正解にしておきましょう」
そうは言いつつも、カナリーが勝ち誇った笑みを浮かべる。
「全然わからなかった……。というか、ねぇ、カナリー」
「はい、何でしょう」
「他の属性はなんとなくどんな魔法を使いそうかわかるけど、光と闇ってどんな魔法かイマイチ想像できないんだよね。やっぱり、珍しかったりするの?」
「その認識は間違っていないですよ。具体的にどのぐらい珍しいのかと言われると、わかりませんが、とても珍しいのは確かです」
「凄いんだね」
「はい、凄いです」
(自分で言っちゃうんだ)
絵里香はついそう思ってしまう。しかし、自分で言えてしまうということは、本当に相当のことなんだろう。




