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実と文昭 その一

 文昭さんはただ、長く生きる方法を探していた。

 他の人の半分も生きられないことが、生まれながらに決まっている。それがどんな気持ちで、どうやって生と死に向き合ってきたのか、私には想像することさえできない。

 私が文昭さんの研究を手伝い始めたときには、研究のほとんどはすでに終わっていた。

 ノリくんの言うとおり、クローン研究より先に遺伝子を取り除いて性格をつくりかえる研究――長いから、今後は性格実験と呼ぶことにする。私と文昭さんはそう呼称していた――のほうが先にできていた。だから私は、伊東さんの息子さんだという優さんには、会ったことがない。でも話は聞いている。奥の部屋に、資料もある。

 ……文昭さんは、自分の研究のせいで犠牲になっていった人たちのことを、忘れなかった。忘れようともしなかった。記録に書いて、残して、たびたび読み直して……。そのたびに、悲しそうに顔を歪めていた。私はそんな文昭さんを見ているのが、辛かった。だから言ってしまった。

「ねえ、もう、いなくなってしまった人たちのことは、考えないようにしたほうがいいんじゃないの。文昭さんが辛い思いをするだけ……」

 すると、文昭さんは恐ろしい顔をして怒った。後にも先にも、文昭さんが私に対して怒りを顕にしたのは、そのときだけだ。

「何を言っているんだ! 僕のせいで、死んでしまった人たちだぞ。一秒だって忘れていいものか。僕のエゴのせいで殺してしまった人たちなんだ!」

「……でも……人体実験を始めたのも、実行したのも……あなたの意思じゃないでしょう」

 白鷺組からの資金提供の見返りとして、文昭さんはその技術を要求された。とはいえ、話を持ちかけられた段階では、まだ性格実験は未完成。人体実験に踏み切れる段階ではまったくなかった。

 だから文昭さんは、人体実験に踏み切ることに強く反対した。そのリスクの大きさは、文昭さん自身が一番よく理解していたから。

 でも、組はそれを許さなかった。お金を使うからには、早く成果が欲しかった。人体実験を行ったほうが、研究がより早く進むのは組も理解していた。だから、組員から都合のいい人材――脅されて組に入っていたり、身寄りがなかったり、組に従順だったりした人を――被験者として、人体実験に踏み切った。

 文昭さんが予想したほどには犠牲者は出なかったけれど、それでも、少なからぬ犠牲があった。死人も出た。文昭さんはそのことで、ものすごく苦しんでいた。

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