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重苦しい再会

 以前、キタガミさんと来たときにも通された四人がけのテーブルの向かって左奥に、ノリは座っていた。俯いていて、表情は見えない。

「ノリくん、タツくんが来たわよ」

 その言葉に、ノリは初めて僕に気づいたというように顔を上げた。表情は暗いが、落ち着いてはいるようだ。先程母のアパートで対峙したときのような危うさは感じられない。

「……どうも。先程は、ろくに挨拶もできずに申し訳ありません。私、伊東と申します」

 ノリは何も言わない。僕はノリの向かいに座った。僕の隣に伊東さんが座り、その向かいに実さんが座る。

「……タツくん」

 しばしの沈黙のあと、実さんが重苦しく口を開いた。

「……すべて……知ってしまったそうね」

「……はい」

「そう……」

「……ノリの言ったことは……本当なんですか? その、本当のクローンは、僕だ……という」

 僕の向かいのノリが、はん、と鼻を鳴らした。

「まだ信じたくないってか。……諦めが悪いぜ。それが真実なんだよ」

「ちょっと、ノリくん」

 実さんが窘めたが、僕はノリに怒りは感じていなかった。痛々しい、という気持ちが大きかった。ノリもまだ、真実を受け入れられてはいない。むしろ、僕よりもノリのほうが、受け入れられていないのかもしれない。

 だからこそ、自分のコピーたる僕に攻撃的な言葉をぶつけて、自分を納得させようとしている。僕に向けられたノリの言葉は、ノリがノリ自身に向けた言葉なのだ。

「……確かに、クローンは、タツくんのほう。……これまで黙っていて、ごめんなさい」

 実さんが深々と頭を下げる。

「謝罪が欲しいわけではありません。……特に、僕に対しては」

「俺も謝罪なんざいらねえよ。それで、失われた時間が戻るわけでもねえ」

 ノリがぶっきらぼうに言い放つ。それでも実さんは頭を上げず、しばらく固く目を瞑り俯いたままだった。

「……実さん、僕は、本当のことを知りたいんです。……というより、父のことを知りたい。父さんはどうして僕をつくったのか、それから、どうして僕をオリジナルということにしたのか」

「だから」と、苛立ったノリの声。

「聞くまでもないことだろ、そんなの。俺は異常者だった。だからお前をつくり、影武者にすることで、自分の研究を守ろうとした。それだけだろ」

 僕が父について知っていることは多くない。最初は僕も、そんな理由なのかもしれないと思った。しかし、伊東さんに話を聞いてもらって、他の可能性についても考えることができた。冷静に考えるきっかけを与えてくれた伊東さんには、感謝してもしきれない。

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