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それぞれの決意

 僕たちはすぐに高速バスを手配し、福岡へと戻った。 

 途中でノリと会えるかもしれないと僅かな期待もあったのだが、ノリと会えることはなかった。さすがに、公共交通機関の使い方にも慣れたのだろう。

 僕の身を案じてか、伊東さんは宿を取り休んではどうかと言ってくれたが、気が急いてそれどころではなさそうだったので断った。伊東さんも、僕についてきてくれるらしい。正直なところ、一人では心細い気持ちがあったので、助かった。

 キタガミさんとは、僕のほうから決別した。もう、頼ることはできない。しかし結局、今度は別の大人に頼っている。僕は、一人では何もできない。

 無力感に打ちひしがれながら物思いに耽っていると、三時間ほどの帰路などあっという間だった。

 僕は再び、城戸研究所へと戻ってきた。

 時刻は夕方過ぎ。実さんはまだ中にいるのだろうか。研究所には窓がないため、人の気配は分からない。

 研究所の周りをぐるりと周ってみたが、ノリの姿はなかった。

「中に入る方法はあるんですか? インターホンなど、ついてないみたいですが。カードリーダーのようなものはありますが……」

「……いえ、中に入る方法はありません。僕はカードキーを持っていないので。ノリも同じはずだから、研究所の周りで立ち往生しているのではないかと予想していたのですが……」

 当てが外れてしまった。ノリはまだここへ来ていないのだろうか? それとも僕の勘違いで、ノリはここに来るつもりなど最初からなかった?

 どうしたものか。ドアをノックしてみれば、実さんに会えるだろうか? いや、こんな厳重なセキュリティを備えているのだ、中に実さんがいたとしても、ノックした程度で開くとは思えない……。

 もう打つ手はないのか。伊東さんの言うとおり、すぐに追いかけてくれば良かった。

 落胆したその時、ガチャリ、とロックが外れるような音がした。

 驚いてドアを見ると、なんと開いている。そこには女性の影があった。実さんだ。難しい顔をしている。怒っているようにも、悲しんでいるようにも、戸惑っているようにも見えた。

「実……さん」

「……タツくん。隣の人が、ノリくんとキタガミさんが言っていたジャーナリストの人?」

 キタガミさんの名前が出たことも気になるが、それより気になるのはノリのことだ。

「ノリは、やっぱりここに来たんですか」

「ええ。……まだ中にいるわ」

 ノリが、研究所の中に。心臓がどきりと鳴る。

 やはり僕には、まだノリと話さなければならないことがある。それから、亡き父の研究を最もよく知る実さんとも。

 決着をつけるときが来たのだ。

「ここではなんだから、中に入ってちょうだい」

「あの、私も入っていいのでしょうか?」

 実さんは伊東さんをちらりと見る。

「……大丈夫です。優さんのことがありますから、あなたは聞く権利があるでしょう」

 それから実さんは、気持ちを落ち着けるように深く息を吐いた。

「……私も、決別するときが来たのかもしれないわね。この場所と……文昭さんの研究と」

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