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霞む輪郭

「……どんな話をしたんですか?」

「どんな……」

 なんと言えばいいのだろう。僕自身、うまく飲み込めてはいない。とはいえ、聞いた直後よりは衝撃も薄れ、少しは落ち着いてきていた。というより、現実味がなくて、他人事のように感じているだけかもしれないが。

「僕は……どうやら、とんでもない思い違いをしていたようなんです。それこそ、生まれてからずっと」

「……どういうことですか?」

「僕は……つくられた存在でした。クローンだったのは……僕のほうだったんです」

「……えっ」

 伊東さんは目を丸くして、その場に立ち尽くした。気詰まりな沈黙が流れる。僕もなんとなく気まずくなって、目を逸らした。

「そう……だったんですか」

 伊東さんがやっと絞り出した言葉は、たったそれだけだった。

 当然のことだ。何も言うべき言葉など見つからないだろう。張本人の僕だって、どんな言葉をかけてほしいのか分からない。自分が今何を思っているのか、それすらも分からないのだ。

 僕はもう、何も分からなくなってしまった。真相に近づけば近づくほど、僕という存在から遠ざかっていった。そして今やもう、輪郭すら朧げになってしまったのだ。

「……あくまでも、オリジナルはノリです。父の考えたように、ノリには残虐な性質が備わっていたのかもしれない。でも、それも含めて、ノリ……いえ、城戸辰徳という一人の人間じゃないですか。一人の人間から、一部分だけを取り除いたコピーは、欠陥品ではないですか」

 話し始めると、止まらなくなった。話しながら僕はきっと、自分の気持ちを整理しようとしている。話すほうはそれですっきりするが、聞くほうはたまったものではない。でも、伊東さんなら聞いてくれるだろう。いや、伊東さんだからこそ聞いてほしいのだ。オリジナルである優さんと、一部分を取り除いた『欠陥品』と化した優さん、その両方と触れてきた伊東さんだからこそ。

「……城戸さんを……いえ、タツさんを待つ間、私も色々なことを考えざるを得ませんでした。優のこと、それからタツさんと、ノリさんのことも。考えて考えて、考え抜いて……新たな考えが浮かび、それを打ち消してはまた考え、の繰り返しでした。それでも答えは出ませんでした。短い時間だったからというわけではありません。きっと何年、何十年考えても、答えなんか出ないと思います。

 私は実験の結果優を失ったから、実験そのものを憎んでいます。しかし、実験内容そのものを憎んでいるのかというと……どうも、分からないのです」

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