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再び、故郷へ

 翌日、朝一番で僕は会社に電話し、体調が悪いから一週間休ませてくれと頼んだ。

 僕の体調のことは上司も心配してくれていたらしく、その日の休みはすぐOKが出たが、一週間丸々というのはすぐには承服しかねるということだった。無理もない。会社は今、繁忙期だ。中小企業はいつだってギリギリの人員で回っている。僕は、善処します、とだけ答えて、まだ何か言いたそうな上司を遮り電話を切った。今の僕には、どうしてもやらなければならないことがある。会社を辞める羽目になってしまったとしても、仕方あるまい。電話をして休みをもらったことで、僕はかえって吹っ切れていた。もうやるしかない。今考えるのは、ノリのことだけだ。

 僕と伊東さんはバスセンターで待ち合わせ、高速バスで長崎へと向かった。伊東さんの仕事は、わりと時間の融通がきくらしい。

 朝早くから出たので、長崎についたのはまだ昼前だった。

「お腹空きませんか」

 外の空気をたっぷり吸い込んだあと、伊東さんが和やかな表情で言った。周りからは普通の観光客にしか見えないだろう。年齢差的に仲の良い親子に見えるかもしれない。伊東さんがあえてそういうムードをつくってくれているのだ。最初見たときは怖い人かもしれないと思ったが、気配りができてとても優しい人だ。息子を亡くした喪失感が彼を丸くしたのかもしれないと思うと、なんともいえない気持ちになってしまうのだが。

「僕はあまり……」

 朝から何も食べていないので空腹ではあるのだが、食欲がなかった。これからのことを考えるだけで、胃がきりきりと痛むのだ。

「ダメですよ、これから長丁場になるかもしれません。少しでも体力をつけておかないと。特に城戸さん、今にも倒れそうなくらい顔色が悪いので気になります。まともに食事、摂っていますか?」

「恥ずかしながら……パンとか、コンビニのおにぎり一個とか。自炊する気力も外出する気力も起きなくて……」

「気持ちは分かりますが、ノリさんのためにもそのままではダメですよ。せっかく長崎に来たんだから、ちゃんぽんでも食べに行きましょう」

 結局僕は、伊東さんに押し切られる形で町中華に入り、ちゃんぽんを食べた。食欲はなかったが、一度食べ始めると胃が動き始め、空腹の腹が食べ物を求めだした。結局、餃子と炒飯を追加で注文し、ほぼ一人で平らげてしまった。

「よく食べますね」

「すみません。思ったよりお腹が空いていたみたいです」

「いいんですよ。若いっていいですねえ」

 伊東さんの穏やかな表情に、僕は父を思い出した。僕は――ノリも――昔から割合よく食べる子どもで、父が作ってくれた食事を小さな口いっぱいに頬張っていた。そんな僕たちを見て、父は今の伊東さんのような、穏やかで優しい表情をしていた。

 親になると、表情も似るのだろうか。

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