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探偵

「親というのは……歪ですね」

 僕がそう言うと、伊東さんは表情を和らげた。

「親だって人間ですから。どこか歪んでいて当たり前ですよ。歪んでいない人間なんていません」

 僕の歪みは、僕に眠る残虐な遺伝子なのだろうか。それを当たり前だと、僕は受け入れることができるのだろうか。そもそも、受け入れていいものなのだろうか。考えれば考えるほど、分からなくなる。

「……まあ、今はそういう哲学的なことを考えても仕方がありませんね。そのような雰囲気にしたのは私ですが。そろそろ現実的なことを考えましょう」

 それには僕も同意だった。これ以上先の見えない思索を続けていたら、頭がおかしくなりそうだ。

「とはいえ……何をどうすればいいのか」

「実は、見ていただきたいものがあります」

 伊東さんはそう言うと、抱えていたハンドバッグから封筒を取り出した。父の遺書を想起して思わず目を逸らしたが、すぐに視線を戻す。これは父の遺書ではない。

「北神を探る際に、探偵を使ったと言いましたよね。探偵のほとんどは及び腰だったし、危ない依頼はやはり費用もかさむので、調べられたことは大して多くはなかったのですが……暴力団とは直接関係のないノリさんのことについては、依頼を受けてくれました」

 探偵を使っていたとは知らなかった。昨日は結局、互いにまったく連絡は取っていない。遺書のことをすぐに伝えようかと考えなかったわけではないが、まだ役に立つかも分からなかったし、自分の胸に留めておきたいという気持ちもあった。

「危険を感じたらすぐに撤退する、という条件付きではありますが。このあたりの探偵に私は悪い意味で広まってしまっているようですから、これでもだいぶ譲歩してくれたほうなんですよ」

「それで……何か分かったんですか?」

 伊東さんの丁寧な口調が、今はもどかしかった。

「まだ詳しくは調査中です。ノリさんがあなたのクローンであることを説明するわけにはいきませんから、探偵には城戸さんについて探るように伝えてあります。おそらく、城戸さんの周りにも尾行がいたと思うのですが……」

「……まったく気が付きませんでした」

 相手がプロであることと、僕が疲れきっていたことを考えても、今の僕が置かれている状況では不用心としか言いようがない。

「まあ、仕方のないことですよ、相手はプロですからね。簡単に気付かれるほうが困ります。それで、ここ一週間ほどの城戸さん及びノリさんの目撃情報を集めたのですが……どうにも成果は捗々しくないようです」

 仕方のないことだ。僕は友人どころか知人も大して多くない。家を出ないノリならなおさらだ。

「ただ、ひとつだけ情報がありました。バスセンターの職員さんが、ノリさんが行方不明になった日の夜に、城戸さんらしき人を見かけたというのです」

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