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生命

「それで……キタガミさんは、白鷺組に?」

「そうだ」

 話したことで少し落ち着いたのか、キタガミさんの表情には少し穏やかさが戻っている。とはいえ、相変わらず険しい表情であることには変わりないが。

「親っさん――仁三郎が手にした、『最強のカード』。それこそが、お前の親父、文昭のクローン研究だったんだ」

「そんな……父がやくざと関わっていたっていうんですか?」

 僕がそう言うと、キタガミさんは静かに言った。

「そう驚くことでもねえだろ。俺だって――まあ、俺は実際には組員ではなくて、組から雇われている闇医者って立場だが、やくざと繋がりがあることには変わりねえんだ。それに文昭の研究は、法に反するものだったんだぜ」

「それは……そうですが」

「研究にゃあ、資金が必要だ。特に、人のクローンをつくるなんて規模のでかい研究にはな。とはいえ、真っ当なところを頼るわけにはいかねえ。悩んだ挙句、文昭はやくざに自分の技術を売り込むことにしたのさ。なるべくできて日が浅く、よその組に負けねえ商売を探していて、なおかつ金のある組を探していた。それで行き着いたのが白鷺組ってわけだ」

「白鷺組はお金を持っていたんですね」

「まあな。白鷺組の前組長は相当な資産家だったらしい。狡猾な上に血と暴力を好む性格だったためか、自ずと裏の世界に身を落としていったらしいが。……まあ、天職だったのかもな。俺は前の組長には会ったことがねえから、知らねえが」

 クローン研究がお金になるのか。確かに、人のクローンをたくさん生み出すことができたら、無数の鉄砲玉を生み出すことができるだろう。捨て駒はあればあるほどいい、ということなのかもしれない。その他にも、僕には思いつかない使い捨ての人間の使い方はいくらでもあるのだろう。そう思うと、恐ろしくなった。

「それじゃあ……キタガミさんがこうして僕たちの健康診断をして、世話を焼いてくれていたのは、研究結果である僕たちを調べ、守ることがキタガミさんの役割だったからなんですね。その、白鷺組からの」

「……あらかた合ってるが、少し違う」

「違う?」

 キタガミさんは頷いた。

「最初は、医者に戻れるならなんだってやろうと思った。ただ、クローン研究と聞いて、最初は怖気づいたさ」

「それは……法に反するから?」

「今更ブタ箱にぶちこまれることなんざ怖くはねえ。俺が怖かったのは、その研究が生命の神秘に反すると思ったからだ。命を救う者として、絶対にやってはならねえ研究だって。すべての生命への、冒涜だと」

 クローン研究の是非について調べていたときに、散々見た意見だ。けれど、こうして面と向かって言われると、ノリの存在は生命への冒涜だと断言されているようで、胸が痛い。

「でも、まずはそんな研究の責任者と話してみようと思ってな。それが、俺と文昭の出会いだったんだ」

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