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JeiGiIt  作者: Bluena
9/10

第八話 起きろよ



焔豪怒拳(インフェルノ・パグナス)!!!」

聖樹翠斬(ラウルス・ジェイド)!!!」



真正面から剣と拳がぶつかり合った。

ドゴオォォンッッ!!

轟音とともに生じた衝撃で互いに吹き飛ばされた。灰になった地面に叩きつけられる。全身の傷がズキ、ズキズキンと軋む。シュンキはなんとか体勢を立て直そうとするが、血塗れになった身体はまともに言うことを聞きやしない。右手に握っている銃が今にも落ちてしまいそうだった。

しかし、それでも剣士は立っていた。脚は折れ、額は血で赤黒く染まり、腕も千切れそうになっている。それでも剣士は立っていた。

「シュンキ、お前は間違ってる」

低い声が呟いた。激化している戦況に似合わないような、低く落ち着いた声が。

「お前は俺を殺すために強くなったって言ったよな」

「…………」

「俺を殺したくて強くなったんだよな」

「…………そうだ」

()()()()()()んだよな」

「そうだっつってんだろ!!!」


「本当にそうか?」


「……っ?!」

「力を手に入れた理由は本当にそれか?」

「そ、そうだ!!」

「最強になる目的は何だ?」

「それは……!くっ……」

「お前は俺を殺したいのか?」

「だからっ…………!!!ああああぁ……!!」

シュンキが徐々に狼狽え始めた。心の中で何かが暴れている。そんな感覚に蝕まれていく。足に力が入らず膝から崩れる。銃を握ったまま両手で頭を抱えて悶え叫ぶ。そして彼の精神が崩壊しかけた瞬間、


「起きろよ、シュンキ」


真っ直ぐな瞳で言い放った。グンッ、と心臓を鷲掴みにされる。目を見開き呼吸が止まる。しかし不思議と苦しくはなかった。コウヤは決して瞳を逸らさない。相棒だけでなく、その背後にいる何かをも見据えるように。そのまま静かに言葉を繋いだ。

「俺だって『最強になりたい』と思い続けてる。俺だって毎日必死で鍛錬を続けてる。ひたすら剣振って、新しい技練習して、みんなと必死でクエストクリアして。王国で一番強え奴になりたくて、目の前の事一個ずつやってきたんや。

 それにシュンキの事が嫌いになった時もめっちゃあった……それこそ、殺したいくらいにな」

思い返すようにゆっくりと目を閉じる。

「お前は俺に超えられたって言うてたけど、俺は一回もシュンキを超えたとは思ってへん。どんな状況でも対応できるし、戦闘のセンスあるのに誰よりも努力家やし、パーティ全体の事を誰よりも考えてるし。シュンキは間違いなく凄い剣士や」

「ぐっ……うる、さ…………」

「俺はなぁ」

そこで一度言葉を切る。2人きりになった世界に静寂が訪れる。辺りは真っ白、純粋な白だ。穏やかにひとつ深呼吸をして、すっと()を開いた。



「ずっとお前の隣に居たいんだよ」



「…………!!」

「お前の隣に居られたら俺はそれだけで幸せなんや。俺の相棒はお前しかおらん。たとえ闇堕ちしても、お前は俺の……かけがえのない相棒やねん」

「…………」

「やからさ。俺たちのパーティに戻ってきてくれへんか?JeiGiIt(ジェイギット)にはお前の存在が必要やねん。また俺たちと一緒に冒険行ったりしようぜ。

 シュンキ…………お前なら戻って来れる」

「…………もういい」

しばらく黙っていた相棒が、ついに口を開いた。コウヤはじっと表情を伺う。そして、


「これで終わりにしよう」


シュンキが静かに呟いた。ふらつきながらもゆっくりと立ち上がる。そして両腕を広げ、持っていた銃を離した。

「おい……何すんねん……?」

コウヤは拍子抜けしたように、スローモーションで地面に落ちる銃を見つめる。そして、

カシャン

という音とともに顔を上げた。



「じゃあな、コウヤ。——破浄超新星(カタルシス・スーパーノヴァ)



鼓膜を破るような高音とともにシュンキの身体が光り出した。刹那、コウヤが剣を投げ捨てて駆け出す。




「シュンキ!!!!!」




すべての時間が止まりそうになる。足の骨は折れているのに痛くない。

一歩ずつ、一歩ずつ。前に進む。

手を伸ばしてもまだ空を切る。

もう少しや。

もう一歩。

届かへん。

あと何歩で届くんかな。


そもそもここでシュンキまで届いたとして、その後はどうなるんや?


シュンキは助かるんか?

俺は助かるんか?

他のみんなは?

もし助かったら……シュンキは戻ってくるやろうか?


わからん。

そんなんわかるわけない。

ただ今は、走れ。

とにかく走れ。

ずっと届かなかった、あいつの元へ——



「コウヤ、」



ふと顔を上げた時、シュンキと目があった。

哀しそうだった。

苦しそうだった。

だけど、




笑っていた。







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