第五話 焔影灼魂
「三白眼・焔影灼魂」
シュンキの周囲が突然炎がメラメラと燃え盛り、辺りの空気が一気に張り詰めた。吊り上がった目尻、瞳は地獄の焔のように赫く染まり、蛇のごとく鋭い眼光が周囲の万物を捉えて離さない。先程までの人数有利が嘘のように感じる。完全に彼の独壇場と言わんばかりの空気だ。
「俺が習得した精神領域……お前らは絶対に逃げられない」
温度が上がり焼けるような暑さが纏わりつく。放たれる熱気と覇気で立っていられなくなりそうだ。
「くっ……」
それでも彼らは決して武器を離さない。相手に気圧されないよう拳を強く握る。
「さあ、どっからでもかかって来いよ」
挑発するように傷だらけの笑みを浮かべる。一呼吸の躊躇いの後、覚悟を決め一斉に飛びかかった。
「轟滅瀑布!!」
「破迅嵐界!!」
「零極葬刃!!」
「翠閃乱斬!!!」
各々の強攻撃が爆音とともに繰り出される。しかしシュンキは一歩も動かない。標的を目と鼻の先に捉えた次の瞬間、
「烈火輪廻」
地面をガッと強く蹴り跳ぶ。身体が宙に浮いたままぐるりと舞うように一回転した。そして着地した瞬間、
ドドドドドォォォォン!!!
辺り一帯で次々に爆発が起きた。4人が散り散りに吹き飛ばされる。一回転したその瞬間に爆撃弾を乱射していたのだった。技の発動から着地まで、わずか0.3秒の出来事だった。
領域の効果によって増大した爆発により、コウヤとユウトは数百メートル先の岩場まで吹っ飛ばされた。バコン、という鈍い音とともに背中から叩きつけられた。
「っってぇ……おい、大丈夫か……?!」
ユウトは傷だらけの身体が硬い地面に打ち付けられ苦悶している。コウヤは咄嗟に起き上がって彼の傷口に手を当てる。
「なんとか……ぐあっ……」
「ちょっと待ってな、すぐに治したるから」
数秒して手を離すと傷口から漏れていた血が止まっていた。とりあえずほっとした表情で他に大きな怪我がないか診ている。
「コウヤ、そんなヒール使ったらお前の傷が……」
「俺は大丈夫やから。心配すんなって」
「だからって無理すんなよ!お前が死んだら意味ないんだぞ?!」
いくら叫んでも手を離さず、耳を貸そうともしない。ついにユウトがボロボロの腕を掴んで怒鳴った。
「おいコウヤ!!俺達がお前の援護に来た理由、分かってんだろ?!!あいつの手でお前が死ぬのは絶対に許せねえんだよ!!!」
「分かってる!!!!」
さらに上回る声量で振り解いた。
「俺だって……あいつのせいで、お前らが死ぬとこなんて見たくねえよ」
「…………っ」
「ユウトもエイスケもあおやんも、シュンキも、俺にとっては大切な仲間や」
そう言われ手を固く握られたユウトの顔には、複雑な心の内が映し出されていた。コウヤもいったん深呼吸をして興奮を収め、真剣な表情で続けた。
「ユウト、俺の頼みを聞いてくれへん?」
「……何だよ」
「エイスケとあおやんを連れて逃げてほしい」
「は……?」
「これ以上お前らを巻き込みたくないんや。あいつは——シュンキは俺のことを探してる。俺を殺すために来たからな」
「だからそんな事……」
「これは俺とシュンキの闘いなんや。何かわからんまま歪んでもうた因縁に、正々堂々とケリをつけるための。やから頼む。ユウトにしか頼めへんねん」
コウヤは真っ直ぐとユウトを見据えていた。一呼吸ののち、諦めたように笑ってみせた。
「わかった。その代わり……全部終わったらみんなで飯行こう」
「もちろん」
「酒もたくさん飲もう」
「当たり前やろ」
「みんなで朝まで遊び散らかそうぜ」
「分かっとるって!……あ、その時はユウトの奢りな!」
「いやなんでやねん!!みんなで割り勘やろ!」
「はははっ、冗談やって」
ほんのひと時だけ、いつもの会話が流れていた。戦況を忘れたように笑いあう。ひとしきり笑った後、覚悟を決めたようにコウヤが立ち上がった。
「そろそろ俺も見つかりそうかもな」
「……そっか」
「ユウト、頼んだぞ」
「任せろ」
強く、慥かにハイタッチを交わした。そしてユウトは突風とともに姿を消した。




