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JeiGiIt  作者: Bluena
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第二話 再会


 僅かに風が吹く丘の上。黄金色に波打つ草木のざわめきは一切届いていなかった。

「久しぶりだな」

コウヤの返事はない。ただじっと相手を見つめている。

「まさかまだこんな狭っ苦しい村に居るとはな」

「……当たり前や。ここは俺らの——」

「『故郷やからな』、だろ?」

「…………」

「残念だが今の俺に綺麗事は効かない。そんな事で俺が笑うと思ったか?……いや、むしろ嗤えるか」

「……俺は」

言葉を切ってほんの一瞬目を逸らす。そしてもう一度瞳を見つめて言った。


「お前をずっと待ってたんや。シュンキ」


「へーえ、そうか」

帰ってきた言葉は淡白だった。彼はその口調のまま喋り続けた。

「帰りを待たれてたなんて思ってもなかったな。それにしても随分とお気楽なようで」

「お気楽なわけないやろ。ずっと心配してたんやから」

「どうして?」

「あの日——俺が最後にシュンキを見た日、お前の目は明らかに終わってた」

互いの瞳には雰囲気の違う炎が宿っていた。

「俺は確信した。絶対シュンキになんかあったんやなって。その答えを聞けんままお前は俺たちの前から消えた。でも……いつかここに戻ってくるって信じてた。シュンキならきっと、また俺たちの前に現れるって」

今度はシュンキの方が黙り込んだ。絶えず吹き続ける風に髪と木の葉が煩く揺れた。




 ある日、日課にしている剣術の練習をこなした後、ギルドからの連絡を伝えにシュンキの家を尋ねた。いつもの様に扉を叩く。

「シュンキー、伝言預かってきたで〜」

しかし返事はなかった。それどころか家の明かりも付いていなさそうだった。

「あれ?留守か。この時間なら家におると思ったのに……」

不思議そうな表情を浮かべて家を後にした。

問題はその後だった。


村じゅういくら探してもシュンキの姿が見当たらないのだ。武器屋も、道具屋も、酒場も、秘密の稽古場がある裏山も、どこに行っても居ない。隣街に行っていた他のメンバーも彼を見ていないという。

「おかしい……そんなわけない」

そしてついに日暮れを迎えてしまった。


相棒が急に居なくなるなんてあり得ない。もしかして彼の身に何かあったのか。不安が渦巻き、靄を抱えたまま家に帰ろうとしたその時。

村の入口の前に人が立っていた。逆光で影しか見えないが、それが誰かは直ぐに分かった。

「シュンキ!」

駆け寄ってみるとシュンキは大きな鞄をひとつ提げていた。そして腰には愛用の銃を収めている。

「お前どこ行ってたんや。めっちゃ探してたんやで?ギルド長から次のクエスト依頼が来たから、それを伝えに——」

「コウヤ」

不意に名前を呼ばれてふっとシュンキの顔を見る。彼の顔から安堵が消えた。影でよく見えていなかったが、その()に光がないことに気づいた。


「俺はこの村を出ていく」


彼はひどく冷たく言い放った。有無を言わせないほど冷たく。

「は…………?」

「俺はパーティを抜ける。そしてこの村から離れる。それだけだ」

「いやいやいや待てよ。意味がわかん……」

「黙れ」

鋭い声と目つきに思わず怯んだ。いつもの輝く笑顔や溌剌とした言葉はそこにはなかった。ただ在るのは、卒倒しそうになる覇気と蛇のように鋭い眼光だった。コウヤは目を見開いたまま蛙のように立ち竦んでいる。



「じゃあな、コウヤ」



感情の無いままそう言い残して、シュンキは振り返った。そして淡々と日の眠る方へ歩き出す。コウヤは呆然としていた。まともな言葉に成らぬまま手を伸ばした。が、気づいた頃には既に遅かった。

「シュンキ…………」

沈みかけた夕日に消えていく相棒の背中を、ただ見つめる他になかった。




 「なあシュンキ、どうして突然俺の前から消えたん?それと……なんで今戻ってきたんや?」

真っ直ぐに見据えたままコウヤが尋ねる。あの日の記憶を遡って喉元から何かが溢れそうになる。それをぐっと堪えて、飲み込んで、言葉を待った。存在を示さんとばかりに風が吹き抜ける。

そして再び静寂がやってきた頃。

相棒——のはずの彼は、長すぎるほどの間を置いて答えた。



「俺はお前を殺しにきた」



言い終わるが早いかシュンキが銃を構えた。

パァン

そしてなんの躊躇いもなく発砲した。同じ反応速度でコウヤが剣を抜いて跳ね除けた。

「はぁ……?!何すんだよ?!!」

「そのままの意味だ。俺はお前を殺す」

コウヤの混乱も構わず撃ち続ける。銃弾の軌道を読む間も余裕もないがほぼ反射的に躱している。

「ふん、やっぱこれくらいなら余裕ってとこか」

「意味わからん、なんでシュンキが——」

右手で銃を弄んでいたかと思えばまた二、三発撃った。言葉を遮るように弾丸が身体の数ミリ隣を掠めていく。

「まだこんなもんじゃないだろ?」

コウヤはもう答えなかった。その剣身は四方八方から飛んでくる弾を正確に弾き返した。

と、突然シュンキの手が止まった。防御の構えを取ったままコウヤは一度間合いを取る。先程までノイズになっていた微風もいつしか止んでいた。互いがほんの僅かな凪を感じ取った瞬間だった。

傷火燥葬(エリーダ・クリメーション)

シュンキが技を繰り出してきた。発射された銃弾は先ほどとは違い、灼熱の炎を纏って飛び込んでくる。思わぬ攻撃に怯んだ。目と鼻の先に見えたところでギリギリ避けた。あと0.何秒遅れていたら致命傷となっていただろう。

「……お前、本気なんやな」

荒くなった呼吸を強く吐き出して呟く。属性攻撃は通常時に比べて威力が格段に上がる。それを仲間に向けるということは、即ち「裏切り」を意味する。

パチン、とスイッチが入った。



「お前の使命が『俺を殺すこと』なら……俺の使命は『お前を護ること』や」





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