第一話 続く日々
○登場人物
時鳥 コウヤ(ときとり こうや)
草属性・片手剣
スピード系でとにかく負けず嫌い。戦闘では主戦力にも回復要員にもなる。酒には弱い。
JeiGiItを立ち上げた張本人。失踪した相棒のシュンキを待ち続けている。
天乃 シュンキ(あまの しゅんき)
炎属性・片手銃
パワー系でバトルの才能がピカイチ。回復以外は何でもこなすオールラウンダー。コウヤとは幼馴染。
輝く笑顔と爽やかな言動が人気を集めていた。しかしある日突然失踪する。
河堀 ユウト(かわほり ゆうと)
風属性・二丁拳銃
明るくてかなりのフッ軽。バトルではパーティのブレインとして戦略を練る。
コウヤとシュンキが喧嘩した時の仲裁役。
鱶口 エイスケ(ふかぐち えいすけ)
水属性・スリングショット
朗らかで底抜けに優しい。ちょっと抜けてることもある愛されキャラ。
ピンチの時に頼りになる兄貴分的存在。
蒼山 ジア(あおやま じあ)
氷属性・双剣
いつでも冷静沈着。全体を見つつメインアタッカーとして活躍する。
普段は淡々としているが仲間が傷つけられると激怒する。
およそ300世期もの歴史を誇る大国、“テアトルム王国”。その領土の最東端に位置しているのが”起端村”だ。人口が200人に満たないこの地に、ある一人の男が暮らしていた。
「おかわりぃ!!」
夜の酒場に馬鹿でかい声が響き渡った。すぐさまもう一人がジョッキを持ってやってくる。
「コウヤ、さすがに飲み過ぎじゃね?」
「だーいじょうぶやって!まだ4杯目やろ?余裕余裕!」
かなり上機嫌に答えてジョッキを受け取り、グビグビと飲み始めた。運んできた人は半ば心配そうな表情を浮かべている。
「くぅーーーっ、ドラゴン討伐の後に飲む酒はサイコーやな!」
「あんまり飲みすぎると大変だから程々にしとけよ、柄じゃねえし」
「これくらいなら全然平気やって」
「違う!!お前が飲み潰れた時に介抱するのは俺達なんだよ!毎回メンドイことになってるんやからな……」
「ありがとなユウト。本当に感謝しとる」
赤くなった顔面を深々と下げるコウヤに、ユウトは呆れた表情を浮かべた。
「はあ……こりゃ今日もあかんな」
「おーおーおー、もうやべぇじゃん!」
とそこへ同じく顔を赤くしたエイスケと、ジョッキ並々のビールを持った蒼山がやってきた。エイスケはドカッとコウヤの隣に座った。
「エぃスケ〜ぇ!討伐おつかれぃ!」
「おう!コウヤもお疲れ!」
「コウヤお前ほんまに大丈夫か?だいぶやばそうや
ん」
「そんなことないって〜そういうあおやんこそヤバいんちゃうん??」
「いや、俺は全然平気やけど」
「コイツどうせ今日も俺ん家来るんだろうなこの後。頼むから騒がんでほしいけど……」
「ユウトも大変やなー」
そう言いつつもあまり心配はしていなさそうなエイスケ。豪快にハイボールを呷っている。
たわいもない会話とアルコールの不可抗力によって次第に盛り上がる一向。と、そこへさらにもう一人近づいてきた。
「みんなすまん!遅くなった」
人混みの中から颯爽と現れたのはシュンキだった。
「おぉシュンキ!お疲れ!」
「お疲れぃ!ちょっとギルド報告行った帰りに八百屋のおばちゃんに捕まってさー」
「あーあの話長いおばちゃんな」
「なんかめっちゃ機嫌良かったらしくて。いつもより話膨らんで大変だったわ」
「シュンキ、いつもギルドへの報告ありがとな!」
「いいってことよ!」
彼らは起端村出身の戦士パーティ、JeiGiIt。幼少期から同じ訓練所で育った銃士・シュンキと剣士・コウヤを筆頭に、二丁銃士のユウト、スリングショット使いのエイスケ、双剣使いの蒼山の5人からなる。普段はギルドから依頼されたモンスター討伐やダンジョン攻略、レアアイテム採集などをこなしている。仲の良さから生まれる連携コンボによって頭角を表しており、若くして村の内外でも名のあるパーティだ。
そして強めのモンスター討伐や遠征を終えた日には、酒場で打ち上げをするのが彼らのルーティーンだった。今日も巣窟ダンジョンの最深部にいるドラゴンを無事撃破し、その祝杯をあげようとしていたのだった。
そんなこんなでひとしきり喋ったところで、再びコウヤがジョッキを手に取った。
「じゃあ改めて乾杯するかぁ!」
「そうやな、全員集まったし」
「今回の乾杯の音頭は……シュンキ!」
「よっしゃ任せろ!」
各々がグラスを持って彼の方を見る。シュンキはひとつ咳払いをしてから声を張り上げた。
「えーそれでは……今回も討伐お疲れ様でした。いつもより良い連携が取れたしレア素材もゲット出来たし、めっちゃ良かったと思います!それを祝して今日は飲み明かすぞー!乾杯!!」
「「「「かんぱぁーい!!!」」」」
ガチャン、と明快な音が鳴る。そして全員で酒をぐいっと飲む。これぞ至福の時間である。アルコールが心身疲労に染み込み、間違いない幸せがやってきた。5人の顔には弾ける笑みが浮かんでいた。
「いやぁ、今日も酒が美味いなあ」
「せやな〜」
「なんかツマミでも頼むか」
「確かに腹減ったし」
「ちょっ、その前に俺トイレ……」
「あー俺もー!」
「やっぱお前ら酒飲み過ぎやろー?」
蒼山が声を飛ばすのも聞かず、コウヤとエイスケはトイレへと走っていった。
「まったく……あいつらも変わらんなぁ」
「あ、そういやコウヤ、あの技どこで覚えたんやろな?」
「あー今日使ってた新技?確かに、練習してたとこも見てへんし」
「あれめっちゃ強かったよな。敵の動きを読んで斬ってるっていうか」
「そうやな……コウヤもここ半年くらいでめちゃめちゃ強くなったもんな。ああ見えても今じゃこのギルドで一番強え奴なんちゃう?」
ゆっくりと酒を飲みながらユウトと蒼山が語る。彼は酒には弱いがバトルではかなりの主戦力なのだ。
「あいつしかもヒーラーにもなれるんやろ?チートすぎひん??」
「まあ回復は練習すれば出来るようになるからな。俺も最近ちょっとは使えるようになったし」
「え、あおやん回復使えんの?!つよ!」
「まあまだそんな回復量は多くないけどな」
「そういやシュンキは回復使えへんのやっけ?」
ユウトにいきなり話を振られ、上の空気味だったシュンキが我に帰る。
「え?ああ……まあ俺は無理かな。今までもずっとコウヤに回復してもらってるし」
「そっか……あれってセンスの問題なんかな?」
「うーーーん、そうかもな。俺も練習した事あるけど、全然上手くいかなかった」
「へーえ。やっぱあいつすごいんやな……」
どこかしみじみとした空気が流れる。と、
「ただいまぁ〜」
底抜けに明るい声が雰囲気をぶん殴る。トイレ組が戻ってきた。コウヤは既に相当酔っているらしく、エイスケに支えられ千鳥足で歩いている。この男がパーティいちの剣士だなんて、この姿からは想像もできないだろう。心配になったシュンキがもう片方の肩を持つ。
「コウヤ、もう酒はそれくらいにしといた方がいいんじゃねえの?だいぶヤバいぞ??」
「いやぁ〜久々に呑めるから楽しいんやって」
「だからって……まあ気持ちは分かるけどな」
とそこへ酒場の店主がやってきた。
「兄ちゃん達、おかわり要るかい?」
溌剌とした声で陽気に尋ねる。気づけば5人のグラスはほぼ空になっていた。近くにいたユウトが答えた。
「あーじゃあ俺はシルバーブレッドで。他は?何がいい?」
それを聞いたコウヤとエイスケは顔を見合わせ、
「「ビールぅ!!」」
満面の笑みで口を揃えた。他の3人は呆れながらも、その顔には心からの笑顔が浮かんでいた。
この日々が続けばいいのに。
そんな願いは例外なく崩れ去るものだ。




