ジャージ姿の勇者たち、勝利のためのウォーミングアップ
会場の浮田市運動公園に着くと、周囲は活気に満ちていた。様々な学校の生徒たちが集まり、トラックではすでに熱心にウォーミングアップをしている。恭子が目を輝かせながら言った。「こういう場所に来ると、本当にドキドキするね!」僕も少し興奮して、胸が高鳴るのを感じた。「さあ、まずは受付を済ませよう」と言い、二人で会場の奥へ進んだ。試練の始まりが、すぐそこに迫っている。
僕たちは受付をすますと、係りの人の指示に従って、まずは更衣室に向かった。僕はそこで荷物をロッカーに入れ、学ランを脱いで、ジャージに着替えた。
更衣室から出ると、恭子も同様に、セーラー服を脱ぎ捨て、臙脂色のジャージ姿になって待っていた。恭子の姿を見て、胸が高鳴る。スレンダーな体型にフィットしたジャージが、彼女の魅力を一層引き立てていた。いつもかけている眼鏡をはずした彼女の顔は、普段とは違う、少し大胆な印象を与える。彼女の微笑みに心が躍る。
「準備はできた?」
恭子が微笑みながら言った。彼女の瞳は期待に満ちている。
「もちろん、あとは競技を楽しむだけだよ」
と僕は答え、緊張をほぐすように深呼吸した。周囲の喧騒が心地よく響く。
「どんな結果になるか、わくわくするね!」
恭子の声が、さらなる意欲をかき立てる。僕たちの初めての挑戦が、今まさに始まろうとしていた。
競技場にはほかの学校の生徒たちがすでに集まって、思い思いに準備体操をしたり走ったりしていた。野球部など部活動のユニフォームを着ている人たちもいた。当然ながら日ごろから運動をしている感じの生徒たちが多い。
「僕たちも、まずはウォーミング・アップをしておこう」
「そうだね、準備運動は大事だよ!」恭子が元気に応じる。彼女は軽やかに身体を揺らし、ストレッチを始めた。僕もそれに倣い、筋肉をほぐしていく。周りの生徒たちの活気に圧倒されつつも、少しずつ緊張が解けていく。「これが終わったら、すぐに競技だね」と言うと、恭子はニッコリと笑った。「うん、頑張ろう!」その言葉に、さらに気合いが入る。
恭子の柔らかな動きに目を奪われながら、僕も身を屈めてストレッチを始めた。彼女の長い脚が優雅に伸びる様子は、まるで舞っているかのようだ。無意識に心の中で彼女の姿を讃えながら、僕も徐々に緊張がほぐれていく。周囲の騒音が徐々に遠のき、恭子との距離感が少し近づいた気がした。
しばらくすると整列するようにとの放送が流れた。ほかの人たちとともに、僕たちも並んだ。開会式の始まりだ。競技場の主任という人が壇上に出てきて、挨拶をする。
「皆さん、今日は運動能力テストに参加してくださり、ありがとうございます!」
主任の声が響く。「この大会が皆さんの挑戦の一歩となりますように!」
恭子はその言葉に目を輝かせ、「私たちも頑張らなきゃね!」と意気込む。僕はその言葉に頷き、心の中で「絶対に結果を残そう」と誓った。運命の瞬間が、近づいてきている。
それが終わると、今日の流れについて一通りの説明があって、それが済むといよいよ競技開始だ。みんな思い思いに散っていった
種目はトレーニング室とグラウンドに分かれて行われる。
トレーニング室 ①握力
②背筋力
③立体位前屈(柔軟性)
④伏臥上体そらし(筋持久力)
⑤開眼片足立ち(平衡性)
⑥全身反応時間(敏捷性)
⑦垂直跳び(瞬発力)
⑧反復横跳び(敏捷性)
⑨踏み台昇降運動(心肺持久性)
⑩上体起こし(筋持久力)
グラウンド ⑪ハンドボール投げ(瞬発力)
⑫五十メートル走(瞬発力)
⑬立ち幅跳び(瞬発力・調整力)
⑭12分間走(全身持久力)
「けっこう、種目、あるなあ」
パンフレットを見ながら僕はつぶやいた。
「正確なデータを出すためと、運動自体をたくさんさせたい、ということで、一つの能力を測定するのに複数種目を用意しているみたいね」
「どれからしていくか、ということも、いい結果を出すためにはポイントだろうね」
「最初は軽いものでウォーミング・アップをして、強度の高いものは後に回すのがいいんじゃないかしら」
「最後の12分間走って何だろう」
「それは持久力を測るための種目よ。最後に全力を出すのは、体力的にも精神的にも厳しいけれど、いい仕上がりになるかもしれないわね」
と恭子が説明する。彼女の言葉を聞きながら、僕は少し不安になった。
「じゃあ、最初は握力から行こうか」
と提案した。恭子は頷き、二人でその方向へ向かう。手を握りしめる感覚が、今後の挑戦への期待感をさらに高めていた。