#5椅子
2047年 5月 13日 世界政府加盟国・カナダ
今日が作戦決行日だ。
仮狙撃班と攻撃班に分かれて行う。
僕は仮狙撃班のアシストに配属された。
この役割は攻撃班に問題が発生した際に狙撃するのをアシストすることだ。
午前11時に開始予定だ。
そろそろだと思ったら、狙撃役のウィリアムズが話した。
「君は、訓練で人も撃っていないのに見ず知らずの敵国の偉い人を撃てるか?僕には少し難しいよ」
と、自信なさげに言った。
「僕も正直言うとできるかと言われたら、できないかもしれないかもしれない。でも、これは国を守る戦いだ。弱音は吐きたくないよ。」
「うん...わかった。やるのは僕だからね。」
そんな話をしていると、予定時間になった。
攻撃役のエリックが入室した。
ドアが閉じた瞬間、椅子に座っていた目標に向かって勢いよくナイフが投げられ、命中した。
しかし、致命傷には至らず、まだ死んでいない。
必死に抵抗しようと、負傷した部分手で抑えながら血を垂らしエリックに向かって歩いている。
ウィリアムズが狙撃の準備をしたが手が震えている。
「だめだ...できない...殺すなんて」
「大丈夫だ。僕がやるよ、貸して。」
銃は受け取ったが、いざ撃とうとするとなかなか撃てない。
誰もが訓練したからと人殺しがすんなりできるわけじゃない。
そんなことを考えていたら、ターゲットがエリックの上に倒れ込んでしまった。
「貴様...!よくも...よくも...!」
「子供だからなんだ!こんなの早く終わらせて殺してやる!」
「ウィリアムズ!早く撃て!」
無線から聞こえてきた。
もうやるしかない。
バーン!
その音はこの街によく響いた。
打った弾はターゲットの頭を貫通した。
「ターゲットを撃ち抜きました。これから帰ります。」
「わかった。これから、ヘリがやってくる。お前たちがいるところに着陸するから、待機しておけ。」
すると、アレックスがヘリに乗ってやってきた。
「早く乗って!」
その後長官とエリックが乗り、帰国した。
この事件はカナダ国長暗殺事件として呼ばれ、誰かに雇われた世界傭兵共有機構(GMSO)の傭兵の仕業で、それ以上の調査はしないことが決定したらしい。
ヘリの中で、長官が言った。
「ウィリアムズ、なぜお前は撃たなかった。いや、なぜ撃てなかった。」
「痛そうだったんです...苦しそうな顔をしていて、僕にはとても無理でした。」
「お前はいつから世界政府の人間だったんだ?あれほど訓練しておいて今更僕にはとても無理でしただと?その考えを直してから次の任務に参加しろ!」
ウィリアムズは何か悲しい顔をしていた。
僕はあくまで狙撃のアシストだが、彼にはその責任が重すぎただけだ。