*プロローグ4
草原に突如、現れた強敵をどうにかして倒そうと、スキル『空気砲』を持つ男――ボス達は、果敢に挑んでいた。
ボス、といってもラスボスとかの意味ではなく、愛称でもなく、ただの名前だ。強そうな名前ではあるが、決して特段強いわけではない。ボスは暴力系主人公ってかんじ。
何でも力で解決すればいい、と思っている。
「なあ、ボス。リーフドラゴンを貫通させてくれないか? 生憎、槍や剣を持ってる奴がいないんだ」
このパーティーには武器/槍、剣を持ってる人がいない。みんな、拳の打撃だったり、弓だったり、盾だったりを持っている。そして、武器を持っていない回復役の女の子。
メンバーの一人が弓で攻撃してみたりもしたが、全くびくともしなかった。
どうも、拳で攻撃したり、盾でダメージを跳ね返したりしても、敵のHPが減らない事が分かった。敵の皮が硬いのだ。
「分かったよ。やればいいんだろ、やれば」
「スキル『空気砲』!」
風を切るように、ボスが所持している武器から、空気砲が放たれた。かなり大型の重たい強敵――リーフドラゴンは軽々と宙を舞って、吹っ飛んだ。そして、塀に激突。
「おお!」
と他パーティーメンバーから歓声が上がる。
だが――。
「おいおい。俺は《《貫通》》させろ、と言ったんだ。吹き飛ばせ、だなんて言ってないし、全然ダメージ与えられてねーじゃねーか」
そう、吹っ飛ばすだけじゃ、敵にダメージを与えられない。硬い皮の中を攻撃しないと相手は死なない。
ちょっとこのパーティー、バランスがおかしかった。
「そんなに言うなら、お前が貫通させれば良かっただろ」
「ああ゛? 俺の武器で貫通なんて出来るわけねーだろ。そんな簡単な事も分からないのか」
「ムカつくなぁ、おい。俺の空気砲でお前を吹き飛ばしてやろうか」
「け、喧嘩はやめてください!」
パーティー内での回復役のフィーナが制止する。全くその通りだ。早く敵を始末しないと、また敵が復活してしまう。
「戦闘に戻ろう」
「うん」
戦闘を開始したが、なかなか倒せなかった。
「撤退するか?」
「いや」
「何でこの俺様がリタイアなんてしなきゃいけないんだ」
「弱いからだろぉ?」
「ああ゛?」
この二人は放っておくと、喧嘩する。
――そして、遂に敗北の時が来た。
「草木の疾風/リーフ・トルネード!」
リーフドラゴンから受けた竜巻攻撃。防げる者は誰一人いなかった。全員GameOver。お決まりの地へと戻される。
お決まりの地で五人は考える。
勿論、敗因についてだ。
「なあ、誰が悪いと思う? 俺はボスが悪いと思うぜ。空気砲っていう強いスキル持ってるのに、貫通させられない所がよ」
残念な事にボスと敵対している、この男――ルインこそがこのパーティーのリーダーなのだ。だから、追放なんて言われたら、それに従わなければならない。
「俺は勿論、そういう事言ってるルインが悪いと思うわ。だって、強ければ拳で一撃で倒せるはずなのに、俺に丸投げして、ただ突っ立ってるだけの存在が一番たち悪いだろ」
「喧嘩、やめて下さ――」とフィーナが言いかけた刹那。
「今日でボスをこのパーティーから追放する」
「ああ゛? 俺の何が悪いって言うんだよ。ふざけてんのか? 、てめえ。殴るぞ」
「そんなに喧嘩するなら、私が辞めます。私を追放して下さい」
フィーナは気づいていた。リーダーのルインがパーティーのバランスを調整したいことに。
「フィーナ、お前は必要だ。ヒーラーがいなくなったら、パーティーが崩壊する。それだけは勘弁してほしい」
「フィーナちゃんが辞めるなら、私も辞めます」
そう宣うのは弓使いのニルだ。弓攻撃で貫通出来なかった子。美人なお姉さんタイプでとても優しい。パーティー内では『女神』と言われている。
「お前なら辞めていいぞ。あと、盾役も要らん。回復役で充分だ」
「えぇ……」
タンクの男の子も突然の追放にびっくりする。そして、ニルも間を置かない、容赦無い「辞めていい」という言葉にショックを受ける。
「それだと、残ったのはルインだけですね。一人でパーティー頑張って下さい」
「お、おい。フィーナだけは――」
「さようなら、ありがとうございました」
「フィーナちゃん、行こ」とニル。
「こんなパーティー、解散だぁ、解散!」とルインが当たり散らす。
そうして、ボス達のパーティーは結果的に解散となった。
「俺、これからどうすればいいんだろ……」
ボスはこれから先の未来に不安を抱いていた。
*あとがき
ここまでお読み下さり、ありがとうございます。作者の篠宮時乃と申します。
2話のあとがきになるのですが、速読術、羨ましい。
このエピソードでプロローグは終了です。
さて、今後なんですが、『もふもふ集め』のアンナを主人公にしたストーリーが始まります。あとの三人もその章が終わったら、順番に主人公として出てきます。アンナ→ヒイロ→リック→ボスの順番で。この構成で本当にいいのか、と悩みに悩んだ末に決まった構成でした。本当は追放された四人がパーティーを組んで、冒険しつつ、スローライフしつつ、っていうかんじにしたかったのですが。四人がパーティー組むのは、4章が終わった後になるので、結構先です……。
期待させて、すみません。
※あと、月・火・金は仕事があるので、毎日更新出来るかは分かりません。
今後ともよろしくお願いします。
※カクヨム版のあとがきになっておりますが、ご了承下さい。