*プロローグ1
夕暮れ時の洞窟の前。
洞窟の魔物を全て討伐し、これから冒険者ギルドに帰る所だ。冒険者ギルドには討伐報告をしなければいけない。
パーティーの一員の女の子が荷物を背負って、歩き出そうとしたその時、ふとリーダーから声がかかった。
「あのな、アンナ。君に話があるんだ」
パーティーの一員の女の子――アンナの周りには沢山のもふもふがいた。ひとえにもふもふと言っても、魔法が使える魔獣から普通の動物まで幅広くいる。種類も多種多様だ。その中でもアンナはうさぎとねこの、もふもふを気に入っていた。
「何でしょう?」
「今日で君をパーティーからクビにする」
「そ、それって……パーティー追放ってことですかっ?」
「そうだ」
「何でですか?」
考えられるとしたら、スキルのせいだ。アンナは『もふもふ集め』しか使えない。自然ともふもふが集まってくるスキルだ。ただ、スキルを使いっぱなしにしていると、もふもふが集まり過ぎるので、注意が必要だ。
もふもふには魔法が使える者もいるが、生活魔法しか使えない。なので、戦闘には不向きだ。
だから、もふもふは愛でる以外の用途がほぼ無い。
それにアンナ自身も攻撃は出来ない。でも、軽いヒールくらいなら打てたりもする。追放されてもおかしくないが、みんなの潤滑油的な存在でパーティーを明るく保ってきた。だから、リーダーにも「いるだけでいい」と言われ続けていた。
けど、飽きられちゃったのだろう。
「使えないからだ。もふもふばかり集めて何になる。攻撃魔法も使えないし、戦闘の邪魔だ。今日だってパーティーが危なかったのに、君は何もしなかった。もふもふを撫でてるだけだった。それにもう、新メンバーの契約もしてある」
「そんなぁ……」
「パーティーを組みたいなら、他をあたれ。ま、どうせもふもふと戯れてばかりの君を拾ってくれるパーティーなんぞ、いないと思うがな」
「もふもふに罪はありません!」
「それはそうだけど……」
リーダーも悲哀に満ちた顔をする。
「というわけで、ここでお別れだ。今後二度と会う事は無いだろうけど、またな」
「今までありがとうございました」
ペコリとアンナはお辞儀をする。
そしたら、リーダーと他のみんなが舌打ちする音が聞こえた。
去っていく元パーティーメンバー。
取り残されるアンナ。
「あはは、ざまぁ」
「アンナのもふもふ、一匹貰ってっちゃおうかな」
(あげるわけないじゃない。こんなに可愛いのに)
彼女は心の中で反抗する。
「やめた方がいいぞ。キモいアンナの体臭がいっぱいついてる」
「そうだよな」
遠ざかっていく足音とそんな会話が聞こえてきた。今日は沢山傷ついて、疲れた。もふもふに思う存分、癒されよう。
さっきの討伐報酬、大金だったらしい。でも、そんなのアンナには関係無い。アンナが冒険者ギルドに行っても、全て持ってかれていた。
(はぁ、泊まれるとこ、ないじゃん……)
アンナは漠然とした不安に駆られていた。