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恋の前触れ  作者: ぺろにか
2/2

生物園編

「生物園」

中学校の課外授業で、クラス全員で生物園に来ている。

熱心にガイドを務める飼育員を、見つめる様に聞いている彼女がいる。

話の内容自体は如何と言う事はないのだが・・・彼から目が離せずにいた。

いや、彼の動きに合わせる様に目が移動している。彼が一通りの説明を終えると、

担任教師が注意を集め、ここからは、自由行動だと話す。その合図と共に、

クラス全員が生物園の各々が興味を持った場所に移動し始める。彼女はというと、

目的も無く、カンガルーが飼育されている場所に足を運んでいた。

何気なくカンガルーを眺めていると、彼が隣を通る際に、「好きなの?カンガルー。」

声を掛けられた事に驚いてしまい、咄嗟に、肯定してしまう。「はっはい。」

彼が笑顔を見せ、荷物を持ちながら、そのまま、歩いて行く。

彼女が彼の後ろ姿を目で追いかけている。月日が流れる。彼女は、

週末は必ずと言っていい程、生物園に通い、様々な動物の観察に勤しんでいた。

課外授業以来、動物の生態に興味を持ったようだ。動物達を観察し、

掌サイズの可愛いシール等でデコレーションされたノートに自分が気付いた事を、

挿絵付きで記入している。突如、彼女の肩に手を回し、誰かが声を掛けて来る。

彼だ。「頑張ってるな。良く描けてるじゃないか。その絵。」彼女が答える。

「もぉ。邪魔しないの!声掛け事案になるよ!」彼女はそう言いながら、彼の手を退ける。

彼が、「毎週、毎週大変じゃないか?あんまり無理するなよ。」

彼女は、表情だけで分かる様に、あからさまに、心配性だなと言わんばかりに、

唇を尖らせ、顔をしかめる。更に、観察記録付けの邪魔だと言う様に、

ペンを持っている右手で、何処かに行けと言う代わりに右手を二度ほど振る。

彼が、嬉しそうにその場を離れて行く。彼女が、観察記録を付け終え、生物園を出て、

自宅に帰る。玄関のドアを開けると、母親が出迎え、何とも言えない表情で、

父親の転勤が決まったと告げる。彼女は、適当な返事をし、他人事の様に素通りし、

リビングに向かう。冷蔵庫からお茶が入った容器を取り出し、

近くに置いてあるコップにお茶を注いでいる。彼女はこの家を離れるつもりが無いのが見て取れる。

何かを言い難そうにしている母親が彼女の目に入る。

彼女が「何?」と聞くと、母親が、「お父さんがね・・・一緒に来て欲しいって・・・」

彼女にとっては予想外の発言だった。彼女は驚く様に、「高校は・・・」

母親が申し訳なさそうな表情をする。彼女が、荷物を持ち、家を出る。

足早に・・・いや、走る様に向かう。閉園間際の生物園に着き、息切れをしながら、

彼女は見つめている。その視線の先には、後片付けをしている彼の姿が・・・

逢えなくなる事を知り、初めて、自分の気持ちに気付いた。

彼女が、ゆっくりと深呼吸をし、意を決する様に、彼に向かって歩き出す。

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