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第4話 たとえ筋肉痛が痛くても、私は淑女ですわ!

 ◇


 夕方、生徒会室で生徒会長であるハリアーは、あることを考えていた。


 ――主席であるクロエと、次席であるセシリア、、、この2名に会ってみたが、少し面白そうだ。


 ぜひとも生徒会に入れたい。彼はそう思っていた。


 勉学としても優秀な人材で、且つ今日行われた魔法を測定する試験でも優秀な成績を収めた2人。

 その二人を生徒会に入れるという考えは、何も間違っていないだろう。


 ――それに、セシリアは面白い魔法を使っていたと報告が挙がっていた。尚更欲しくなるではないか。


 ハリアーは楽しそうな表情を浮かべた後、ふっと笑った。



 ◇


 ――まずいですわ、、、筋肉痛がとれていません、、、


 私は起きてすぐ、私の両太ももに重い筋肉痛がのしかかっているのを感じた。昨日ついつい小鹿になるまでスクワットで自分自身を痛めつけた結果、これだ。


 この筋肉痛すらも愛おしい、、、けれども、私は学校に行かなければならない。


 ――仕方ないですわね


 そう思った私は、今日は筋肉の休日だと定めて、筋トレを控えることにした。だが、筋肉に血を巡らせるために、動的ストレッチのみはしっかりと行う。


 丁度動的ストレッチを終えたタイミングの私に、部屋をノックする音が聞こえてきた。


 ――マリーって、このタイミングがいつも絶妙なのよね。どこかで私の事を見ているのかしら?


 「お嬢様、入りますね」


 そういうと、マリーは部屋に入ってきて、私を見て、少し焦った様子で「お嬢様??何かあったのですか??」と言ってきた。


 「なにもないわよ?どうしたの??」


 私がそう聞くと、「お嬢様が筋トレをしていないなんて、、、もしかして今日はあの日ですか??」と私に問う。


 「ええ、今日は筋肉の休養日よ。流石の私も、筋肉を労わることもありますわ」


 「といっても、1か月に1日あるかないかじゃないですか」


 「仕方ないでしょう?私の筋肉が私に”もっと!!”と叫んでいるのですから」


 「ああ、いつものお嬢様だ、、、」


 マリーがそういうと、いつも通り私の身支度を手伝ってくれた。

1つ1つの動作で軋んでいる私の筋肉を感じながら、着替え終わったため、私は朝食を食べに下に向かう。


 昨日と同じように、お父様とお母様はご飯を食べているようだ。

 

 「おや?セシリア?今日は筋トレをしなかったのかい?」

 「そうですけど、、、なぜわかるのですか?」

 「少し、寂しそうな顔をしていたからさ」


 さすがはお父様。私の表情を見て、満足のいく筋トレをしているのか、はたまたできなかったのかが分かるようになっているらしい。


 「セシリア?その調子で筋トレをお止めなさい」


 「む~、お母様はやっぱりいじわるですね」


 私に筋トレを止めろというお母様に対し、私は少しむくれた感じでそう答える。


 朝食を食べ終わった私は、バッグを取りに戻り、「ごめんなさいね。今日は使ってあげられないの」と筋トレ器具に謝罪の言葉を述べたのち、学院に向かった。



 ◇


 「あ、セシリア様、おはようございます!」


 私が教室に向かっていると、後ろからクロエが私に近づき、挨拶をしてくれる。


 「ええ、クロエさん。おはようございます」


 私がそう返すと、クロエはにっこりと笑った。


 「セシリア様、今日から本格的に授業が始まりますね」

 「ええ、確か最初は魔法の詠唱方法とその効果、でしたわね」


 正直、私は魔法の詠唱に適性が全くないため、魔法を扱うことができないのであるが、授業はしっかりと受けないといけない。

 

 「クロエさんは、どこで魔法を覚えたのですの?」


 私は以前から疑問に思っていたことを尋ねる。魔法は魔力や詠唱適性を持っている者しか使えないことに加え、貴族の子女のように魔法に関する教育を受ける機会がない平民では、至難の業であるのだ。


 あ~、、、と少しクロエは言いにくそうにしている。


 「も、もちろん無理に答えなくていいですわよ!?」

 

 「いえ、特に隠すことはないのですが、、、」とクロエは続ける。


 「私のおじいちゃんが昔貴族の方に仕えてて、それでおじいちゃんが魔法を使えたので、教わったんです」


 「そう、、、それは良いご家族を持っていらっしゃったのね」

 

 「えへへ、、、っ」


 クロエは少し照れくさそうにしている。


 ――その照れているクロエも可愛いですわ!!


 私がそう考えていると、教室についてしまった。


 「では、クロエさん、またね」

 「はい!あ、それとセシリア様、私のことは気軽にクロエと呼んでいただければ嬉しいです」


 「分かりましたわ、クロエ?」


 クロエは私の言葉を聞くと嬉しそうな表情で自分の席に向かう。そのクロエを見て、私自身も笑みがこぼれた。


 さあ、私の戦いはここからだ。重度の筋肉痛を抱えている足を、ぎこちない動作をしないように席に座らなければならない。

 

 ――さあ、、、座りますわよ。


 私は気合を入れて、椅子に座る。

 、、、周囲の視線を確認すると、特にこれといった変な目をされているわけではない。どうやら淑女らしく椅子に座ることができたようだ、、、。

 座ってしまえばあとはこっちのモノ、、、私はカバンから筆記具とノート、それと教科書を出し、1限目の授業に備えた。



 ◇


 ――はあ、やっと終わりましたわ


 午後の授業がすべて終わり、無事筋肉痛を乗り切った私は安堵した。

 今は家路につくため、途中まで道のりが一緒のクロエとともに迎えの馬車の下へ向かう。


 他愛のない話をして楽しんでいた私たちに、急に後ろから、「ちょっと良いか?」と聞き覚えのある声に引き留められる。

 「はい、なんでございましょう?」私とクロエが振り返ると、ハリアー様ともう一人の方がこちらに歩いてきているのが見えた。


 「そなたたちに話しておきたいことがあってな?、、、どうだ?一緒に生徒会をやらないか?」


 呼び止められた私たちは、ハリアー様からそのように言われた。突然の生徒会の誘いに驚いていると、


 「そなたたちは勉学の面でも首席と次席、そして、先の魔法力測定で良い結果を残したと聞いてな」


 「王子のおっしゃる通り、あなた達は優秀な成績を修めているから、是非生徒会に欲しいのだ」

 「失礼、私の名前はヴァンフレッド・オルガナスだ」


 ハリアー様がそういわれた後、眼鏡をかけた理知的に見える方がヴァンフレッド様にそのように言われる。

 ヴァンフレッド様の話を聞くと、どうやら生徒会には優秀な生徒が所属し、学院の生徒を取りまとめる役職として放課後に活動をしているとのことだった。


 ――良いお誘いなのでしょうけど、筋トレの時間が減ってしまいますわ、、、


 私は放課後に活動をしているという点から、家に帰って筋トレをする時間が減ってしまうことを危惧した。


 どうやら、クロエも悩んでいるようだ。勉強の時間が減ってしまうことを危惧しているのだろうか。


 「まあ、いきなり返事はできないであろうから、今日生徒会の様子を見て貰ってから判断すればよい。二人とも、時間は大丈夫か?」


 「ええ、私は大丈夫ですわ」「はい、私も大丈夫です」


 「ではさっそく行くとしよう」

 

 ヴァンフレッド様がそういわれると、私たちを生徒会室に案内しようとする。

 「馬車の者を待たせてしまいますので、少し話をしてきます。それまで少々お待ちいただいても宜しいでしょうか?」


 と私が尋ねたところ、二人が了承してくれたので、馬車の元まで急いで行き、少し遅くなる旨を御者に伝えた。


 さて、まだ筋肉痛は収まってはいませんが、、、と待たせてしまっている三人の下に急いで戻る。


 「む、、、思ったよりも早かったな」

 「ええ、少し筋肉にものを言わせましたから」


 「そうか、筋肉、、、」

 一瞬時が止まったかのように、三人がピタッと止まった。


 その後、三人は少し不思議そうな顔をしたが、「とにかく、こっちだ」とヴァンフレッド様の案内で私たちは生徒会室に向かう。


 


 

 

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