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第12話 魔法実習、始まりますわ!後編


 ◇

 ~クロエ視点~


 「ん、、、っ」

 突然襲い掛かった後頭部の衝撃による気絶から目覚め、辺りを見回すと、気絶したセシリア様、バラン様、そして、牢獄のように入り口が鉄格子になった部屋の中にいることに気が付く。両手は紐によって縛られている。


 ここは・・・?

 

 先ほどまで森の中に居たはずなのに、なぜか牢屋に入れられている現状に、少しパニックになりそうになる。

 

 ――落ち着かないとだめだ、、、!まずは二人を起こさないと、、、


 私はそう考え、「セシリア様、バラン様、起きてください!」と声を掛ける。

 しかし、二人はまだ意識を失っているようで、起き上がってはこない。


 私は途方に暮れていると、コツコツっと階段から人が降りてくるような足音が聞こえる。

 そして、私たちの前に一人の男が現れた。


 「よう、起きたようだな?」


 「あなたは一体、、、?それよりも、なぜ私たちは縛られているのですか!?」

 

 「見てわかんないのかい?あんた達は身代金目的で誘拐されてんだよ」


 男は私の前にある鉄格子に蹴りを入れながらそう答える。私はその行動にビクッとしてしまうが、男はこう続ける。


 「その制服、魔法学院の生徒だろう?と言うことは両親は金をたっぷり持っているってことだ」

 「身代金の話がつくまで、そこでしばらく大人しくしときな?」


 ハハッと男は笑いながら、階段を上り私たちから離れていく。


 ――まずいことになりました、、、


 そういえば、、、と、私はゲームをプレイしていた時に、似たような形で盗賊に捕らえられていた場面があったことを思い出す。あの時は確か好感度の高い男性が助けてくれる形だったが、今回もそのような展開になるとは限らない。


 私はこの捕らえられている状況に危機感を覚え、セシリア様のところに行き、身体を揺すりながら「セシリア様、起きてください!」と大き目の声で呼びかける。


 「う、、、う~ん、、、ここはどこですの?」


 セシリア様がようやく目を覚ました。説明は後にして、同じ要領でバラン様を起こし、私は現在起こっていることの説明をする。


 「そうですか、私たちは誘拐されてしまったのですね」


 「すまない、私がもう少し早く気づいていれば、、、!」


 「いえ、バラン様のせいではありませんわ。ところで、二人は杖がございますの?」


 セシリア様に言われ、杖を刺している左腰を見るも、どうやら杖は没収されているようだ。


 「いえ、無いです」「俺も取られているようだ」


 「やっぱりそうですか、、、じゃあ仕方ないですわね!」


 と言った瞬間、ぶちっといった音が聞こえたと思ったら両手を縛っている紐を力づくでちぎっていた。


 ――えっと、セシリア様の力が強いことは知ってますが、流石にそれは、、、

   、、、うん!流石はセシリア様ですね!


 私はそのことを考えるのを止め、紐をちぎったセシリア様をうんうんと頷きながら眺める。


 「さ、お二人のひもも解いて差し上げますわ!」


 セシリア様がそういうと、同じ要領で私とバラン様のひもを引きちぎる。


 バラン様も驚いた表情を浮かべるものの、次第に私と同じように考えるのを諦めた表情をする。


 ――セシリア様と一緒なら、大丈夫な気がしてきました、、、


 根拠は全くないが、私はそのように考えていた。



 ◇

 ~セシリア視点~


 ――さて、縄も解きましたし、これからどうしましょうかしら


 私がそう考えて、二人にこれからどうするか相談した。


 「このまま捕らえられていたとしても、無傷で帰還できるとは限らない。こちらから攻撃を仕掛けてはどうか?」

 

 「でも、私たちは杖を取られているのですよ?」


 「問題はない。そうだろう?セシリア?」


 「まあ、不意を突かれなければ大丈夫だと思いますわ」


 ――まあ、それにはまずは情報を集めませんとね


 私はそう考え、予め牢屋のカギを壊して置き、見張りの者がやってくるのを待った。


 コツッコツッと何者かが降りてくる音が聞こえる。

 私たちはロープで縛られているフリをし、その男が鉄格子の扉前に来るのを待った。


 「よお、全員お目覚めのようだな」

 

 鉄格子の前に立った男がそういった瞬間、私は魔力を込めてその鉄格子を蹴る。すると勢いよく開いた鉄格子の扉がその男にヒットし、男は「ぐっ、、、」と言い後ろ側に倒れ込む。


 ――逃がしませんわ!


 私は即座に男の下に行き、逃げる体制を取ろうとした男の首根っこを掴み、牢屋の中に投げ入れた。

 するとクロエとバラン様がその男の両手両足を縛り、その場から動けないように拘束した。


 「ぐっ、、、お前たちは何を!?」


 「静かにするのですわ!あなたには直接お尋ねしたいことがあって、、、」


 私はにこっと笑いながらその男の下に行き、情報を聞き出した。


 「答えないと、もっと痛い事が待ってますわよ?」


 と私が言ったのが効いたらしい。男は「わ、分かった!洗いざらい話す!!」と慌てながら言った。


 どうやら、ここは森の近くにある盗賊のアジトらしく、15名ほどの盗賊がいるとのことだ。魔法を扱えるものはおらず、みな剣などで武装しているとのこと。

 私はそこから、アジトの見取り図やクロエ、バラン様の杖がある場所を聞き出し、その男の首後ろに手刀を入れ、気絶させた。


 「さあ、ある程度の見取り図は分かりました。皆さん、私が先頭で行きますので着いてきてください」


 「、、、ああ。」「分かりました!」

 二人は私の言葉に頷いたため、そのままアジトを制圧するために動き出す。


 途中私たちの脱獄に気が付いた盗賊2名が襲い掛かってきたが、普段セバスチャンから戦闘訓練を受け、さらに魔力を纏っている私の敵ではない。

 その者達の攻撃を避けながら的確に気絶させるポイントに打撃を叩きこんでいく。

 念のため、近くにあったロープで体を縛り付けておく。


 少し進んだところに、武器庫のような場所があるのを見つける。


 ――ここがそうですわね!


 その部屋に入り、中で半分眠りかけていた盗賊を制圧し、クロエとバラン様は自身の杖を探す。


 「あ、ありました!」「俺のもあったぞ!」


 「では、これで心置きなく盗賊を排除できますわね!」


 私たちは武器庫から出て、先ほどの盗賊が言っていたルートを辿り、敵の本拠地に乗り込む。

 

 バンッ!と扉を開けると、そこには10名ほどの盗賊が椅子に座って談笑していた。


 「な!お前たちは・・・!どうやって牢から出たんだ!?」


 「それは教えませんわ」


 クロエとバラン様は部屋に入る前に詠唱を終わらせていたようで、入った瞬間に水魔法と雷魔法をそれぞれが放つ。


 手前側にいた盗賊6人がその電撃により感電し、その場に倒れ込む。


 「へ、お嬢様如きがなめんじゃねぇ!」


 残った盗賊がこちら側に向かって武器を持ち突っ込んでくる。


 「ふ、甘いですわ!」


 私はその4人に相対し、手と足に込めた魔力で一人ずつ無力化していく。気が付けば後は女性の盗賊が残っているのみで、他の者は倒れていた。


 「あなたで最後ですわ!」


 「まさか、あんたたちがここまでやるとは思っていなかったよ。それじゃ、私はこれで」


 そういうと、懐から煙幕を取り出し、それをこちらに向けて放り投げる。


 「くっ!待ちなさい!!」


 私は追いかけようとするも、煙幕によって視界が遮られ、その盗賊を視認することができない。


 「あばよ、お嬢さんがた」


 ――まずいですわ!このままでは逃げられてしまう、、、

 

 私はそう思ったが、その直後に「――――――っ!」とバラン様が魔法を唱える。すると、部屋の奥の方から「ぐぅ、、、っ!」と言った声が聞こえてきた。


 少し時間が経ち、煙幕の効果が切れると、そこには魔法によって束縛された女盗賊の姿があった。


 「あんた、一体何をしたんだい?」


 「逃げらんないように土魔法で動きを止めたのさ」


 女盗賊の問いかけに、バラン様がそのように返答をする。


 「フッ、、、私もここまでみたいだね」女盗賊は諦めたような表情で「降参だよ」と一言。


 それから先ほど無力化した者達を一か所に集め、全員の手首にロープを繋ぎ直す。おそらく私のようにロープを引きちぎれる者はいないだろうから、これで大丈夫だろう。


 「ところで、なぜこんな事を?」


 「そりゃあんた、貴族の子女がこぞって西の森で演習をするという情報を聞いちまったら、金の匂いしかしないだろう?」


 なにを当たり前の事を、、、といった表情で女盗賊が答える。


 あくまで身代金目的のみで私たちを攫ったようだ。運よく目が覚めたからよかったものの、私はともかく他の二人に危険が及んでしまったことに対し、少し怒りがこみ上げる。


 ――しかし、この状況をどうやって外の者に伝えればよいのでしょうか?私たちが今どのあたりにいるのかも詳しく知りませんし、、、


 「なあ、セシリアちゃん、クロエちゃん。ここは俺に任せて貰っていいか?」


 「え、ええ、大丈夫ですけれど、何か策があるので?」


 「まあ。見てな?」と言いながらバラン様は窓を開け、真上に対し魔法を放つ。

  放たれた魔法は光を放ちながら上空に飛んでいき、一番高くまで上がったら弧を描きながら下に落ちてくる。


 「さあ、合図を出したからじきに王国の警備兵が来るだろう。後俺たちは待っておくだけでいい」


 バラン様はにこっと微笑みながら私たちにそう言った。それにしても、準備がいいことだ。それに、光を飛ばすと警備兵が来ると分かっているようだし。


 「、、、もしかして、これが本当の目的だったんですか?」


 「さあ、なんのことだか、、、」


 クロエが少し真剣な表情でバラン様に尋ねるも、バラン様はとぼけた表情でそう返した。

 

 「バラン様は私たちに何かを隠している様子でした。こうなるのも想定内の行動だったのではないですか?」


 さらにクロエがバラン様に問い詰めると、バラン様は頭をガシガシしながら、「あ~、まあ、そうだな」と答える。


 「え!?と言うことは盗賊がいることを知っていたのですの!?」


 「ああ、盗賊を見つけて、おびき出した後に警備隊に合図を出すのが本来の仕事だったんだが、予定外の事が起こってな」


 「なんでそれを最初に、、、」


 「盗賊に感づかれたらこの作戦は意味なくなるからな。あくまで二人には知らせないでおいた方がいいという判断になったんだ」


 「ちなみに、それ以上は俺でも言えない」


 バラン様はそう言ってこの話題を打ち切った。

 つまり、多少結末は違うが誰かが思い描いた絵の上を私たちは辿っていたという訳だ。

 

 「でも、それで私たちは襲われてしまったのですわよ?」


 私は少し非難するようにバラン様に問い詰める。


 「ああ、それはすまないと思っている」


 そう言いながら、バラン様は私とクロエに頭を下げる。

 正直、少し苛立ちを覚えたが、起こってしまったものは仕方がない。私はそう判断して自分自身の怒りをグッと押し込める。


 「、、、はぁ、分かりましたわ。とりあえず許します」

 「わ、私もです!顔を上げてください?バラン様?」


 「ああ、ほんとにすまなかったな」


 バラン様は顔を上げながら私たちにそう伝え、そこから少しの静寂が起こった。


 少しすると、ガシャッガシャッという鎧が接触しあう音が聞こえる。どうやら、警備兵が到着したようだ。

 

 私たちは窓から手を振り、「ここです!」と警備兵に伝え、私たちが捕らえた盗賊たちは警備兵に連行されていった。


 残りの警備兵が「バラン様、セシリア様、クロエ様。ご苦労様です。少し歩きますが、戻りましょう」と私たちに伝え、その警備兵を先頭に私達は帰路につく。


 はあ、長かった一日が終わった。

 

 ――今日も筋トレはお預けですわね、、、


 私はそう考えながら、すっかり暗くなっている森の中を歩き出した。


 

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