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第11話 魔法実習、始まりますわ!中編

 私はいつもと同じ時間に目が覚める。今日は校外学習の2日目だ。

 1日中森の中で魔物と対峙することから、昨日から筋トレは控えている。


 ――はあ、早く筋トレがしたいですわ、、、


 私はそう考えているが、筋トレをやりすぎてしまって森の中で体が動かなくなってしまっては意味がない。筋トレをしたい気持ちをグッと抑え、制服に着替える。


 「お嬢様、今日も良く我慢できましたね」


 着替えている最中、その手伝いをしているマリーが私にそのように言う。


 「まあ、森での実習も考え方を変えれば筋トレですからね。明日までは大人しく我慢しますわ」


 「それがいいです」


 マリーはにこっとした表情で言う。


 さて、準備はできた。たしか集合場所は昨日と同じ門の前だ。私は支度をし、昨日と同様門の前まで向かった。


 

 ◇


 門につくと、クロエが待っていた。

 

「セシリア様、おはようございます!」

 「ええ、おはようですわ。それにしても、今日は早いのですわね」

 「はい、いつもより早い時間に目が覚めてしまって、、、」


 私たちはたわいもない話をしながら、バラン様を待つ。

 

 ――昨日同様、遅れてこられるのかしら?


 そう思っていたが、ほとんど待たずしてバラン様が私たちのところまでやってきた。

 

 「バラン様、おはようございますですわ。今日は早いのですわね?」

 「ああ、レディ二人を待たせるわけにはいかないからな?」


 私が嫌味っぽく言うも、バラン様は歯の浮くようなセリフをはきながら私たちに挨拶をする。

 

 ――ではなぜ昨日遅れたのでしょうか、、、?

 そういった疑問も沸いたが、とりあえず考えないことにした。

 

 「では、向かうとするか」


 バラン様はそういうと、昨日と同じように先頭を歩きながら門をくぐり、西の森へと足を進める。私たちも遅れないよう後ろからついて行く。


 

 しばらく森の中を歩くと、バラン様は足を止め、私たちの動きを静止しようと左腕を私たちの前に出しながら、「しっ!」と小さな声で言う。


 ―何かあったのかしら?


 私とクロエが前方を見ていると、犬型の魔物が4匹私たちの方向へ歩いてくるのが見えた。


 「複数匹か、、、。少し危ないから私が対処しよう」


 バラン様は少し真剣な表情でそう言い、杖を構え「――――――っ!」と呪文を唱える。


 呪文を唱えた瞬間、その魔物を囲うように四方に土の壁が生じる。


 「さあ、クロエ!いまだ!!」


 バラン様はクロエに指示を出し、クロエも「はい!」と言った後に杖を構え、その土壁の中に火の魔法を落とし入れる。


 突然四方を囲まれ混乱していた魔物たちは「ギャンッ」という声とともに、静かになった。


 どうやら、倒してしまったようだ。それにしても、初めてバラン様が魔法を使用するのを見たが、流れるような速さで相手に合わせて的確に魔法を使用しており、初めて見る私達でさえその魔法制御力の高さを感じた。


 「バラン様!流れるような魔法でしたわ!なぜ昨日は使わなかったのですの?」


 「ああ、君たち二人で大丈夫だと思ったからな。ここからは森の中心部に入る。二人には万全の体勢を保っておいて欲しかったんだ」


 「ま、ピンチになったら助けるから、ここから先もよろしく」


 、、、どうやら、ピンチになった時や少し厄介な時だけ助けてくれるらしい。


 ――このままバラン様が表立って活躍してくれても構いませんのに、、、


 「森の中心部ってそんなに危ないのですか?」


 「ああ、より俊敏で、強力な魔物が出てくるぞ?」

 「まったく、実習にかこつけてめんどくさいことを頼みやがって、、、」


 バラン様は小声で恨めしそうにつぶやく。


 「えっと、なにかあったんですの?」


 「いや、こっちの話だ。なんでもない」


 どうやら、少し隠し事があるようだ。が、とりあえず1年の私たちはバラン様について行く他ないだろう。私達三人は森の中心部に向け、歩みを進めた。


 

 それから、中心部に近づくにつれ、バラン様の言う通り魔物の能力が上がっていった。私とクロエで対処できるレベルの魔物たちだったが、少しクロエに疲れた表情が浮かんでいる。


 「そろそろ、休憩しませんこと?」


 「ああ、いいぞ。クロエちゃんも疲れているようだしな」


 「えっと、私はまだいけますよ?」


 「いや、休んでおいたほうがいい。ここからが本番なんだから」


 私たちは休憩するのにちょうどよい場所を見つけたため、その場所で休憩を取ることになった。

 

 「ところでバラン様、何を隠していらっしゃるのですの?」


 私は水分を取りながら、バラン様に尋ねる。


 「それは着いてからのお楽しみ、、、と言いたいところだが、一部だけ教えよう」


 「俺たちは駆除係さ」


 「「駆除係??」」


 私とクロエははじめて聞いたその言葉に頭に?を浮かべる。

 どうやら、魔法に長けた私たち3人(まあ、ほんとは二人なのですけれど)は森の中心部に行って強力な魔物を駆除する役割を担っているらしい。一般生徒たちの方に強力な魔物が行ってしまわないためだ。

 これも生徒会の役目なのだそうだ。生徒会の中で選抜された3人が中心部で魔物を狩り、うち漏らした魔物に関しては他の生徒会メンバーが対処する、といった形がとられているらしい。


 「ま、それだけ期待されているってことだ」


 「はあ、、、それにしても面倒だ、、、」


 バラン様はダルそうな表情でそう答える。


 「と言いますか、バラン様って生徒会メンバーだったのですの?」


 「そういえば、今年度に入って一回も顔出してなかったしな。改めて、生徒会メンバーのバランだ、よろしくな?」


 以前ハリアー様が言っていた全然活動をしていない生徒会メンバーの一人であったのだ。確かに、基本的な魔物の対処を私たち1年生にまかせっきりなバラン様の態度を見ると、今まで生徒会をさぼっていた姿と一致する。

 クロエも最初は少し驚いている顔をしたが、少し時間が経つと納得、という表情に変わっていた。


 「じゃあ、そろそろ行くか」


 私たちは立ち上がり、森の中心部に向け歩き出した。


 

 ◇


 

 中心部に行くと、少し大き目な湖が姿を現した。太陽が湖に反射し、キラキラしていてとても綺麗な光景が広がる。

 

 「さあ、ここからは少し気合を入れよう。二人とも準備は良いか?」


 アラン様がそういうと、湖から巨大なカエルのような魔物が現れる。


 ――正直、私カエルは苦手ですの、、、


 私はそう思うが、やるしかない。アラン様は杖を構え、雷の魔法を唱え始める。クロエも同じく同系統の魔法を使おうとしているようだ。


 私は両手足に魔力を込め、いつでも飛び出せる準備を取る。


 「「――――――っ!!」」


 二人の魔法がそのカエルに向かって一直線に飛んでいく。バラン様が放った魔法は見事直撃したが、クロエの魔法は寸でのところで避けられてしまった。

 カエルも多少ダメージを負っているようだ。少し動きが鈍くなったのを察知した私は、近づきカエルの顎部分に向かって蹴りを放つ、、、も、ぬめぬめした感触でその蹴りが滑ってしまう。


 カエルは私の腕に長い舌を絡ませ、カエル側に引き寄せようとしている。

 私はカエルの舌を手刀で断ち切り、すこし後ろに下がる。


 ――うぇぇ、、、べとべとして気持ち悪いですの、、、


 私が離れた瞬間、そのタイミングを見計らったようにバラン様が雷の魔法で追撃を行う。


 その魔法が直撃したカエルはだいぶ効いているようで動きが鈍くなるも、まだ倒すには至っていない。


 ――今ですわ!


 私は右手に魔力を集中させ、カエルの顔正面に向かって思いっきりストレートを放つ。今度は滑ることなくカエルに直撃し、当たった瞬間に放たれた魔力からカエルは5mほど吹き飛び、絶命した。


 

 「バラン様、そしてクロエも!ナイスカバーですわ!」


 私はバラン様とクロエにサムズアップしながらそう伝える。


 「いやあ、改めてクロエちゃんもだけど、セシリアちゃんも強いね」


 バラン様は少し感心したかのように呟く。


 「それにしても、セシリアちゃんは変わった魔法を使うなぁ」

 

 「ああ、これは魔法ではないのですの」


 「え?」


 不思議そうな表情を浮かべるバラン様に、魔法を使っているのでなく、魔力で殴っているということを説明する。


 「、、、ははっ、以前マルケスに会った時もそんな事を聞いてたけど、まさか本当に魔力で殴ってるなんて、、、」


 バラン様は苦笑気味の表情をしている。


 「まあ、とにかく、これで粗方片付いたようだ。残りは明日にして、今日はこのまま戻ることにしよう」


 「ええ、そうですわね」「はい、分かりました!」


 私とクロエはそのように返事をし、バラン様と一緒に戻る。

 戻っている途中、いくつかの魔物たちと遭遇したが、相変わらずバラン様は何もせず、私とクロエの二人で魔物を駆除していった。



 ◇


 森の入り口に向け半分ほど進んだ頃であろうか。私たちは休憩にちょうど良い場所を見つけ、そこで休憩を取ることにした。


 「いやあ、まさか2日で粗方片が着くとは思わなかったよ。明日はのんびりできるなぁ」


 「のんびりって、、、そんなのダメですよ!明日も頑張りましょ?」


 クロエはそんなバラン様に対し、少し叱る口調で言う。「そうですわよ?バラン様」私もそのクロエが言ったことに乗っかる。


 「いやあ、だって、、、」


 バラン様が何かを言おうとしていたのだが、先ほどまでヘラヘラしていた表情から瞬時に真剣な表情に変わる。


 「えっと、なにかあったんですの?」


 私がそう尋ねた瞬間、後頭部に鈍器で殴られたような衝撃を受けてしまう。


 「ぐっ、、、」


 私は突然の衝撃に対応することができず、その場で意識を失ってしまった。







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