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また、会ったね




次の日。




「クロウド、これを持っていけ。」




ギルドに向かう前にそう言ってノアに部屋で渡されたのは、小さな袋。チャリ‥とした音からどうやらお金が入っている様だった。




「いいの?」




「いいも何も、必要だろう?」




何を言っている、と言わんばかりにノアが呆れ顔を向ける。確かにお金は必要だ。ギルドに行く前に露店や本屋に周りたいし、あともし素敵な出会いがギルドであればその後女の子が好きそうな小洒落(こじゃれ)た喫茶店にも行きたいし。僕自身の手持ちのお金は元々少ない上に、昨日公衆浴場に行ったのもありもう残り僅かだった。




「ありがとう、ノア!流石だな!」




愛してるぜ、とウィンクを飛ばすとノアは嫌な物を見たように眉を寄せる。




「分かってると思うが無駄遣いするなよ?」




尚も嫌な顔をするノアに向かって、勿論!と反対の目でウィンクのおかわりをすると……思いっきり無視され、部屋を追い出されました……とほほ。






------





そのあと僕は、露店で買い食いをし、本屋で参考書<女の子へモテる方法100><スマートな男性が取る行動><これであなたもハーレム王!>を買い、ギルドに向かった。





流石、世界最大規模のダンジョンがある国という事もあって、ギルドに入れば沢山の冒険者と分かる者達で賑わっている。




えっと、受付は…っと、と見渡すとそれらしき人達の列を見付ける。そして最後尾の人に声を掛けたら予想通りそうだったのでそのまま並ぶ。



結構並んでいるなぁ、待つのかなぁ、と前の列を見ていると、



「なぁなぁ、あの子可愛くね?」



「エルフかな?初めて見た…噂通りクールそうに見えるけど、確かにめっちゃ可愛いな」



あの子に担当してもらいて~!!という、会話が聞こえ、釣られてカウンターを見ると沢山の職員の中に一人、圧倒的に綺麗なエルフの女性が受付をしていた。




…確かに可愛い。




1つ、2つ年上だろうか……長く尖った耳、流麗な顔立ちに、清廉潔白で潔癖と知られるエルフは森妖精と言われていて多くが森の奥で暮らしている。外に出る多くのエルフは殆どが追放され、髪の色が黒く染ったダークエルフらしいが、カウンターにいるお姉さんの髪と瞳は綺麗な新緑の色だ。




エルフの特徴通り、対応している異性の冒険者に対する視線は淡々としていて何の感情も乗ってない。




今も可愛いけど、笑ったらもっと堪らないんだろうな。




凛と済ましている彼女の顔に見蕩れているとふいに、目が合った。




「次の方どうぞ。」




僕が見蕩れている間にいつの間にか前の人達は他で受付をしていて、表情と同じく淡々とした声で僕を呼ぶ。




彼女に見詰められ、僕は段々と鼓動が早くなるのを感じた。




冒険者には最初担当が付く。手取り足取り冒険者に様々知識を与え余程相性が悪くなければほぼ毎日、冒険者がある程度一人前になるまで顔を合わす。そして中には一人前になってからも冒険者が希望すればそのまま担当して貰う場合もあり、……僕が冒険者でいる限りずっとパートナーという事だ。つまりは




頭の中でチャペルの鐘がなる。




僕で、いいんだろうか。カクカクと受付のカウンターへ向かう僕はまるでバージンロードを歩く気分だ。




駄目だ、直視出来ない。と俯き、時間をかけ彼女のいるカウンターの前に辿り着く。そして、思いっきり深呼吸を3回すると、




「クロウド・ルイーチ、一生涯(いっしょうがい)よろしくお願いしまぁぁぁぁす!!!」




と元気よく愛の告白(プロポーズ)をし、そのまま勢い良く頭を下げ、手を差し出す。

どっくんどっくん、と心臓が脈打つ。沈黙が怖い。

どれくらいそうしていただろうか、そっと手がにぎりかえされる。




ほっそりしていたように見えていた掌は、意外にも刀を振り回す戦士のように固く分厚い。

返事がないのはきっと、緊張しているからだろう。

頭を下げているから彼女がどんな表情をしているのかは分からないが、きっと手を握り返してくれたということは、脈ありだ。笑顔だったら嬉しい。




これから君を笑わせる為に僕、頑張るから…!




そう意気込んだ僕は、





「こちらこそよろしくな、少年!」




その言葉でピシリと固まる。

野太く、楽しげな男性の声。

そして…なんだか聞き覚えのある昨日(つい最近)聞いた気がする声だ。




恐る恐る顔を上げる。





逞しい腕に肩。輝く白い歯が、こんがりと焼けた肌に映えてる。にこにこと笑う姿は昨日とまるで変わらない。





僕が顔を上げた事に気付いた彼は、




「昨日も会ったな!少年!」




昨日公衆浴場で出会った、筋肉むきむきのお兄さんでした…。






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