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河童様  作者: なぁ恋
龍牙咆哮
70/70

 

*********


 

 


た ま ゆ ら。


「―――……ゆら! まゆら!!」


暗闇から光が差す。

目に映るのは、私の龍。


「……響夜くん」


彼の心配げな視線に、私だけが過去視をしたと解る。

短い記憶。

あのまま龍珠に成った。




引っ掛かる事柄がある。

気になる事がある。


「優良。私は最初の“龍珠”けど、響夜くんはあの時の龍じゃない」


違和感の答え。

  ..

私は白龍の龍珠。


「そうね」


優良は小さく頷いて、右手を上げた。

そこに見えたのは“土色の炎”。優良の緑色の肌に、炎を形取った螺旋の刺青が右手首から首下まで浮き出ていた。

河童には似つかわしくない“火”。


「この子はあの時服従させた雷の一人。

言い表わすならば“火龍(かりゅう)”。

イザナミの産んだ雷は、人界の空気に触れると変化する。その姿は龍と呼ばれる者に類似していた」


そして?


「たまゆらは望んで龍珠に成ったと思うのは間違いだ」


いいえ。

  .....

私は魅入られた。その美しさに、神々しさに。


「―――“魅入られる”とはよく言ったものだ」


優良の説明に聞き入る。

 

 

 

「身の内に入られた。が正しい。

.....

身入られた。だ。

雷は皆オスで、どんな形であれ女性を必要としているのです」


確信をもって話す優良は、自分の右手を見て寂しげに微笑んだ。


「産んだのは私。

永くを身の内に彼らと共に居た。だから解るの。

私の右手は“土の雷”。

優星は額に輝く龍珠を頂いた。貴女の内には、頭の“大雷”。

大雷の落ちた先が水の龍を祭る神社だった為に、その信仰に触れ白龍の姿をその身に映したのでしょう」


「俺の、父親が―――イザナミの子ども?

ならば、母の眠る龍の入り口は……龍の棲家は地獄?!」


背後に居た響夜くんを見上げると、顔色が見る見る蒼白になって、今にも倒れそうに見えた。

 ..

「龍羽! 貴方は私の龍」


強く想う気持ち。

          ....

最初の白龍には確かに流されてしまった気がする。


一瞬で魂を掴まれた。


「そうです。でも本来の貴女はじゃじゃ馬で……失礼。何をも恐れぬ強さがあった」

 

 

じゃじゃ馬。に笑みが零れた。


そう。私は自分の納得出来る事じゃないと行動しない。


「だから、貴女の魂は龍珠から簡単に抜け出られたのよ」


優良が語るのは“まゆら”の誕生の事。


「お腹に宿る命、その魂は神社から抜け出た玉響のものだとすぐに解った。

これは運命だと……雷に、イザナミに関わった時から運命付けられた事」


今回で三度目の転生。


「響夜くんのお母さんがあの状態になったのはどうして?」


何となく、私のせいだと思う。


「それは……」

口を開いたのは母さんだった。

「“怒り”龍珠に触れたあの女性は、玉響に似た魂の持ち主だった。

だから龍は姿を現して逃げた娘を捕え、呪縛する為に種を植え付けた。

けれど、龍珠の力を持たない娘は、呪いのみをその身に受けて、“不死の呪”に冒された」


母さんの苦痛の表情に心配になる。

でも、父さんが母さんの肩を抱き寄せると、母さんの表情が和らいだ。


「家は古い程に座敷わらしに記憶を視せたがるからね……それで家も楽になるんだよ」


それがどんな辛いものでも。受け留めるのが座敷わらしの義務の様に。

 

 

 

右くんが神社に滞在して居るから母さんは判ってた。


だから私と響夜くんについて言葉を濁したのね。



「龍羽神社は岩戸が在る場所に出来ているの」


優良の言葉は衝撃的で、でも納得もしてしまった。


「黄泉の、地獄の入り口になる岩戸。

私を捕らえに来た雷は、玉響を捕えた事であの時力を使い果たした。

眠りに付いている間に私が壁を作ったから、表に出る事はなかったの」


「だけど、偶然私に似た血族で在る娘が龍珠に触れた」


優良は頷く。

「龍珠は玉響の体から出来ている。だから壁に囚われる事なく直接道が開いたのだろう」


母さんが言った様に怒りによる暴走で響夜くんのお母さんがあんな状態になったのなら、それは私の責任。


恐怖が体を震わせた。

本当なら私が受けたかもしれない出来事。


「悲劇だ」

響夜くんの声が低く響いた。

 

 

 

*響夜side*

 


忘れられない。

自分が生まれた瞬間の苦痛。


「あの悲鳴を覚えている。母の腹に根付いて直ぐ、俺の自我は生まれた。

母の心は、恐怖が支配していた」


俺は、母にとってただの膿。


小さな塊が瞬時に大きく成長し、母胎の優しさや温もりを感じる事なくその母体を壊し産まれ出た。


開いた視界に映ったのは、少女の面影を残す母の恐怖に染まった瞳。

耳についた枯れた悲鳴は未だに頭に木霊して居る。



生きた屍の様になった母の姿を見る度に、自己嫌悪に陥る。



「「“龍の宝珠”を売ろうとしたそなたの罪は永劫に続く。その罪が解かれる時は、そなたの子が立派に成人し我龍の姿を持ち得た時」」



あの言葉を覚えている。


奴は、しっかりとそう言った。

なら、龍珠の乙女が母ではないと理解していた?

心の内など誰にも判らない。


だが、“座敷わらし”の言った事が本当なら、優星と優良の過去が本当なら。

   ..

優星が白龍の“龍珠”だと言うなら……優星が奴と出会ってしまったなら―――優星は……。

 


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