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河童様  作者: なぁ恋
龍の呪い
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*優星side*



ゆづの事でショックを受けて、更に響夜くんの“妖怪”を知った様な口振り。


そして突然口を閉じて、静かに考え込んでいた。



響夜くん。

同好会で不思議話を集めてたから詳しいのかな。とか。神社の家の子だから余計に判る事があるのかな? とか。

色々考えた。考えていて、ふと思い出した。


龍羽神社。響夜くんの家。私はお祭りが好きだった。


“夏祭り”

あの階段を彩る提灯の灯火が好きだった。

キラキラ光る空のお星さまみたいでワクワクした。


なのに何でかな?

おばあちゃんが死んでからあの長い階段を上がる事が出来なくなった。


あれ程大好きだったのに、だから響夜くんを見送るのも階段下まで。



「響夜くん?」


響夜くんの表情が険しくなった。だから名前を呼んだ。


そして、重なった視線に、衝撃を受ける。


目が普通と違う!

眼球が黒くて瞳が白い。


荒い息が傍から見ても判る。上下する肩。

 

「……ま……ゆら」


下の名前を呼ばれた。

どきん。とする。同時に額が熱を持つ。


「痛っ!?」

 

 

痛い。

痛い!


「ダメだ!」


響夜くんの叫ぶ声と、私の額の痛みが響き合う。



心の奥にある何かを思い出しそうで、目を瞑る。




私は大好きだった神社に祈りに行った。

おばあちゃんが倒れて心配で、祈らずにはいられなかったから。


ゆづを置いて夜中に一人で出かけた。


長い階段を上って鳥居をくぐる。

首に下げた財布から貯めてた小銭を出してお賽銭を投げ、頭を下げる。


鈴は神社の人が起きちゃいけないから鳴らさずに、それを何度も繰り返して……そして、何度目かの時、足を滑らせて階段の上りか下りかで、落ちそうになった。


そうだ。その時に、この目を見た。

普通なら黒目なのが白くて周りの眼球が黒い。

それに、綺麗な白い髪。


まるで溢れる様に思い出すのは“龍神さま”の事。

龍羽神社で出逢った龍神さまは、響夜くんと同じ顔をしていた。


それに、

そうだ。


水溜まりに寝転んだおばあさん。

痛いと泣いていた。


それから、

それから。

 

ああ! 


「痛いっ!」

 

額からパリパリって音が響いた。


 

 

*優月side*



目の前で起こってる出来事に息も吐けない。

先輩の雰囲気が、姿が一変して狭い離れが壊れそうな音を立て軋んでる。


姉ちゃんは先輩と視線を合わせたまま目を見開いていた。

少しの間の後、姉ちゃんが頭を抱えて悲鳴を上げた。


「奴は“龍”ニャのか?」


黒猫が僕の肩に飛び乗り、首に巻き付いて耳元で呟いた。


「龍?」


「そうだ。響夜は龍と人間の混血」


僕を守る様に背を向けた朗が教えてくれた。


「詳しくは知らないが、混血龍が成人する為には人間が欠かせないと聞いた事がある」


「“龍羽神社”の息子かニャ?」


朗も黒猫も知ってるみたい。でも心配なのは姉ちゃん。


「姉ちゃん!」


「痛ぁい!」

叫んだ姉ちゃんの額がキラキラ光った。


「ダメだ!」

先輩が拒絶する言葉を発するも、光は先輩に向かって真っ直ぐに伸びた。

 

 

姉ちゃんの額の光を浴びた先輩の姿か更に変わる。


「ォオオアァアア―――!!!」


雄叫びと、短い黒髪が白髪に変わり、姉ちゃんが宙に浮かぶ。


浮かんだ姉ちゃんの体のシルエットが丸い珠の形を作ると、先輩が苦し気に息を吐いて重い口を開いた。


「ダメ……だ。河童、河童よ! 止めてくれ!!」


それが合図の様に朗が動いた。


朗が両手の平を差し出すとそこから“水玉”が現れる。それは瞬時に大きな玉になった。


さっき黒猫に使った玉。


それを先輩に向けて放った。


音も立てず水玉が先輩を包み、同時に姉ちゃんの体が床に落ちた。


「姉ちゃん!?」


駆け寄ると、ぐったりとした様子にドキッとした。

けど、小さな寝息が聞こえてホッとする。


あれ?

額の光。それは、ただ光っただけじゃなく、何か出来ていた。


よく見ると、魚にある様な鱗に見える。

 

綺麗な虹色に光る鱗。


これは何?


先輩を振り向くと、水玉に全身を包まれた状態でこちらを見ていた。

 

 

息が出来ずに苦しんでた黒猫と違って、苦しんでる感じなんかなくて……?


「白龍は水に属した妖怪だからニャ。俺みたいにならないんニャ」


「朗と同じ感じ?」


『違う! 河童は癒すが、龍のは呪いだ!』


水の振動でか先輩の声が震えて聞こえた。


「呪い?」


朗が訊く。


『“呪い”としか思えないっ―――』


パンッ!

高い弾ける音を立てて水玉が割れて、水が畳に吸い込まれる様に消えた。

出て来た先輩は水中に居た筈なのに服やどこも濡れてなくて。

そんな状態を見れば頷くしかない。


河童や化け猫が存在するなら龍だって居る。


でも、呪いって?


「優星は、大丈夫か?」


先輩は何故か震えてる様に見えて。

僕の腕に抱いた姉ちゃんを真っ直ぐに見る先輩は苦い顔をしていた。


何だか悲しげに見える。


「大丈夫です。眠ってるだけですから」


溜め息を吐いた先輩の肩から力が抜けるのが判った。


「だが。“鱗”が現れたのだろう?」


頷くと、それが龍に呪われた証だと目を伏せた。

 


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