表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とあるビルオーナーの宇宙戦記  作者: ヨシペイ。
第1部 宇宙漂流と幻影都市
7/66

第1部 7話 『ラシュリーの過去と正体』

 葬儀が終わって、俺が最初にした事は捕虜達の尋問でもなく、ラシュリーに事情を聞く事でもなく、明日一日は休日にすると言う宣言だった。



 だって、ビル生活始めてから、休日って一日もなかったからな。

 二十四時間労働上等!

 超絶ブラック、イエー!

 ……ってなわけで、休みにしたわけなのだ。色々あったから、整理する時間をみんなにあげたとも言えるな。



 そして久々にぐっすり寝て、起きて早々、何故かアンリエルに捕まってこの状況である。

 全員で食事が出来る様に用意した大卓に、向かい合って座っている。



『おい、マスター! 用事がある』



 なーんて、勢い良く捕まえて来た癖に、向かい合って座ったらずっーとモジモジしてやがる。

 なんなんだ、一体?

 アンリエルは顔を真っ赤にして、こっちをチラチラ。あっちをチラチラ。



「おいおい、いい加減、なんの用事か言ってくれなきゃ話が進まねぇぞ」

「わ、わ、わ、解っている」

「お前……ひょっとして緊張してる?」

「そ、そ、そ、そんな事あるか。な、な、な、何を馬鹿な」

 そんな事あるじゃねぇか……。



 ここで俺は少しだけ分析を働かせる。

 さっ! 隙を見て目を合わせようとすると、逸らされる。

 さっ! まただ。

 試しに目を合わせないで会話を試みる。



「んで、だから、用事ってのは一体なんなんだよ?」

「実はな、この世界では、普段着はどの様な物があるのか教えて貰いたいのだ」

 お、普通に話せるじゃん……普段着だぁ?

「普段着なんていいよ。そのままビキニアーマーでいろ」

「馬鹿な。これはあくまでも、神聖な戦闘用の装束なのだ。本来なら、普段は着用してはいけないし、また着用するべきものではないのだ」



 ジロリ。

「そ、そ、そ、そこで、こ、こ、この様な物を用意した」

 ペンと紙?



 しかし、目を合わせると明らかに挙動不審になるな。普段はツンツンしている癖に、いざとなったらデレる。これはあれか? あれなのか?

 少々強引だが、俺はペンと紙を受け取るフリをして、さっとアンリエルの手を握った。

「あばかやたらや!!」

 なんか、言葉にならない悲鳴を上げた後、アンリエルは完全に起動を停止した。頭から煙出てるなー。

 これはあれですね。ツンデレを超えたツンデレ! ツンデーレと名付けよう。

 ……くだらねーか。俺の中でアンリエルの評価がだだ下がった瞬間である。



「も、もう、あの様な事はしないな? しないよな?」

「だから、しねーよ」

 えらく怯えている。一向に話が進まないからな。この件は、これ以上は触れまい。



「普段着ねぇ。女の子は色んな服着るからなー。そんなもん、好みによるんじゃないか?」

「勿論、そう言う物だとは理解している。だが、ワタシは基本となるスタンダードな物を決めたいのだ」

 学校の制服みたいなもんかな?

 ピコーン!

 ここで俺はハッとする。好みの服を着てもらった方がいいんじゃね? と。

 さらさらさらーっと。

 よし。これで、いいだろう。



「これは?」

「出来る女の戦闘服みたいなもんだな」

「おお、そうなのか! それはワタシにピッタリだな!」

 よし。ちょれー。

 心の中でガッツポーズ。



 俺が書いた服装は、タイトスカートにシャツに、黒ストにヒールと言う、エロスな女教師か、若しくは挑発するセクシー秘書をイメージした物だが、勿論、何をイメージしたのかなどアンリエルには言わない。言うはずがない。

 勿論、シャツのボタンは開け気味である! ババーン!!



「動きにくそうだな……」

「馬鹿野郎! 自らに枷をつけられない奴が、成長出来るわけないだろうが!」

「そ、そうか! 確かにそうだな! うん」

 こう言うのは言い切ったもの勝ちじゃないかと、僕は思うんだなぁ。

「よし。これは貰っていくぞ」

「どうするつもりなんだ?」

「これから、この服装を意識して霊装を編むのだ」

「れいそう?」

「自分の中の魔力を編み上げる様な物だと理解すれば良い。お前の言う、そのビキニアーマーも霊装の一種だ。強度が桁違いだがな」

 そう言って、笑顔を見せたアンリエルは去って行った。集中が必要だそうだから、どっか空いてる部屋でも見つけて、座禅でも組むんじゃなかろーか。

 くくく。セクシー衣装とも、知らんで。

 気分の良くなった俺は、他の連中の様子も見てみようかと言う気になったのだった。





 ゴブザとゴブツは折角の休みだって言うのに、戦闘訓練なんかしてやがった。

 でも、そっとしておいてやる。

 一番悔しかったのは、あいつらだろうからな。いても立ってもいられない心情があるのなら、成長に使うのが一番いい。健全そのものだ。



 マキシムは木彫りの彫刻作りをしていた。たまに、役に立つ立たないを基準としない物を作ると、心が落ち着くんだそうだ。

 へー、そんなもんかねぇ。



 ワチは……。

「つまみ食いばっかしてんじゃねー!」

「あうー、守様。ごめんなさいなのですー」

 ちょっと様子見したら、これだよ。あんまりにもワチっぽくて、説教した後笑っちまったけどな。



『だから、見つかったら大変だと言ったでやすのに』

 そう言ったタヌキチの口にも食いカスがついてたんだが、こいつはワチと違って要領が良いと言うかなんと言うか、いずれ決定的な証拠を握って、バッツリやってやろうと思ってはいる。



『そう言えば、守さん。オーナーポイント増えてないでやすかね?』

「は? 増えてない……いや、増えてるな」

 昨日見た時は、確か残り860ポイントであったのに、それが2860ポイントになっている。

『時折あるんでやすよ。ビル経営において大きな障害とか、みんなで乗り越えた時に、ボーナスポイントって言うんでやすかねぇ。そう言うポイントが入る事があるでやす』

「基準なし。気まぐれポイントって事か?」

『相変わらず、身も蓋もない言い方が好きでやすね。まぁ、そう考えて間違いではないでやすね』

 2000ポイントか……。

 折角ならみんなに還元出来る形で、パーっと使ってしまっていいんじゃないかとも思う。元々無かったものだからな。

 ポイントの使い道を考えながら、俺が次に向かった先はラシュリーの所だった。



 あの戦闘でアンリエルに浄化されたオンヤは、未だ意識を失ったままだった。ラシュリーは、ベッドで寝ている彼にずっと付き添っている。

 貸し与えた部屋に入ると、ラシュリーだけでなく、真田丸も一緒にいたのは意外だった。



「ラシュリー殿だけでは、少しばかり心配でしたので、余計なお世話とは思ったのですが、付き添いをさせて頂いておりました」

 流石は真田丸である。

 確かに、ラシュリーは落ち込んでいた。

 こういう時、別に無理に喋らなくてもいい。けど、誰かとは一緒にいた方がいいと俺は思う。一人でいて一人きりで、自分を責めて、それで一体どうなる?

 なら、誰かといて、誰かにすがったっていいじゃないか。少なくとも、俺はその心情を責めたりはしない。

 真田丸の事だ。

 折れた茎に括られた添え木の様に、きっとただ寄り添っていたのだろう。それは確実に、ラシュリーの心の支えになった筈だ。



「まだ、目を覚まさないのか?」

「うん……。アンリエルさんの話だと、怪我は全部治療しているから、後は精神的な物なんだって。だからいつ目覚めるかは、オンヤ次第みたい」

 あの襲撃以来、ラシュリーは喋る様になった。けど、まだそれが、彼女らしいのかって言ったらそうじゃねーんだろうと思う。



 何か、毒針みたいな物が心の中に刺さっていて、それが彼女らしさって物を封じ込めてしまっている気がする。

 俺は手を伸ばして、頭を撫でてやった。

 ラシュリーはそれを受け入れてくれたのだから、ある種の信頼関係は築けたんじゃないかと思う。

 え? ビキニアーマー発言の時に、白い目で見られてたって?



 それはそれ!

 これはこれだ!!



 ……うむうむ。

 真田丸もいる事だし、良い機会だから話を進めさせて貰うかな。いい加減、ラシュリーの事情、その背景を明かして貰う時だろう。

 俺は椅子を持ち出し、壁際に佇んでいた真田丸の分も用意した。

「ラシュリー」

「何?」

「俺は今が、お前やオンヤの事を話して貰ういい機会だと思う。今日ここに至るまでに何があったのかって事をな」

「ワタシや、オンヤの事……」

「話せるか?」

 ラシュリーはじっと俺を見つめていたが、やがてポツリポツリと語り始めた。彼女の物語を……。





 ラシュリー。

 偽名である。



 本名はメイシャ・ライガール。小惑星アラワシを統治するライガール王国の王女であった。

 ライガール王国は特殊な国であった。国民達は地球で言う所の中世の様な暮らしをしており、地上の更に上に、広大な宇宙が広がっていて、そこに暮らしている人々がいる事も知らない。

 宇宙との繋がりを秘匿し、国民全員を支配するのは、ライガール王家のみの特権とされているのだ。逆に言えば、王家はその知識の差、力の差で国を統治していると言っても過言ではない。



 メイシャの父、エイデン・ライガールはその状況を憂い、国民に広く宇宙を解放する計画を立てていた。

 だが、利益を享受する者がいれば、その環境を守る者もまた、利益を享受する者である。

 エイデン・ライガールの高い志を阻んだのは、その実の弟、ホルデン・ライガールであった。ラシュリーにとっては、叔父に当たる人物である。



 突然発生したクーデター。



 ホルデン派が、エイデン国王以下、王位継承権が高い者達を惨殺。混乱の中、王女であるメイシャは王妃と共に、辛くも宇宙へ逃げ延びる事に成功する。

 その指揮を取ったのが、王家親衛騎士団、団長のオンヤ・ザグレブであった。



 宇宙に逃れたメイシャ達であったが、そこにはホルデンと契約した宇宙海賊ウェスティン・ラパーザが待ち構えていた。

 激しい攻撃を受け、王妃とオンヤはメイシャ達を逃がすため、囮となってウェスティンの手に落ちたのだった。

 だが、次にメイシャを襲撃にやって来たのは、その当のオンヤであった。激しい攻撃の中、メイシャは生き残った者達から、退避カプセルへといざなわれ、虐殺の艦内から脱出する事に成功する。

 カプセルで強制的に眠りにつかされる前に、メイシャは自分が乗っていた船が爆発する音を聞いた。



 父は死に、また同族もほとんど殺されてしまった。頼りにしていたオンヤは死神となり、メイシャを守ってくれる者は一人として居なくなってしまった。

 オンヤと一緒に、ウェスティンに下った母はどうなったのか……。

 メイシャは怖くて聞くことが出来ない。

 だから、オンヤには目覚めて欲しいが、また同時にそれと同じくらい目が覚めて欲しくないのだった。

 メイシャは語る。

 自分は臆病で卑怯で、何と未練がましい人間なのか。オンヤを殺すでもなく、無理矢理叩き起こすなどと言う事も出来ず、それでも離れる事も出来ず、目覚める事に怯えている。





「なぁ、守。ワタシは一体全体、この様な目に合う程の深い罪を犯したのだろうか? きっと犯しているのだろうな……。今この深い闇の中にいる事こそ、ワタシがワタシでいてはいけない。そう示している事だと思えて仕方がないのだ」

 と、涙を流して、じっと見つめてくるラシュリーに、俺は何て答えていいのかわからなかった。

 ただ立ち上がり、頭を抱えてギュッと抱きしめてやる。

 しばらくすると、すすり泣きから、号泣に変わったラシュリーの鳴き声だけが部屋に響き渡っていた。



 刺さっていた毒針はとんでも無いものだった。



 ラシュリーの年齢は一体幾つだ? 俺の見立てじゃ、十歳前後だろう。それがこんな大人びた喋り方をして、自分自身の存在理由を自分自身と他人に向かって問いかけていやがる。

 大人達が寄ってたかって、ラシュリーの心をすり潰す為だけに行動しているみたいだ。

 これじゃ、ラシュリーは笑えない。

 十歳なら十歳らしく、遊んでいりゃいいんだよ。王族だったら王族特有の嫌な事とか、学ばなきゃならない事もあるのかも知れねぇ。



 けど、同年代の女の子同士で好きな男の子の話をしたり、一人部屋に閉じこもってドラゴンでもクエストしてたって、勿論いいだろーよ。

 遊んで笑って、友達を作って、そんな生き方を、今この娘に与えられない様なら、俺はきっと俺を許せねぇ。

 なら、辛くてもこの一歩は押してやらなきゃ駄目だ。



「おぃ、オンヤ。わかってるぞ。もう、目は覚めているんだろう?」

 俺の言葉にラシュリーはびくりと肩を震わせたが、彼女は俺の胸に顔を埋めたまま、オンヤを振り返ろうとはしなかった。

 オンヤは静かに目を広げ、俺を見つめた。

 ほら、起きてんじゃねーか。



「聞きたいのは一つだけだ。ラシュリー、いや、お前に取ってはメイシャだっけな。メイシャの母である王妃のその後は、一体どうなったんだ?」

「最早、黙っておく事は出来ないな……」

 そして、オンヤは顔に苦悩を滲ませた。

「王妃様と共にウェスティンに下った私の決断は、ウェスティンの手下になる事だった。それがウェスティンの望みであり、あの時、唯一仲間達を助けられる手段であったからだ」



「手下になる? 洗脳の間違いだろ?」

「そうだ。俺は騙され、操られた。仲間達を殺し……そして最後には王妃様までも」

 予想していたとはいえ、ラシュリーの体の震えから、これが彼女に取って最も聞きたく無い事実であった事は間違いない。

「だけど、お前の意思じゃ……」

「俺が! 殺したのだ。俺の意識があるかないか。そんな事、関係があると思うか?」

 もし、俺がオンヤの立場なら、関係ないと言うだろうな。操られた自分が悪い。全ては自分の責任だってーな。



 けど、俺は今、残念ながら俺の立場なんだよ。誰かの所為なんて、くだらねぇ事言ってんじゃねぇぞ……。

「オンヤ。俺に、お前の気持ちはわからねぇよ。けどな、お前もラシュリーも、このままってわけにはいかねぇぞ」

 そう。

「オンヤはどうしようもなかった頃の自分自身を責めて。ラシュリーは自分を見失った奴の責任を責めて。それで前に進めるのか?」

 過去にだけ目を向けていても何にもなりゃーしねぇ。

「二人共耳かっぽじって、良く聞きやがれ! いくら後悔したってなぁ。過去は取り返せねぇーんだぞ!」



 オンヤも、ラシュリーも、俺の言葉に答えない。反応すらない。

 表面上は、な。

 ま、今の段階で俺も答えなんか求めちゃいない。



 前に進む、か……。

 ため息出ちゃうよね。

 重たい話過ぎるだろ。

 しがない、とあるビルオーナーに一体全体どうしろってんだか。やれやれ。



「真田丸」

「何でしょうか、我が主よ」

「取り敢えず、みーんなで風呂入ろうかと思ってんだけど、お前はどう思う?」

 ニヤリと笑って見せてやる。

 こう言う時は、取り敢えず笑顔だろ。



 極めて珍しい事だけど、真田丸は目を大きく見開いて、キョトンとしてたな。

 さてさてぇ! これから、俺もどうするか考えていかねぇーとな。





□現在のオーナー状況

職業:駆け出しビルオーナー。

オーナーポイント :2860ポイント

配下:幼女1、タヌキ1、老エルフ1、ムキムキドワーフ1、ゴブ2(内ゴブリンリーダー1)、ビキニアーマー1。

ビルサイズ:3フロア。小さめ。

備考:この先の道は四方に分かれている。どの道を選ぶのも貴方の自由だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ