第2部 30話 『守の奥の手!』
俺が差し出した手を、静香は控えめに握り返してくれた。静香の性格が良く現れていると、俺は苦笑したものだった。
そうして、源内静香は俺達の仲間入りを果たした。エイム以外の人との付き合いを知らなかった静香なのだから、みんなと打ち解けるには時間がかかりそうではある。
翌日、俺達はとうとう惑星アラワシの地表に降り立つ事が出来たのだった。
「ほーら見ろ。やっぱり軌道エレベーターじゃなかっただろーが」
若干どやって、言ってしまったが、誰でも予想がついた事だったかもしれない。
エルムの生活空間は、宇宙空間の中に巧妙に隠されていた。
空間を捻じ曲げられる奴が、地表までの正規ルートなど使う理由などないだろう。第一、軌道エレベーターを使うのだとしたら、地表までの部分を隠す方が遥かに大変だ。
「ま、オーバーテクノロジーって事なんだろうけどな」
「はい。エルム様も、茜様からあの場所を見せられた際に、この星には過ぎた力だと言ったそうです」
この発言は源内静香のものだ。
俺の少し後ろをそっとついてきている。
あー、なんでしょうか! このわきまえていらっしゃる感じ。んー、圧がないんですよ。自分いますよーって押し付けが全然ないのだ。
「ご主人様、ワタクシは今のお話完全に理解しておりますわ。お見事な推測。流石はワタクシのご主人様ですわ!」
「ワ、ワタシもなんだか凄い事を言ったのだと理解しているぞ。何せ、このワタシのマスターなのだからな!」
「張り合うな、張り合うな! 大丈夫だから! お腹いっぱいだからそー言うの」
俺がヨルコとアンリエルと戯れていると、静香は楽しそうに笑っている。笑う時に口元を隠す様子も奥ゆかしい。
なんか、いいなぁ。
こう言うの。
「ちょっと守。一人でニヤニヤしないでよね。気持ち悪い」
相変わらずラシュリーは手厳しい。
「なんだよ。いきなり口が悪いじゃんか。王女様モードはやめたのか?」
「守が嫌がるから、あの、その、やめてあげてるんでしょうが」
「当たり前だ。俺にとってお前は、ただのラシュリーなんだからな。王女面して偉そうにするのは許さん」
「偉そうになんてしていないじゃない」
「そうか?」
まぁ、年齢的には、反抗期か思春期かって所だろうから、難しいお年頃なんだろうな。
チラッ。
ほら、顔見ると顔を赤くして露骨に目を逸らすし。思春期確定でいいんじゃないですか?
「ここはどこなんだ?」
静香の指示に従って何やら不思議な台の上に乗せられた俺達は、次の瞬間には違う場所に転送されていた。
周りを見渡すと、どこかの遺跡の様だった。静香の説明から、ラシュリーとオンヤが推測し、王都から少し離れた場所にある建国王の墓所と言う、遺跡の内部であろうと言う事がわかった。
静香の話だと、昔はエイムの別邸があった場所だと言うが、千年経てば遺跡になっていたと言う事らしい。
入場料を取る博物館とかじゃなくて良かったな。入館者のど真ん中に現れるとか、相当ダサいし。
その遺跡から、抜け出して外の景色を見て、なるほど、この星の技術レベルは衰退していると感じた。
遠くに街並みが見えていたが、超高層ビルなんてものはまるで無く、自然豊かな大地が広がっているのがわかる。
「王都に急がないといけないわね」
「王都まではどれくらいなんだ?」
「一日はかからない筈だ」
ま、ここまで来たら、王都への案内は、ラシュリーとオンヤ任せでいいだろう。
だが、時間をかければ、俺一人でも王都へはたどり着けるとは思った。見上げれば、遠くに宇宙にまで伸びる線が見えていたからだ。
「へぇ、地上から見上げると中々迫力があるもんだなぁ」
元宇宙海賊のバッソは、地上から軌道エレベーターを見た事が無かったらしい。
その場を後にする前に、遺跡の前に随分と放置されているであろうエイムの銅像があった。静香はそれをじっと見上げていた。
「静香。エイムの事は全部が終わったら、ちゃんとするさ。また、ここに戻って来よう」
「……はい。守さん」
エイムの遺体はあの異空間に残してある。
静香が気にかけるのはもっともな話だ。もちろんこの事は、子孫であるラシュリーも気にしている。
二人はエルムの事を、ちゃんと埋葬してあげたいのだ。
その為には生き残らなければならない。
決意を胸に、俺達は王都に向かう。
……と、思っただろう?
甘い甘いあまーいっ!
俺は直ぐに全員を呼び止めて、ラシュリーとオンヤに質問をしたのである。
「なるべく王都に近くて、人が来ない場所はないか?」
そしてやって来ました。
ここ!
……。
「……どこ?」
「風の谷だ」
なんだ。その美少女が出てきそうな名前の谷は。
「王都からは半日。一番近い村からでも数時間はかかるわ。特に何もない場所だから、滅多に人はやって来ない筈よ」
ふーん。
「ラシュリー。ここって誰の物?」
「え? 誰のって……」
「ラシュリー様。この場所はどの貴族の所有地でもありません。国の直轄地となっております」
「ですって」
ラシュリーはまるで、自分が回答したみたいな顔をしているが、オンヤの手柄をさらっと自分のものにしている。
流石である。
「ラシュリー。頼みがあるんだが、お前がこの国を取り返したら、この場所を俺にくれ」
「どう言う事?」
「真面目な話なんだよ。この谷を俺にくれ」
「……いいわ。今のところ、アタシの一存でしか無いけれど、それで良ければ」
答えまでに間があったのは、俺のお願いを本気で受け止めてくれたからだ。ラシュリーの一存? 大いに結構。
俺は彼女を信用している。
「それでいいさ」
ラシュリーの許可を得た俺は、アンリエル達に指示を出して、丁度良い場所を探して貰う。
え、なんの場所だって?
ケケケ。それはこれからわかる。
「おう。守オーナーここなんかどうだ?」
ふむ。地面は平らで、地盤も安定してそうだな。
「バッソ。中々良い場所だ。いいだろうみんなを呼んできてくれ。この場所に決めた」
「なぁ、守オーナー。早く王都に行かなきゃいけないんだろ。こんなところでのんびりしていていいのか?」
「のんびりしてるわけじゃないし、これは必要な事なんだよ」
バッソを含めて、俺はこれから何をするか、みんなに説明をほとんどしていない。
何故か!
驚かしたいからだ!
ババーン!
本当はもう少し、王都に近い方が良かったんだがな。この場所もそう、悪くはあるまい。
さぁて、始めるかい! 俺の背後にみんな集まっており、背中に視線をバリバリ感じる。
いいねぇ。俺の見せ場です。
ここで、おさらいである。
俺の特殊能力はオーナーポイントの消費であるが、基本的にビルの内部か、ビルのすぐ近くにいなければ使う事は出来ない。
だが、物事にはなんだって例外ってもんが存在するのだ。
「タヌキチ!」
『はいでやす!』
「メインビルの3階部分を、新たなビルの1階部分としてフロア分割をしてくれ」
『了解でやす。ぽーん!』
俺がそう叫ぶと、みんな目を丸くしていた。
そう! これが今回の俺の奥の手だ。つまりフロア分割こそが、その例外と言うわけである。
何故、こんな事が出来るのか?
それは俺が、この地に向かう前に、ポイントを使用して新たな力を得ていたからだ。
その能力とはこれ。
『フロア分割(オーナー単独)』。
オーナー単独である。凄いのである!
2万ポイントもしたんだぜ。この能力を取得したお陰で、俺はいつでもビルを分割する事が出来るのだ。
はっーはっはっ。無敵! ……俺自身は強くなってないんだから、無敵じゃないだろって? わかってるよ。雰囲気ね、雰囲気!
単独でビル分割が出来る様になった俺と、そして今行ったフロア分割で1万ポイントを消費した。合わせて3万ポイント。
俺の目の前にメインビルの3階部分が出現する。
これで、最後に追加に1万ポイントを消費して、俺の奥の手は完成する。
「転移EVを追加。メインビルと分割ビルBを繋げてくれ」
『かしこまったでやんす!』
そう。これで、宇宙にある俺のメインビルと、この分割ビルBが繋がるのだ。
するとどうなるかと言うと!
「守様〜。『ワチが来た』です!」
分割ビルBからワチが飛び出して来る。
その後ろから、真田丸やゴブザ達、メインビルに待たせていた俺の部下達が続いていた。
□現在のオーナー状況
職業:ほんのりモテビルオーナー
オーナーポイント :16415ポイント。
配下:幼女1、タヌキ1、老エルフ1、ハイゴブリ1、ハイゴブシャ1、ゴブ17、ビキニアーマー1、コロボックル14、XYZ各1、カースクラー商会の面々3、暴風壁1、ツンデレ海賊(男)1、天才科学者の落とし子1。
今の協力者:王国王女、王国騎士団長。とある商会長の孫娘。
ビルサイズ:2フロア。
分割ビルA(ラフシー商会ビル):1フロア。
分割ビルB:1フロア
備考:貴方はビル面子達と、無事に合流を果たした。




