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とあるビルオーナーの宇宙戦記  作者: ヨシペイ。
第2部 残虐公爵とライガール王国
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第2部 22話  『オーナーポイントの秘密』

 階段を上がると正面の窓から、宇宙が見える。

 彼女はその前に、立っている。

 俺は後ろから近寄って、横に並んで立ってみる。



「なんか面白いもんでも見えるのか?」

 ビルで放り出された当初ならいざ知らず、宇宙漂流と宇宙航宙を経験して来たので、この景色も流石に見慣れる。



「特に何も見えないわ」

「ふーん、そうか」

 あれ? 見慣れたと思っていたけど、改めて見るとやっぱり宇宙ってすげーなぁ。



 あ、そうか。海みたいなもんなんだな。

 どんなに見慣れたと思っても、人間なんて簡単に飲み込んでしまう広さがあるのだから、そこにはいつだって感動があるんだ。



 きっとラシュリーもその懐の深さを感じていたのだろう。だから、特に何かを見ていたわけではなく、ただ眺めていたのだ。

 俺もラシュリーも、しばらくそうやって宇宙を感じて、そこにたたずんでいた。



「そういや、オンヤはどうした?」

「ちょっと喧嘩しちゃったんで、別行動中」

「……タイミング的に俺の所為だな。すまん」



「謝らなくていいわ。今のアタシ、何が良くて何が悪いのか、わからなくなっちゃっているから」

 こんな受け答えだけでも、ラシュリーは大人びていると思った。王女としての責任が、彼女を強くしている。



「ナジャフ将軍はね」

「うん」

「小さい頃から、アタシを見ると直ぐに抱き上げてくれて、にっこり微笑んでくれたの。優しいお爺ちゃんで、アタシは王宮で彼を見たらいつも駆け寄ってたわ」



「うん」

「……今でも、守は、ナジャフ将軍は信用出来ないと考えているのよね?」

「……あぁ」

「そう」



 重い沈黙があって、俺は自分がまるで宇宙に囚われたかの様な気持ちを味わっていた。

 宇宙が窓からビルの中を侵食して、俺を飲み込むのだ。心が痛かったが、それでも辛抱強くラシュリーの言葉を待った。



「オンヤと喧嘩したのは、彼にナジャフ将軍以外の協力者を探す様に命令したからよ」

「それじゃあ、ラシュリーは俺を信用してくれたのか?」



「当たり前でしょ? 命を救って貰った事、忘れてなんかいないんだから」

「ありがとう」

「お礼はいいわ」



 いつの間にかラシュリーは俺の背後に回り込んでいたらしい。背中に抱きつかれた感触があって、俺は振り返らなかった。

 小声で呟いたラシュリーの言葉が、いつまでも耳に残っていた。



「アタシは守を信じるわ……」

 信頼には、信頼で応えるもんだよな?





 惑星アラワシに最接近し、ビルの中は慌ただしくなっていた。

 これ以上近づいたら、惑星を守る守備隊に発見されるギリギリのラインでビルを止め、漂流していた小惑星の陰に隠れていた。



 作戦は決まった。

 今はそれに向けて準備中であった。



『郵便でやすよー』

 タヌキチの声がして、空中にいきなり出現し、舞い降りたのはアミエル達からの手紙であった。



「タヌキチ、俺はお前の事見えるんだから、手紙を放り投げる必要はねぇぞ?」

『あ、つい癖でやってしまったでやす。向こうでこれをやるとみんなびっくりするんで、驚かしがいがあるんでやす』



 いや、今だって、俺以外のやつは、だいぶびっくりしてたけどな。

 会話をしながら、手紙を開けて、中身を確認する。



「マジかよ……」

 あんまりビックリし過ぎて、思わず声が出る。開いた口が塞がらないってやつだ。

 いやー、妖怪過ぎるだろう。

 これは。

 流石に無いわー。引くわー。

 手紙にはそれだけ驚愕する内容が書かれていた。



 とは言え、内容的には、とんでもない幸運であった為、俺は急いでラシュリーと相談する必要が出来てしまった。

 ……え? 何が書いてあったのかって?



 まだ、秘密だ! 馬鹿野郎!



 あ、いや、馬鹿野郎はいらないんだけどね。後で話した方が劇的でいいじゃない?

 んー、ラシュリーに許可が取れたら、この件は誰を派遣するかなー。シャリアに船を出して貰って、んー。どうするかなー、X字に頼むかなー。



 いかん。頭がパンクするかも。

 ちょっと一眠り……するわけにもいかない。今は限界まで、頭を働かせないと。今ここで、みんなの未来が決まると言っても過言じゃねーんだからな。



 そう。今、俺はみんなに指示を出しながら、作戦の細部を頭の中で繰り返しシミュレートしていたのだ。

 つまり、こいつがダメなら、全部終わり。



 しかも、いくつも不確定な所があって、見えない部分、予測しきれない部分がどうしても出てくるって、おまけ付き。

 くそー。不治の病。明日やる病がウズウズしやがる。いや、ダメだ。逃げちゃダメだ。



 俺は今ここで勝負しないと。

「タヌキチ。ポイントステータスオープンだ」

『はいでやす!』



 ランツピーを出航してから、ずっと溜め込んでいたオーナーポイントを確認する時がやって来たのである。

 残オーナーポイントは果たして、いくつになっているのか?



 正解は『52789ポイント』である!



『凄いでやす!』

 タヌキチの言う通り、凄い数字であった。アミエル達と、それに協力してくれたアグラ家とダータネル家には、感謝しかない。



 出港前の残ポイントおよそ1万ポイントとし、一月で4万ポイントを稼いだとすると、一日平均は約1300ポイントである。



 一日の稼ぎが、1300ポイント。



 これは驚異的な数値であった。新規のお客様しか、ポイントをゲット出来ないこのクソオーナーシステムにおいて、リピーターでない新規客一日平均1300人はただただ脱帽である。



 とは言え、数値を目で追っていた俺は、ある疑問にほぼ決着をつけていた。



 どう言う事か説明しよう。

 後半にいけばいくほど、ポイントゲットの成績は落ちていく一方だった。ビルの集客が落ちたとは考えにくい。タヌキチの運ぶ、アミエル達からの手紙でも、順調そのものの様子が伝わっていたのだから。



 これはつまり、一月経っても、ユニークポイントの再取得は不可能だと言う事を意味していると理解した。



 一月で無理なら、回復するとしたら半年後か? いやぁ、ないない。じゃあ、一年後? それもないだろう。



 ないだろうと思える根拠は、もう十分に揃っている。

 つまり、ビルオーナーポイントは、一人の人間から生涯ただ一度、一ポイントしか手に入らないだろうと、この時俺は既に結論づけていたのである。



 そう気づいた時、俺は思わずこう呟かずにはいられなかった。



「平気でビルとなんの能力もない二十歳の若造を、幼女とタヌキを引っ付けて、宇宙に放り出す奴のやりそうなこったよなぁ!」



 呟いた後、余りの無理ゲースタートだった事に、改めて気がついて、ワナワナ震えてしまったのはしょうがない事だと思う。





□現在のオーナー状況

職業:ほんのりモテビルオーナー

オーナーポイント :52789ポイント。

配下:幼女1、タヌキ1、老エルフ1、ハイゴブリ1、ハイゴブシャ1、ゴブ17、ビキニアーマー1、コロボックル14、XYZ各1、カースクラー商会の面々3、暴風壁1。

今の協力者:王国王女、王国騎士団長。とある商会長の孫娘。

ビルサイズ:3フロア。

分割ビルA(ラフシー商会ビル):1フロア。

備考:貴方はポイントに夢中で、職業の変化にまだ気づいていない。

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