第2部 16話 『迷子達との合流』
エンジン全開で航行しているが、オンヤは追跡者達を振り切れずにいた。
こちらは一隻で、追っ手は目に見えるだけでも、三隻。これでもし、別働隊がいて進路を塞がれでもしたら、一巻の終わりである。
「振り切れぬのか、オンヤ」
「はい、メイシャ様。ですが、このオンヤが必ず貴方様を祖国へとお連れ致します」
「そうか……」
何の保証も無い、虚しい言葉であった。オンヤ自身が一番良く分かっている。
こちらはただ二人で、船も一隻。乗り移られたら制圧は一瞬で完了するだろう。
全ては分かっていた事である。
それを覚悟して、メイシャとオンヤはあのビルを後にしてここまでやって来たのだ。
故郷である惑星アラワシ、つまりはライガール王国は既に目と鼻の先である。
国の守備隊に出会う前に、ウェスティン・ラパーザ子飼いの海賊団に発見されるなど、運が無いとしか言いようがなかった。
だが、オンヤは知らない。
この時既に、宇宙海賊ウェスティン・ラパーザはメイシャの叔父、ホルデン・ライガールに働きかけ、ライガール王国領内での航行の自由を、ある程度勝ち取っていたのだった。
その中でメイシャ、つまりラシュリー達への網を張っていたのだ。
この状況は必然であったが、オンヤはその事を知らない。
守達の元を離れ、ラシュリーは再びメイシャ・ライガールとなっていた。守に憎まれ口を叩いていた年相応の少女は消え、物分かりの良い大人びた喋りをする王女となっている。
オンヤは自分の不甲斐なさに、憤りを覚えていた。
守達の元を離れると決めたのは、メイシャとオンヤが話し合って決めた事だ。そこに後悔は無い。
あの気の良い連中を、自分達の都合だけで、無謀な戦いに巻き込む事も出来なかった。だから、命に代えても、メイシャだけは祖国にお連れする、そう強い決意をしてここまでやって来たと言うのに、こんな所で終わってしまう。
せめて、ライガール王国の守備隊と出会えていれば、道も開けたと言うのに。
後悔しても状況は何も変わらない。
オンヤ達の船は追い詰められていた。
そして最悪の時を迎えるのであった。
横から飛び出して来た一隻の船に進路を塞がれると、追跡して来た船が広がり、その周囲を取り囲んでしまったのだ。
航行を停止せざるを得なかった。
その一隻の船には、ウェスティン・ラパーザの海賊団である証、『狂象大宇宙海賊団』の海賊旗が高々と掲げられていた。
甲板にGNパックを装着した海賊達が姿を現していく。
『あー、こちらは狂象大宇宙海賊団、炎爆ファエル・マーヴェン配下のバッソと言う者だ。大人しく降伏しろ。抵抗しない事をお勧めする』
通信機からは降伏を勧める声が届いていたが、無視していた。
メイシャ・ライガールは、ウェスティンが今最も注意を向けている人物である。ホルデン・ライガールにその兄エイデン・ライガール程の人望はない。今更、エイデンの忘れ形見などに出て来られては甚だ困るのだ。
降伏を勧める口ぶりからして、こちらが王女を乗せている事には気がついていない様だが、降伏などあり得ない事だった。
ウェスティンが、メイシャを生かしておく理由などないのだから。
「メイシャ様、私が打って出ます。その間に……」
「駄目だぞ。オンヤ」
メイシャは静かに首を横に振った。
「もう、ワタシは自分一人で生き残るのは沢山なのだ」
「メイシャ様……」
「本当に手は無いのか、最後の最後まで考えるのだ。少なくとも、あの者達はそうしてくれていたぞ」
オンヤの脳裏に、あのビルで過ごした日々が思い出されていた。確かにあの青年と仲間達は、オンヤとカバラの襲撃の際も、絶望的と思えたベンディミア家の襲撃の際も、決して諦めなかった。
「はい、この様な事で諦めていては、あの者達に笑われてしまいますな」
「そうだな」
思い出が少しだけ今の状況を忘れさせ、二人の表情に笑みが浮かんだが、笑みが消え去った後感じた、背中の寂しさはどうしようも無かった。今、ここにはメイシャとオンヤしかいないのだ。
突然やって来た船が揺れる衝撃に、二人は危うく転びそうになる。
「何だ!?」
「船をぶつけられました。直接、乗り込んで来るつもりです!」
「くっ!」
モニターには、ハッチを吹き飛ばそうとしている動きが映し出されていた。今となっては、脱出も不可能だ。
どうする。生き残るにはどうすれば良いのか。自分達の身分を隠す事など出来るのだろうか? いや、やるしかない! 生き残る為には万に一つの可能性でも、諦めるわけにはいかないのだから。
小さな爆発が連続で起こり、ハッチがこじ開けられそうになった。その時である。
突如、飛来した宇宙船から、飛び降りた二つの人影が、乗り移ろうとしていた海賊達に攻撃を開始したのだった。
最初に着船した人物は、手にこの世界では見慣れない武器を持っていた。緩やかなカーブを描いた刃が煌めき、血飛沫が舞う。
「おっと、こっから先はお館様の命により、通すわけにはいかねぇ」
次に降り立った人物は、年老いた紳士風な男であった。彼が口の中で何かを呟くと、船体の壁面から、植物から飛び出して海賊達を次々と串刺しにしていく。
「我が主の命により、ここは引いて頂きましょう。命が惜しくなければ、かかって来る事ですな」
その二人を見た時に、メイシャは、いやラシュリーは涙を堪える事が出来なかった。
「何で? どうして、アナタ達がここにいるのよ……」
この二人の男は、X字と真田丸であった。
そう。彼らがここにいると言う事は、近くに荒海守がいると言う事ではないか。
巻き込みたくない。
巻き込んではいけない。
その思いから飛び出して来たのに。
どうして……。
悲しむ気持ちもある。罪悪感もある。けれど、どうしてもこの感情が止まらない。涙を流しながら、ラシュリーは湧き上がる嬉しさをどうしても止める事が出来なかった。
ふっー。
どうにか間に合ったみたいだなぁ。
俺は窓の外に見えるラシュリーの宇宙船を見ながら、安堵していた。
「守。ちょっと危ないから、ちゃんと座っててよね」
「あぁ、悪い悪い!」
俺は慌てて、座席に戻る。船を操縦しているのはシャリア・ダータネルである。ビルを置いて先行し、俺たちはここに駆けつけて来たのだが、シャリアは船も貸してくれたし、それどころか操縦も引き受けてくれたのだった。
『アタシの船だもの。他の人には触らせたくないわね』
なーんつって、操縦してくれるシャリアさんたら、なんて良い人なんでせう。
「貸しだからね。大きくして返してね」
「……」
ちゃっかり娘の方でした。
「マスター、ワタシもそろそろ、出ようと思う」
「おう。少しでも多く情報が欲しい。なるべく地位が高そうな奴を捕まえて来てくれ」
「任せてくれ」
そう言ってアンリエルは笑った。
その表情はシルバー達との訓練を終えた自信に満ち溢れていた。
□現在のオーナー状況
職業:四分の一ビルオーナー
オーナーポイント :23458ポイント(更新中)。
配下:幼女1、タヌキ1、老エルフ1、ハイゴブリ1、ハイゴブシャ1、ゴブ17、ビキニアーマー1、コロボックル14、XYZ各1、カースクラー商会の面々3、暴風壁1。
今の協力者:王国王女、王国騎士団長。とある商会長の孫娘。
ビルサイズ:3フロア。
分割ビルA(ラフシー商会ビル):1フロア。
備考:迷子達、ようやくゲットー!




