第2部 4話 『ビルオーナーの出発と集められた六将』
準備は整った。
ラシュリー達が居なくなった事が発覚してから、既に二日が経過してしまっている。
ランツピーに残すラフシー商会の新拠点ビルの作成、ビルを曳航する為の宇宙船の操縦技術の習得、それから、長期の航宙を想定しての物資の用意。
それらの準備に要した時間が二日と言うわけだ。
一刻も早く二人を追いかけたい気持ちは勿論あった。だが、準備をしないで猪突猛進するのは、今いる仲間達を疎かにする事になる。
だから、アミエルが、金をかけて準備期間の追跡を、専門家に頼んでくれたのだ。追跡の成否に関わらず、彼らとは途中合流し報告を受ける事が決まっている。
幻影都市から、ライガール王国のある惑星アラワシまでは、およそ三十日間程度の行程だ。
ラシュリー達だって自分達の立場は理解している。到着しても、目立つ行動は控えるだろう。
時間はまだある。
出発前にいきなりアミエルは俺達について行くと言い出したが、シャルケとトーガスの猛反対により、失敗した。
俺も残る様に説得したしな。
ラフシー商会は立ち上がったばかりで、核となる人物がどうしても必要なのだ。
因みに、例のカフスの賃料はそのまま受け取るそうだ。
「ラフシー商会の今の資金状況を考えると、痩せ我慢は出来ないでありんす」
と、至極明快な回答を頂いた。
俺達の行動の援助で、アミエル達には大きな負担をかけてしまった。別組織じゃ無くて良かったなぁってのは、正直な感想である。
同じ組織であれば、報いる方法や時期は選択肢を選ぶ事が出来るからだ。
「お早いお帰りを」
「あぁ、留守を頼む」
こうして俺達は、留守をアミエル達に任せてライガール王国へ向かって出発したのである。
巷じゃ俺は、『炎爆』なんて呼ばれて恐れられているのは知ってる。
自分じゃ実力もあるのも知ってるし、世間の評価についてはそれはそうだろうと思う所もあるさ。
力だけを求めて、こっち、長く非道な行いを繰り返して来たんだ。
涙を流している人間の首を切るなんて、日常茶飯事であったし、今日は自分が神の様に他人の命を弄んでいたら、次の日には自分がその立場にいたなんて事もある。
自分の命を非道に晒して、強さと悪の名声を得て来たのだ。
自負もあれば、誇りもある。
今の自分の悪の強さが、今の俺自身の強さなのだと胸を張れるのだ。
だが……。
この俺『炎爆』ファエル・マーヴェンを含めた、六将が揃っている、いや一人足りないが、それでも五将である。それでも、たった一人の男にまるで勝てる気がしない。
「かかかか! お前ら、良く集まってくれた。この俺様といなかった間も、各自、悪逆非道の限りを尽くしていたんだろうな?」
その問いかけに、俺は心の底から笑顔を見せる。
この男『残虐公爵』ウェスティン・ラパーザが、俺達の頭で本当に良かったと言う気持ちである。
自分よりも強大な悪がある事が、俺の自信を更に強めるのだ。目指すべき目標が、自分の目の前にいる。その安心感を俺は、ウェスティンから初めて教えて貰ったのだ。
「勿論、各自悪事に尽くして参りましたとも、ウェスティン様」
「そりゃ、結構。かかかか!」
そう言って深く頭を下げたのは、六将の筆頭『悪才』ハーヴェスト・トゥーヤである。
不思議な異能力を有するジゼル星人の天才である。ジゼル星人はその頭に生えた二本の角が特徴であるが、悪才はそれが三本ある変異種である。
「ウェスティン様、早速質問しても宜しいですか?」
「相変わらず他人行儀だな。レイジー。構わねぇぜ。なんだ?」
「ありがとうございます。此度の事、我らを集めた理由をお聞かせ頂けますか?」
この野郎は『氷瀑』レイジー・ナックビル。俺の炎爆と対になるあだ名を持ってる事からもわかるだろう。
スカした性格をした嫌な野郎なのである。
レイジーの質問を受けたウェスティンは、笑顔を消して、見るものを痺れさせる様な表情を見せた。野望に燃えた男の顔だ。
「今から約一ヶ月後、計画を実行に移す。国取りだ」
「おぉ! やっとか。親父」
この女は『血煙』バーバラ・ラパーザ。とんでもない怪力を有する女で、ウェスティンの実の娘である。
「んで、船長。カバラの野郎はどうしたんでぇ」
この片目の渋いおっさんは、『眼力』ザグラブ・エンブラ。今や万を超える部下を持つ、大宇宙海賊になったウェスティンが、一隻の船の船長だった時代から付き従う、古参の部下である。
カバラって奴は、ウェスティンが遊びをする時に良く連れているケチな野郎で、自分じゃウェスティンの右腕を語っている身の程知らずだ。
他者に対する強烈な残虐的な思考。
そこが気に入られているだけなのに、自分がウェスティンの右腕と思うとは、哀れな野郎だ。
ま、しゃーねぇか。
蟻に雲までの距離を聞いたって分かるわけがない。ザグラブの質問に、その雲は少しだけ顔をしかめた。
「カバラの野郎は、恐らくは死んじまってるだろうな。良い玩具だったが、実力はカスみてぇなもんだったからな」
「何をさせたんで?」
「逃げた王女の追跡をさせた後、連絡が途絶えた。まぁ、そいつはいい」
へっ。カバラの野郎、いい気味だ。
いずれは六将、それも筆頭の座を狙っていやがったが、今頃地獄で後悔してるだろう。自分がどんだけ恥知らずな望みを抱いていたかってな。
あ? なんで地獄かって?
そりゃあ、決まってる。俺達はウェスティンの部下なんだ。その部下で、地獄にいかない奴などいるものか。
悪こそ全てなのだ。
『残虐公爵』ウェスティン。
彼を頂点とした大宇宙海賊組織、それが『狂象大宇宙海賊団』である。
俺が所属し、命を捧げている組織だ。
ウェスティンの腹心中の腹心は六人。
『悪才』ハーヴェスト。
『氷瀑』レイジー。
『血煙』バーバラ。
『眼力』ザグレブ。
『炎爆』ファエル。
炎爆とは、つまりこの俺だ。この五人に、今この場にいないもう一人を加えて、六将と称している。
この六将が、彼の覇業と悪行をひたすらに遂行しているのである。ウェスティンが大宇宙海賊として恐れられる筈である。
……ウェスティンがとうとう、自分の国を手に入れようとしている。
何事も隠されず、何事も暴かれず、悪が悪として、非道が非道として横行する素晴らしい国になるだろう。
悪の楽園だ。
見回すと六将全てに、その未来を思い描いた歓喜の色が見えた。
俺達が助けて、その偉業を実現するのだ。
俺はウェスティンに問いかけた。
「オヤジ。国取りはわかったが、それじゃあ尚更、王女の件は不味いんじゃねぇのかい?」
「なぁに、そいつについちゃもう手を打ってある。『斬鬼』に命令済みだ」
『斬鬼』ダレク・アジャン。
あの野郎、ウェスティンに個別に命令されるとは運の良い野郎だ。喜んで飛び跳ねたんじゃねぇだろうか? 今頃は配下の奴らを怒鳴りつけて、王女を探させている筈だ。
少しけつの穴が小せえ所はあるが、ダレクが本気になれば、王女の命は消えたも同然だろう。
「てめぇら、この俺様が王になるのに力を貸しやがれ。そうしたら俺様はお前らに、悪と残虐をくれてやる! 俺様に従え。俺様に服従しろ。俺様こそが『残虐公爵』だ。かかかか!!」
楽しそうに笑う悪の化身に、俺達は深々と頭を下げたのだった。
誰の体からも、未来を思い描き、血の滾りが熱となって立ち昇っていた。
□現在のオーナー状況
職業:四分の一ビルオーナー
オーナーポイント :11145ポイント。
配下:幼女1、タヌキ1、老エルフ1、ゴブリ1、ゴブシャ1、ゴブ17、ビキニアーマー1、コロボックル14、XYZ各1、カースクラー商会の面々3、暴風壁1。
今の迷子:王国王女、王国騎士団長。
ビルサイズ:3フロア。
分割ビルA(ラフシー商会ビル):1フロア
備考:いざ、ライガール王国へ向け、出発。




